第74話 可愛い本仮妻と膝枕
朝食バイキングが終了すると、俺と由季は泊まっている部屋へと戻ってきていた。ジト目を送られたにも関わらず、キスしてしまったことに由季は御立腹だった。
「もう、ゆうのせいだからね」
「悪かった。由季が可愛すぎるのも罪だな」
「ふん、そんな言葉で流されてやらないんだもん」
「行動だったら良いのか?」
「行動もダメです」
なんてことだ。言葉で言うのも動いてもダメだと言われたら流石に由季に愛を伝えられない。改めて己の未熟さを味わった。
まぁ、怒っている理由は給仕の方に生暖かい目線で見られていたのもあるかもしれないが。
「でも、キス受け入れちゃったのは私もだから反省する……」
「由季……」
「そういうのはダメです」
「くぅん……」
「そんな悲しそうな犬みたいな声出しても……」
「くぅ〜ん……」
「なんか、ゆうもバカっぽくなったね」
「な……」
言われて初めて自覚した。いつもは俺の方から翻弄する側なのに、逆に由季から翻弄されていた。これは主導権を握られ始めている前兆だ。気を付けなければ。
「まぁ、冗談はさておいて」
「冗談なの?」
「冗談だ」
「じゃあ、可愛がってあげない」
「あ、あぁ……」
「ふふ、冗談だよ。今なら素直になれば膝枕と頭なでなでが付いてくるよ?」
その言葉に俺は由季の膝に目が行ってしまった。その視線に気付いた由季はイタズラな笑みを浮かべて、ブラウンのチュールスカートを捲り上げた。捲り上げた先には肌白のむっちりとした膝がお出迎えして俺の興奮度は急上昇していく。
「わん!」
我慢できずに俺は本能に従い、由季の膝に飛び掛かっていた。
「んっ……ゆうはプライドがないね」
「由季とイチャつけるならプライドなんていらない」
「もう……すぐそんなこと言う。よしよし……」
柔らかい膝の感触を堪能しながら、心地良い撫でが眠気を誘う。いっそのこと寝てしまうのもありかもしれない。
「少し寝る」
「どうぞ」
了承も得たので瞼を閉じる。そうすれば、柔らかな膝の感触と撫でてくれているほんのりと暖かい指の体温を敏感に感じ取ることができて、直ぐに眠りに落ちていった。
**** ****
「寝ちゃった」
本当はもっと怒っていた筈なのに、犬のようなリアクションをされてしまうと気持ちは霧散してしまった。代わりに存在するのは悪戯心である。
右手で頭を撫で、左手で頬っぺたを突っついてみる。
「あ、柔らかい……えいっ」
頬っぺたの柔らかな感触が癖になり、人差し指で押しては引いてはと繰り返す。悠も私の胸で同じようなことをするのだからお互い様である。
「夜は逞しかったのに今は私のなすがままだね……あぅ……」
その自分で言った言葉に昨晩のことを思い浮かべてしまい恥ずかしくなってしまった。それもその筈であの時の悠は頼りがいがあって何かと凄かったのだ。そう、色々と……。
「うぅ……これも全部ゆうのせいだ」
悠は私が拒めないと知っていたはずなのだ。それなのに、あんな犬のように……。まるで先程の犬のゆうみたいだ。
「私がえっちになっちゃったら、ゆうのせいなんだからね……」
そうは言ったものの大分、悠に染められていることは自分が一番分かっていた。それに何だかんだ言っても嬉しくなってしまうということも。
「ゆう……んっ……」
やっぱり、キスしてみると思う。それでも良いのではないかと。
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