55.その紳士たちの姿を暴け その1
【View ; ???】
《人気読モ「リコ」のえっちすぎるコラ画像》
何となくスマホでいくつかのサイトを見て暇つぶししていると目に付いた、そんな見出し。
その記事名をタップして、変な見出しばっかりのサイトへと跳ぶ。
若干イラっとしつつも、他の見出しとは違う色になっている該当の記事を見つけて、もう一度タップ。
この手のサイト特有の、大量の見出しリンクや、アフェリエイトの山を越えてサイト中腹にある本文へと、ようやくたどり着く。
そして、本文を読み始め――
《朝の準備動画配信中に事故で可愛らしい下着姿をさらしてしまったリコちゃん。そんな事故動画を元にえっちなコラ動画が作り出されてしまっている。
その動画がこちら ↓↓↓》
動画を瞬間、リコがえろいとか、同じ学校の可愛い後輩の下着姿ひゃっほーとかいう感情はなくなった。
それ以上、やばい――という焦りが俺の中にわき上がる。
記事内ではコラージュということにされているけど、俺は知っている。これは、ツユっちのイタズラだ。
コラージュという方向ではあれど、ネットで拡散されている……!
ツユっちは知っているんのか?
いや、知ってたら調子に乗るのをやめても不思議じゃないはず。
やばい。
ネットで拡散はやばい。
たぶんこれは、一線を越えたと判断されかねない。
知らない――なんて言い訳はきっと取り合って貰えない。
絶対、十柄が動く。
超能力について知識のある花道も協力するかもしれない。
あの二人相手にツユっちがどうにかできるか?
……出来るわけがない……ッ!
ツユっちが捕まれば俺も捕まる。
俺の透明化する能力を使って、ツユっちごと透明になって二人でイタズラして回ったことだってあるんだ。
いくら親友といっても、荒事に馴れてない俺たちが、日常を越えた暴力にさらされたり、拷問されたりしようものなら、間違いなく相方を売る。
俺がそれをされたらツユっちを売る自信があるんだ。あいつだって俺を売るだろう。
それに、俺だって調子に乗って
……バレたら殺される。
間違いなく女子たちに殺される。
超能力者を取り締まる存在がいるなんて知らなかった――が通じるわけがない。
そもそも、俺たちに想像力が足りてなかった。
自分たち以外にも超能力者がいるって、何で考えなかった?
先日の十柄と花道のやりとりからして、十柄は恐らく能力者だと思う。
能力者を取り締まる能力者。
マンガやゲームじゃあ良くある展開じゃないか……ッ!?
どうして俺たちはそれに気が付かなかった……ッ!!?
どうしてその存在を考えなかった……ッ!!!?
俺は慌てて
《しばらくイタズラは控えろ。可能なら全員に付与してるイタズラを解除しとけ》
即座に、すっげーイラっとするデザインのウサギが描かれたスタンプだけの返事が届いた。
スタンプのウサギに描かれた言葉は――
《え? やだー》
やだー、じゃねーんだよ!!
《知らず知らずのうちにやばいラインを踏み越えてた。引き返さないとやばい》
そう引き返すなら今のうちだ。
ここから先は、イタズラの領域から逸脱してしまう。あるいは、すでに逸脱してしまっている。
それでも――自覚して引けば、まだ許して貰える可能性があるんだ。
気づけッ、ツユっち!!
そうは思うものの、ツユっちは、「おやおやぁ?」と文字の書かれたすげーウゼェ顔のキツネのスタンプと共に返信してくる。
《イっくんどうしたの? 道に迷った? また屋上で寝過ごした?》
通じねぇ……ッ!!
《能力者を取り締まる能力者がいる。俺たちは目をつけられた》
こっちはシリアスだっていうのに、今度は「キミ、だいじょうぶかい?」と書かれたすっげームカつく顔のナマケモノのスタンプと共にレスをしてきた。
《イっくんマジ大丈夫? 現実とフィクションの区別ついてる?》
通じねぇぇぇぇぇぇぇ……ッ!!
通じねぇ上に、いちいちイラっとアニマルズのスタンプ押してレスってくんのウゼぇぇぇぇ……ッ!!
すっげー、イラっとするぅぅぅ……ッッ!!!!!!
俺がッ、
追いつめられたらッ、
マジでッ、
テメェをッ、
売るからな……ッ!!
とりあえず、《警告はしたぞ》とだけ、最後に送っておくか。
一応、俺とツユっちの能力で、十柄と花道を出し抜く手段も考えておかないとやべぇよな、たぶん……。
いや、出し抜くより素直にゴメンするべきか?
