Only Sense Online ―オンリーセンス・オンライン―
アロハ座長/ファンタジア文庫
Only Sense Online ―オンリーセンス・オンライン―
序章 βテスターと初心者
森の中を進んでいると複数の足音が地面の木の葉を
「お姉ちゃん、フォローお願い!」
「
程なくして現れたのは、こげ茶色をした体毛に
最初の
「二匹引き受けるから! 一匹
「分かった!」
指示を受けて、自身の武器である弓で後ろから一匹に
硬質化されたのは
少女が相手にする残り二匹の猿は、長い
こちらも後ろから
「はぁっ──《フィフス・ブレイカー》!」
二匹の猿が
何度見ても鋭い
接近してきた猿のハンマーのような腕を
「はい、
どこか気の
「お姉ちゃん、適切なフォローありがとう」
「いや、こっちが無理に
とは言ったものの、たった一匹の注意を引き付けるのに情けない姿を
一応、主武器に弓を使っているが、猿を倒し切れないことから使い
少し考え込みすぎる前に、本来の目的である周囲の木の根の付近を調べ、アイテムを採取する。
「今ので最後だな。必要な数の素材が
「あっ、そうなの。良かったね。お姉ちゃんの用事が済んで。でも、それで何を作るの?」
「生産分野は、薬だからな。
「
「いや、
そうなのだ。一応、ゲームのキャラは女性だが、リアルでは男だ。
「いいから。次は、お姉ちゃんのレベルアップをしよう! 次の
「おい、待てって。ミュウ!」
「さっきはカッコ悪かったよ! センスのレベルは、上げておいた方が得なんだから! さぁ、今度はもう少し強いMOBを相手にしようよ!」
全く、と
この森は、先ほどのような奇形の猿をはじめとした様々なモンスターが存在する場所で、今の俺には少々荷が重い。
無理なレベル上げに快感を
そもそも、このゲームを始める切っ掛けは、夏休みにあった。
●
【Only Sense Online】──
発売元のエプソニー社が開発した自律型AI、大型サーバーの物量的演算能力によって表現されるリアルな仮想現実。世界観は、中世を
センスの
──プレイスタイルは、まさにonly──との友人談。
そして俺は、正式オープンの前日、なぜか? なぜか!? 友人宅に
その相手は、悪友の
「おい、
「お前、
「いいだろ。毎年の風物詩、夏休み終了間際の宿題消化が
しれっ、と言い放つ悪友にして
「
「いや、お前、俺のバラされたくない過去をネタに
「まぁ、気にするなって。俺と一緒にゲームができるんだから」
「何で俺がお前とゲームしなきゃならん。それに宿題なんて
我が家は、両親が共働きで、夏の長期
そのために何時までもここに拉致されている訳にはいかない。そう思い始めた時、巧の口から予想だにしなかった言葉が出る。
「お前、
「ということは、美羽もこのゲームをやっているのか?」
「ああ、β版の時にたまに二人で会っていたらしいぞ」
ああ、なるほど。静
「さあ、宿題を全て置いていけ! 代わりに貴様を解放して、ゲームの機材をやろう」
「全く、分かったよ。俺もゲームをやるよ。だが
そう言って、巧の差し出した
エプソニー社が開発した最新型の中で、現在対応しているゲームは、
催眠誘導型の利点は、操作が脳波で行われているところだ。従来のように
「お、おい。これってテレビでやっていた最新型だろ。今、出荷台数が追いついてないって。こんな高価な物を貰えないぞ」
「気にするなって。お前と【OSO】するために、
「お、おう……」
俺は、それを持って悪友に
全く、もう少し
「ただいま」
「お帰り、お兄ちゃん。巧さんの所に行ったんだよね」
真夏の
「帰りにアイス買ってきたから、後で食べよう」
「わーい。アイスだ。私の好きなボリボリくんある? ……って違うよ!? いやボリボリくんも好きだけど……。私が言いたいのは、それのこと!」
と言いながら、俺が手に持っているVRギアの入った
中学三年生としては、幼さの残る顔立ちと元気の良さで
姉の静姉ぇが大学進学のために家を出て、最近まで少し元気がなかったが、【OSO】の世界で
「分かってるよ。俺も静姉ぇに会いたいからやるよ」
「ほんと!? ありがとう。
「その前にアイスでも食べるぞ」
俺の持つVRギアを
