Epilogue

エリア132での戦いから2日。ガイファルドたちの傷は、槍で貫かれたレオンの右肩以外は大方癒えた。ただし、共命者含む隊員たちの精神的ダメージは少なからず残っており、不安を抱えながら次の戦いに備えていた。


アクトはイカロスに回収されてから五時間ほどして意識を取り戻した。それなりに大きな消耗もさることながら、機甲合身の影響によって肉体的な異常が残り、検査入院となってベッドから動けない。そのためミーティングはアクトの病室でおこなわれることになった。


議題は【新たなセガロイドの登場】と【強行型決戦兵装の有用性と問題点】についてである。


「新たに現れたセガロイドだがデータを照合すると階級はウォリアーの下の第五位と判明した」


第五位という階級に共命者たちは少しホッとするも、録画された映像を観て身震いする。


「what's? この攻撃能力はなんだんだ?!」


A国の航空部隊を殲滅させた雷のような攻撃に驚愕する。


「強力なビーム兵器も稲妻のような攻撃もA国軍の総攻撃に耐えたのもこいつの能力なのだろう。中遠距離及び広範囲攻撃型セガロイドであると推定し、それに伴い呼称はウィザードとした」


「博士、第五位って言ったけど、こいつウォリアーよりも強そうに感じるんだけど」


アクトの感想に皆が同意しうなずく。


「確かに攻撃の距離、範囲、威力、さらには防御システムなど、どれを取ってもウォリアーよりも高いように感じるが、それがなんのリスクもなくポンポン使えるとは考え難い。対峙してみないとわからないが、チャージタイムを要する攻撃である可能性が高い」


博士の推測にそうであって欲しいと強く望むルーク。その理由は自分が近接格闘が戦闘スタイルだからに他ならない。


「あれじゃ簡単に近づけないからな」


とそこまで言ってふと気づく。


「そうだね、では近づいた場合はどうだろう?」


弱点と考えられるのは格闘などの近接攻撃だ。


「近づきさえすればどうとでもなる、とまでは言えないが、得手不得手という点で考えれば接近戦が一番有効であるというのが僕らの世界の常識だ」


博士の言う「僕ら世界」を本当の意味で理解しているのは、同じ趣味を持つ剛田とアクトのふたりだった。その剛田が言う。


「早い段階で防御面と攻撃面の対抗策を考えていかなければならないんだが、その対策の一環としてセイバーの強行型決戦兵装の調整と改修。それから……」


言葉を溜めてルークとエマを交互に見る剛田の目が怪しく笑う。


「お前たちの決戦兵装の開発だ」


「おやっさん、俺たちのもあるのか?!」


「もちろんだ。すでにコンセプトはできている。セイバーのバルサーのデータも合わせて完全版の強化外装を造ってやる」


「お願いする。わたしたちはこうなりたくない」


エマはアクトの手を指で軽く突いた。


「んがぁぁぁぁぁぁ!」


ただそれだけのことに涙目で悶絶するアクト。これは強化外装との疑似神経接続の調整不足による副作用で、肩から指先と膝下から足先が神経過敏になってしまっていた。


「エマ、まじでやめて、お願い」


懇願するアクトの脚をルークが突いた。


「ぃでぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


「確かにこれは勘弁だ。調整した完全版をたのむぜ」


放電しそうなほうどの痺れをともなう副作用に悩まされるアクトを見て、自分らの強化外装の開発に複雑な心境のふたりだった。


副作用はともかく戦闘での有用性は高いと判断された強化外装ではあるが問題点はある。それはその重量を支え攻撃能力をフルに発揮するリアクター出力が一五〇〇万馬力以上である点だ。最終的にはスピリットリアクターを使用することで補うことはできたが、ソールリアクターと併用すると当然共命者に負担がかかる。今回は未調整だったために出力に対する消耗が激しく、短時間のうちにアクトは精神的に力尽きてしまった。


機動装甲戦闘機としての動力炉であるプラズマジェネレーターは小型化したものの、開発途中の試作品であり出力が小さい。何より疑似神経接続している関係上ソールリアクターが生み出したエネルギーとの併用ができない。しかし、スピリットリアクターとの相性は良いため搭載してみたが、結果としてアクトの精神と肉体に多大な負荷がかかってしまった。


多くのクリアしなければならない課題はあるが、新型の兵装は新たな敵セガロイドに対抗しうるものであると証明された。しかし、機械虫より強大な機械獣と二体目のセガロイドの出現。この状況の変化を鑑みるに、今後敵の戦力がさらに増強された場合、今のガーディアンズの戦力だけでは対抗しきれなくなることは明白である。共命者と共命体は機械のようにパーツ交換ができないのだから。


機械虫のみならず機械獣とセガロイドの登場は世界中の人々に大きな不安を与えた。一時は神の使いとも言われたガイファルドの苦戦を目の当たりにしたことが、結果として不安に拍車をかける。


例え苦戦してはいても詳細が明らかなGOTのライゼインの存在の方が不安を払拭する希望の光だったと思えるのは、神王寺ライトのカリスマ性が大きい。ライトの一挙手一投足、自信とそれに伴う言動と行動、そして裏切らない結果は世界の人々を勇気づけ、安心させた。


再び世界の窮地が訪れたことで彼の存在は人々にとって不可欠だったのだと改めて知る。


平和の象徴、希望の光を失ったのは一般の人々だけではない。神王寺の親族、GOTの機動重機部隊、そしてガーディアンズの隊員たちも同様である。


戦いの末に中破しA国に接収されてしまったガンバトラーの返還救出。新たな古代人型戦闘兵器セガロイドの出現。新型の機動重機とレオンとノエルの強行型決戦兵装の開発。そして、セイバーが生み出した謎のアッドジュエルの分析。今後も神王寺ライトの居ない世界で戦いは激しさを増していく中で、様々な問題点の解決、修正、改善、向上は必須事項である。


戦況は厳しくなる一方で、ライゼインを失っいながらも世界のために戦うGOT、ガイファルドを要するガーディアンズを出し抜き、この戦いの主導権を握ろうとするA国軍上層部が水面下で暗躍している。世界各国も世界平和という大きな建前の裏で様々な思惑を抱ていた。


なにより、この一連の戦いを陰で操りつつほくそ笑む者がいることをアクトはまだ知らない。


   ◆第一部 完◆


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