でも捕まったらどうなるかも分からなくて怖いしな……。
マジでどうしよう……。
とか悩んでたら、送った警告に対して、イラっとアニマルのスタンプだけのレスが来た。
コチラを小馬鹿にするような顔のカンガルーで「考えすぎじゃね?」である。
イラァ……ッ!
【View ; Syuko】
犯人が部活をしているなら、部活動内でもやらかしているのでは? ということで調査することになったのですが……。
冷静になってみると、どうやって探したらいいんでしょう?
放課後、屋上でそんなことを考えていると――
「お、いたいた~。
お~い、十柄さ~ん」
「花道さん?」
先日と同じように明るく手を振りながら入ってくる花道さん。
そして、その後ろには別の誰かがいるようで……。
「あの、そちらは?」
「
花道さんの紹介に、槍居先輩が軽く頭を下げてくるので、こちらもあわてて頭を下げ返します。
「パイセン、パイセン。こっちが十柄鷲子さん。
あたしのクラスメイトで、今回の落書き事件を追ってる探偵の助手さん」
……探偵……? 助手……?
私が内心で首を傾げていると、花道さんがこちらをチラリと見てウィンクしてきました。
ああ、なるほど。
そういう風に説明して連れて来られたんですね。
それにしても、よく女子バスケ部の部長さんなんて連れて来れましたね。
いえ、そもそもどうして彼女を連れてきたのでしょうか……?
「ところでどうしてパイセン連れてきたのかって顔してる十柄さんの為にぶっちゃけちゃうと、パイセンは落書き被害者」
なるほど。
「その言い方正確じゃないわよ、花道さん。
わたしは、
「つまり複数人、被害者がいる――と?」
「ええ」
話を聞くと、槍居先輩を含め、女子バスケ部で確認できている範囲での被害者は三人。
「いくつかの部活を回ってきたけど、バスケ部以外からは特に情報がなかったよー」
「花道さん、速いですね……」
「そういう話を聞いて回るのって、十柄さんよりあたしの方が得意そうだったしね」
にしし――と楽しそうに笑う花道さん。
その笑顔はとても頼もしい笑顔に見えます。
「何かのお役に立てそう?」
不安そうな槍居先輩に私はうなずく。
「はい。ありがとうございます。
出来るだけ早急に解決したいと思ってますので」
「ええ、お願いね。
リコさんの騒動を見てると、迂闊に人前で着替えも出来ない気がして……わたしはそれでも顔を出してるけど、ほかの被害を受けた子たちは、部活を休んじゃってるのよ」
しんどそうにそう口にする槍居先輩。
本当は、先輩も休みたいのでしょう。ですが、部長という責任感によって休まずに部活にでている――と、いった感じでしょうか。
「……だから、お願いね」
「わかりました。先輩も無理はしないでくださいね」
そうして、先輩が屋上を去っていくのを見送ってから、私は色々とメモを書き込んでいるメモ帳を取り出します。
「さて、絞り込みタイムといく?」
ほとんど、答えはでているようなものですが。
「そうですね……。
被害者の多いクラスと、被害者の多い部活。
その両方が重なるのは――」
「リコっちパイセンのクラス。二年C組!」
「はい。確定情報ではありませんが、犯人が二年C組の生徒である可能性は高いです」
「二年C組の男女問わずバスケ部員を調べるって感じかな? 乗り込む?」
「乗り込むって……」
「ほかの組へのカチコミだし~!」
「しませんって!」
「えー」
「えー……ではなく」
どうしてこの人はこう、血の気が多いのでしょう。
そこを除けば地頭は良さそうですし、行動力もある、すごい人だと思うのですが。
「二年C組に顔なじみの先輩がいますので、ちょっと相談してきます」
「もしかして、魔女先輩?」
「ご存じで?」
「噂だけ~。
見た目魔女っぽくて、でもめっちゃ当たる占いをしてくれるって感じの。あと、さりげにネイルがすごい!」
「占い云々は知りませんけど、ネイル綺麗なのは本当ですよ」
「マジで!? ちょっと会ってみたいなー! ネイル気になるし!」
「気むずかしい感じの人ですけど、ネイルを褒められるのは好きみたいですので、話しかけるならネイルを話題にすると良いかもです」
「よし! 良い情報ゲット! 見かけたら話しかけてみよーっと!」
いつも通りテンションの高い花道さんを余所に私は思案に耽ります。
容疑者がだいぶ絞り込めてきましたけど、どうやって懲らしめましょうか……。
メイズを使って能力を剥奪するかどうかは――まぁ犯人の態度次第になるのでしょうけど。
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【CHECK!!】
花道 華燐 と 月光の絆(兆し)が 結ばれました。
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