だが、すぐに袋からアイスキャンディーのボリボリくんを取り出し、ご
俺も買ってきたアイスで一息ついた後、美羽の指示の
ゲームをインストールして、VRギアを装着して、ベッドに
「じゃあ、まずは、脳波の検出しようか。装置を着けて寝ているだけで終わるから」
美羽の声は遠く、重くなる
だが、夕飯の準備まではやってくれなかったようだ。急いで準備しなければいけないために、細かい設定は、後回しになった。
そして、夕飯の席で、俺は美羽に質問をした。
「美羽は、どんなプレイスタイルだったんだ?」
「えっと、ね。私の場合は、
「光魔法の中に回復魔法がありそうなのにな。RPGの
「僧侶じゃないよ。剣で戦い、
「あー、お前の場合、その元気の良さで敵に
「違うよ! 私は、パラディンをイメージしたんだよ!」
「それで、静姉ぇはどんな感じ?」
美羽の
「むぅ……お姉ちゃんの構成は、純魔法職で
「まぁ、性格的に直接
美羽と静姉ぇの方向性が少し見えてきたな。
美羽から軽く話を聞いた俺は、二人に重ならないようにしようと決めた。そして、部屋に戻り、
【OSO】の基本的な
【OSO】の
センスとは、通常の武器の装備
才能装備は、ポイントを消費することで手に入り、各プレイヤーの装備枠に装備できる。
センスには、装備中に常時発動する能力やスキルを身に付けたり、ゲーム中の様々な行動に準じて補正を
センスは、最大十個まで装備が可能である。
プレイヤーは、初期にセンスポイント(以下SP)を10ポイント所持している。そのSPを消費して自由にセンスを取得できる。センスは、持っているだけじゃ意味がないぞ! ちゃんと装備しないとな!
取得したセンスは、装備してなくても
プレイヤーに設定されているステータスは、HPとMP。物理
これらは、装備中のセンスに設定されているステータスの合計で算出される。
一部のステータスが、プレイヤー本人も見えないのは、リアル性を求めるためだと推測される。
【アーツ】は、武器系の特殊攻撃。【スキル】は、魔法系の攻撃、補助。また、その他【レシピ】や【EXスキル】などのセンス
【アーツ】は、武器攻撃に補正が掛かり、ダメージが入り
【スキル】は、
【レシピ】は、生産に関わるスキルだが、手作業でもアイテムを生産可能。
アーツやスキルに必要なMPを得るためには、プレイ
魔法を使う場合は、【魔法才能】のセンスと魔法の【属性】センスが必要である。これらのセンス自体は、魔法を使う上で
属性を
魔法の基本セットと同じように、戦士系プレイヤーにも基本のセットがある。
武器センスは、対応する武器での攻撃が可能になり、ダメージに補正が入るセンス。
また防具センスは、対応する種類の防具に補正が入るセンスだ。防具センスは、なくても装備するだけは可能だ。ただ、武器センスは、対応するセンスを装備していないと敵にダメージを
武器と防具センス以外のオススメセンスとしては、魔法やスキル、特殊な能力などはない代わりに、特定のステータスの
これら武器、防具。そして、ステータス上昇系のセンスは、スタイルに合わせて取得することをオススメ。
このゲームは、センスの付け方や組み合わせでプレイスタイルが大きく変わる。その時々に合ったセンスを装備することで
攻略サイトを
ところどころに、アドバイスが入っていたのは、非常に
しかし、プレイ初期で取得可能なセンスだけでも結構な数がある。
俺は、どんなセンス構成にするべきか、今一度
じゃあ、どうするか。
──サポートに
そうなると取得するセンスは、
そして、そんな俺の目に攻略サイトのアンケートがふと留まる。
アンケート上位には、メジャーな名前のセンスが確かにあった。画面をスクロールした先には、人気の逆、不人気センスというやつが並んでいた。
「
センスの候補を選ぶのに時間が掛かってしまった。
最低限必須とされるセンスとテンプレ構成を
キャラの配色などは、異常に時間が掛かる、と言われたために
キャラエディットでは、プレイヤー本人のリアルな容姿が
特に、
こうして、俺の冒険の準備が終わった。
これから、オンリーワンなゲームが始まる。
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