*お母さんと惚気話
時は少し遡り、悠がお父さんに連れ去られた後、私はお母さんに捕まったままでいた。悠と離れたのはつい先程だが、もうくっ付きたくなってきた。
欲を言えば、もう一度繋がりたい。繋がってお互いの気持ちを伝え合いたい。普段から好意を伝え合っているけど、繋がっている瞬間が一番、通じ合ってる気がするのだ。キスも同じようなものだと思えるが、喋れないのがマイナス点だ。その点、えっちは……。
「えへへ……」
「私の由季ちゃんが毒されてる……」
「お母さんのじゃない」
「いけずー」
そうしてお母さんは私をぎゅっと抱き寄せてくる。
「ねぇ、由季? 今の時間があるから言えることだけど、由季がいじめられて少しだけ良かったんじゃないかって思っているの。もし、由季がいじめられていなかったら、由季の心情に変化が無くて、悠君とは少しずつ疎遠になっていく気がしてね」
確かにそれはあるのかもしれない。いじめられていない頃の私だったら、私の心に悠の好意等は響かず、何かと仲良くしてくれる友達の男の子というだけの関係で終わっていたかもしれない。
それからは何事も無く高校を卒業して、普通に大学やら専門に進学する。適当な職場に就いてからは、今の私には考えられないが、悠以外に好きな人が出来てお付き合いをしたり、結婚までしてしまうのかもしれない。
……BAD ENDだ。
例え付き合えていたとしても心の底から愛し合えていないかもしれない。一緒にいる時に苦痛を感じてしまうことだってあるのかもしれない。
これは……HAPPY ENDではない。
「お母さんの言う通り、いじめられて良かった……」
「結論出すの早いわ……」
「だって、ゆうと本当の愛を伝え合うことが出来ないなんていやだもん。心から好きになった人とキスもえっちも出来ないなんて拷問だよ」
「そうね……。私も今の出会いを経て、お父さんと出会ってなかったら、そこまで好きにならなかったかもしれないわ」
「「良かった……」」
それから私とお母さんは惚気話を語り合った。嫌味な話は一切無い、純粋な嬉しい話のみ。そもそも、嫌味な話が存在しないのだから当然のことである。あったとしても『こんなところが〜』と言った部分になるが、『そこも可愛い』と変換されて結局は惚気話となる。
そうして、話しているとやはり当人に会いたくなってくるものだ。
「こっそり盗み聞きでも?」
「しちゃいましょう。それと次に話す題材は嫌味な話がメインよ」
「そんなもの……」
「無いとは言わせないわ。私みたいな歳になってくると適度なガス抜きが必要になって来るのよ。そうね、由季ちゃんに子供が出来て子育てする大変さを理解した時が良いわね」
「分かった」
約束を取り付けたのは良いものの、結果としては悠と由季の間に子供が産まれたとしても面倒見の良い悠が何かとしてくれる為、結局は全て惚気話になるのを由佳が知って、羨ましがるのは当分先の話であった。
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