第88話 A.D4021.クロムの作戦
所在も見せずに、砂の中から攻撃してくるアカエイにクロムが思う。
「このままでは……前回の遠征では戦力の3/4が削られた。どうする?」
クロムは隊に防御態勢をとらせたまま、思案していた。
「フィフスだけ倒せば……甘ちゃんだったわねクロム」
クロムが乗る新型のヘルダイバ黒い機体。搭載されているOSは定期的にバージョンアップされているが、オリジナルは十年以上クロムと戦ってきた相棒。
総称をラバーズと呼ばれるそれは色々なスキンを備えているが、少女の姿が多い。
通常は操縦席のパイロットの横に3D画像で立つ。合成されたもので実体はない。
サイズも自由だが操縦の邪魔ににならないように、だいたい五十センチ程度。
自ら小さくなってパイロットの肩に乗ったり、計器類にあがったりする。
太古の戦闘機は二人で操縦したが、操作が複雑なヘルダイバには同じくサポート役が必要になった。クロムのラバーズは乱暴だが何度も一緒に危機を乗り越えて、戦闘や作戦立案に高い能力を持っていた。
「クロム。ここでとどまっているのは×。隊が固まっているののも×。隊を分けて片方がステングレイを押さえて、残りがフィフスを目指すのがいいと思うよ」
そうだな、頷くクロムに補足するラバーズ。
「ステングレイは倒そうとしないで。被害が多くなる。足止めでいいの。徹底させてよ」
「分かった。全員聞いていたか。アルファ1から8まではフィフス攻略に進む。残りは散開してアカエイを牽制する。ラバーズの指摘どおり破壊しようとは思うな」
クロムの指示で隊が動き始めた。アルファ9、10、11、12が囲むようにステングレイを包囲する。
「そうだ、地下に潜っているなら、地面の振動を拾ってラバーズに解析させれば、位置が大体測定できるね。みんないい?」
クロムのラバーズが隊のすべての少女達に伝えた。
「了解。8から12でラバーズ間でのリンクを張り、ステングレイの場所を予想します」
アルファ8のラバーズが、アカエイの包囲チームのリーダーとなり行動を開始。
あきらかに動きが変わったのを見たアカエイのパイロットが呟く。
「あらら、いままでとちがうねぇ。突っ込んできてくれた方がやりやすいのにぃ」
後席に座る攻撃を担当するパイロットが返す。
「いいじゃないか。向こうも頭を使ったんだろう。でもやり方は色々ある。色々とな」
クールな口調に前席のぱパイロットが意図を理解した。
「そうか。別に相手につきあう必要はないってことだよね」
「そうだ。歩行でしか移動できない、あいつらに回り込んで攻撃する、一匹、一匹とな」
アカエイは砂の地面から出て、高速で自由軍の囲みを突破し、先頭を走るクロムの機体を目標とした。
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