第41話 何事
祝日を挟んで4月30日。是清も舞花もいつもと変わらず音羽坂高校に登校した。
学校での様子もいつも通り。互いに関心のかの字もない状態だ。
それでも互いに意識しているわけで、是清の場合はいつも以上に舞花の様子に気を配っていた。
「ふふっ。それは楽しそうですね、天野さん」
なんの話をしていたのかは知らないが、舞花が楽しいなら是清が気にすることはない。
舞花にとって親の目がない学校という場は、かけがえのないものなのだ。
それよりも是清には気にすることがあった。
(さて、俺の持ってきた漫画は気に入ってくれるかな……?)
舞花と約束したのだ。セーフエリアにて、漫画を渡すと。
舞花は是清よりもよっぽど辛い人生を送ってきた。
漫画の1つくらいは許して欲しい。
そしてあわよくば、それを楽しんでくれると是清としても気分が良い。
漫画はそもそも娯楽の類だからだ。
(早く昼休みにならねぇかな……)
高校に入学をしてしばらく。ここまで昼休みを楽しみにしたことなぞ、あっただろうか。
是清ははっきりと今の自分は舞花の影響を受けているのだと理解した。
時間は全員に平等だ。
是清の求める時間はすぐにやって来た。
是清は舞花を1度横目にして教室を出た。もちろん弁当と漫画を持って。
この高校でも1位2位を争う美女と今から会うのだ。これほどまでにリア充な予定はそうそうない。
人目がないことを確認すると、校内から直接外に出て、例の場所へ。
是清は腰を下ろして楽にすると、その時が来るのを待った。
(早く来ないかな)
それから10分が経った。
しかし舞花が姿を見せることは一向になかった。
(何かあったのか?)
ここは高校だ。事件とまではいかなくとも、来れないのには何かしら理由があるはずだ。
それにもし来なかったとしても時間はたっぷりある。
次に2人で会った時に話そう。
この時の是清はそう考えていた。
そしてその日は結局舞花は来なかった。
それから2週間が経った。
だが、舞花が例の場所に姿を見せることはなかった。
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