カルォナの奇蹟

第1話

　ゲーム大国とまで呼ばれながら、海外に比べて未だその認知度は低く、経済的価値としては伸び悩みが続いているeスポーツ。

　時代に取り残されたままの法律やスポンサーと成り得る大手企業の認識不足、事実から一部を抜粋し脚色された報道――様々な要因が国民に誤解や偏見を抱かせ、新しいモノに懐疑的で、かつ移りゆく世情の輪に踏み込む意欲を損なわせてしまっている。

　サブカルチャーがいかに莫大な経済効果をもたらす金山であるかを、日本は充分に実感しているはずだろうに。

　現代社会における“古きモノをこよなく愛する”というのは大抵が言い訳でしかない。とどのつまりが時代の波に乗れず、そのまま考えることをやめてしまったひねくれ者なのだ。生きることを諦めた腰抜けと言っても相違ないかもしれない。どちらにせよ、世間が現実を直視できていないというのが実情だろう。

　キャッシュレスへの抵抗。

　養殖よりも天然。

　人工ダイヤモンドを認めない。

　リアリティを凌駕する仮想技術。

　そう遠くない未来に本物よりも優れた造り物がぽこぽこ泡立つというのに、閉塞した現代社会で暮らす人々には目先の小事しか見る余裕がなく、まるで興味がない。

　そんな鬱積した日本でも、国内で圧倒的な人気を誇るeスポーツジャンルの一つがTCG（トレーディングカードゲーム）だ。

　後に世界中のネットワークをクラッシュさせる事となるそれが最初に出没したのは、ちょうど日本最大級のeスポーツイベント【RAMPAGE】が開催するTCG【ブレイブファンタジア】決勝戦の最中（さなか）だった――。