女子高生だけどラリー始めました。

りゅーや

第1話 出会い


「今日からちゃんと学校に行くみたいよ。お父さんはちゃんと見守ってあげてね」

母親は仏壇を見つめながら、寂しそうに話し掛けた。


 


 今にも壊れそうな勢いで、強く玄関を開いた。


「ほら、真希音まきね!お父さんに行ってきます。言いなさいよ」


 母親は真希音まきねに対して少し怒った口調で言った。

 一瞬何かを言いそうになったが、何も言わず振り向くことなく真希音まきねは逃げるように扉を閉めた。

 もう、母親の声は聞こえない。



 一方、同じ時刻では慌ただしそうに瑠衣るいが起きてきた。


「やばいやばい!!なんでお母さん起こしてくれなかったのよ!遅刻だよ!!」

「知らないわよ!目覚まし掛けたんじゃないの?」

「充電差し忘れて、電源切れてたんだよ!!」


 急いで制服に着替えた瑠衣るいは、そのまま玄関の扉を思い切り開けた。その音に気付いた母親は瑠衣るいに対して少し大きな声で悲しそうに尋ねた。


「ちょっと瑠衣るい、朝ご飯は?せっかく作ったのに」

「今日午前で終わるから、帰ってきたら食べるから!行ってきます!!」


 大声で返す言葉と慌てて玄関の扉を開ける音に、母親は少し微笑みながら嬉しそうに言った。


「はいはい。気を付けていってらっしゃい」


 ボサボサの髪型で、走りながらバス停に向かうと今にも出発しそうなバスが止まっていたので、瑠衣るいは走りながら大声で叫んだ。


!!!!」


 しかし、声は届かずバスは出発してしまった。落ち込んでる暇もなく、脳をフル回転で切り替えた。バスは大通りしか走らないので、狭い路地でショートカットして走った方が速いと思い走ることにした。


「あー、もう走るしかない」

 

 しばらく走り続けていると、頭の中では初めての道で不安になってきた。


(多分、こっちで合ってるよね?)


 自問自答をしながら走っていると、学校の姿が顔を出し周りの景色を見る余裕が出てきた。すると、一台の白い車が気になった。


(あれ?どっかで見たことあるような?)


 頭の中では遅刻しない事を考えていたので、目で追いかけるだけで足は学校に向けて走っていた。そして、校門を抜け靴を履き替えて滑り込みながらクラスに入った。



 安心したのか少し大声になってしまった。瑠衣るいの大声に気付いた親友の足立あだち 英玲奈えれながいつものおっとりした声で手を振ってきた。


「ルイルイこっち、こっち!私の前だよ~!」


 自分の席が親友の近くで気分が高まりながら、席に座ると同時に英玲奈えれな瑠衣るいに話し掛けた。


「連絡ないから、寝坊かと思った~!」

「ごめん、充電切れてて」


 不安な顔を見せられ、すぐに謝った。目線を隣の席に向けると、知らない女の子がうつ向けで寝ていた。瑠衣るいは小声で英玲奈えれなに尋ねた。


「ねぇ、英玲奈えれなうつ伏せに寝ているあの子誰?」


 英玲奈えれなは耳元で小さく話した。


「去年の先輩で~今年からここのクラスになった富田とみだ 真希音まきねさん~」


 なぜ、フルネームを知っているのかも気になったが、そんなことより瑠衣るいの人見知りしない性格が先に勝ったのか、瑠衣るいは席を立ち真希音まきねに向かって手を出しながら話し掛けた。


「私、茂木もぎ 瑠衣るい!よろしく!」


 真希音まきねは顔だけ振り向き、瑠衣るいと目が合ったがすぐに顔を下に向けてそのまま寝る体制に入ってしまった。瑠衣るいはムッとした、それでも笑顔で立て続けに話そうとしたが、クラスの扉が開き先生が来たので何も言うことなく席に座った。担任の先生の話と退屈な校長先生の話だけで午前中が終わった。帰る支度すると英玲奈えれなが満点の笑顔で話し掛けてきた。


「ルイルイ!駅前に新作のケーキが出来たんだって~行こ~?」


 うんっと言いかけた時に、朝ご飯が残っていることを思い出した。


「あっごめん!家の用事があるんだよね」


 不機嫌そうな英玲奈えれなに謝りながら、スマホを充電したかったので駆け足で自宅に向かった。帰り道に走りながら、朝に見かけた車を思い出した。


(どっかで見たことある車なんだよな。気になるから、見てみよう!)


 興味本位で車が停まっている場所で足を止めた。そこには、たくさんの文字が書いてある白い車があった。


「わぁー、色々書いてある。あれ?知ってるお店の名前もある」


 近所の精肉店の名前が書いてあり、他にも知っているお店があるか見ていると背後から大声が聞こえた。


!」


 驚きながら振り向くと、鬼の形相で睨み付ける真希音まきねの姿があった。目が合うと、真希音まきねは大声で瑠衣るいに言った。


「何してんだ!朝の恨みか!ヤリスに少しでも触ったらお前を殺す!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る