Scene11 -1-
ロボタウンにあるGOT本部では新型装甲材の試作品製造が始められていた。同時にロボタウンの地下数百メートルにある秘密結社ガーディアンズでも新型装甲の製造をより良い物に精製しつつ製造準備が進められていた。
「日向凛、彼女は天才か?!」
同じうよなことを何度となく口に出す、同じく天才の柳生博士。その天才がここまで言うほど日向凛が成し遂げた業績は称賛され、賞讃されて然るべき偉業だった。
「レアメタルであるアンビルバボル鉱石を添加剤として使用する方がより堅牢な装甲を生み出すことになるとは。だがそれには合金を生成するための素材の割合も適正でなければならない上に、加圧や電圧もそれに合わせて調整する必要がある。そうでなければ強度はあっても靭性が低く衝撃に弱い。その適切な配合や精製条件を見つけ出してしまうとは……。なぜか意味をなさない不純物が入っているからそれは除去した方がより結合力が増すはずだ。こういったところはまだまだだが、この無駄と思えることがこの合金を製造するに至ったのか……」
興奮と疑問によって半ば独り言のようにしゃべり続ける博士に呆れながら、剛田とアクトはこの超絶合金によって製造可能となった強行型決戦兵装の最終調整について話し合う。
「構造的な問題はすべてクリアしたな。あとはそれを使うセイバーの出力と結合が上手くいくかだが」
「メカニックの部分はほぼ完成していますから、試作機のロールアウトは十日前後でしょ? 早くテストしてみたいです」
アクトはわくわくを抑えきれず終始笑みがこぼれていた。
この度、開発が進んでいる【強行型決戦兵装】は強敵であるセガロイドという巨人に対して有効な戦力だと期待されていた。
その性能もさることながら趣味的な意味でも非常に魅力的で、彼らはこの兵装の開発により力を入れているのだった。
「剛田さん、ブレード・スタイルのブレードロッドはいつ上がります?」
「芯材ができ次第だけどノエルのダガーを先にするから四、五日ってところだな」
ヘビーアームズは応急的に前面装甲の交換で済ませてフレームは後回しとし、バリアブルガンも取り合えず砲身と発射装置周辺だけ新素材と交換された。
これでフルバースト後に使用できなくなる点を改善された。
新合金は博士の手によって硬度がリンが作った物より二%程度の強化がなされた。これにより神王寺コンツェルンという企業が開発した物よりも高性能な物となり、秘密結社の面目とプライドが保たれたのだと博士は自分に言い聞かせていた。
後日アクトは、過労によって素材配合の分量を逆転させてしまったり、加圧、電圧の数値の入力を間違えるなどの失態があったとリンに聞いた。そのときに出来上がった物がヒントになったという。
硬度は低いが尋常じゃない靭性を持った合金だったことからその設定を元に微調整をおこない、日々の徹夜でトライアル・アンド・エラーを繰り返してついに完成したのが超絶合金だったのだ。
「リンは幸運の女神だな」と褒めると「幸運の女神自身が幸運でどうすんのよ。幸運という外的要因があったのだとしても、これは私たちの努力の結果だわ」と返された。
確かに切っ掛けは偶然だが、その後の作業は努力の賜物であった。
澄まし顔で返したリンではあったが、内心では褒められたことを喜んでいた。
それなりに表情に出ていたがアクトはそのことに気が付いていなかった。
作業は順調に進み、設備が整ったガーディアンズはGOTを一歩先んじて試作品を完成させ、各種スタイル強化が完了た。
期待の強行型決戦兵装はシステムの最終調整は完了していたが組み立てが間に合わず完了まであと一歩という状態。それにともなってセイバーは兵装に合わせた形態変化プログラムによる最終工程が開始されていた。
アクトが今か今かとセイバーのそばで完了を待ちわびていた頃、ついに事件が起こる。
一ヶ月以上大きな動きを見せなかった機械虫がとうとう動き出したのだ。
また以前のような大侵攻かと思いきや、今度はB級以上で構成された精鋭部隊といった感じだ。
その機械虫がA国のとある場所に向かって侵攻しているという情報が入って来た。
「あのエリアか」
「あのエリアだな」
「あのエリアですね」
「あのエリアって?」
「あのエリアのこと」
これはルークがガーディアンズに来たばかりの頃の話だ。以前、まだC級機械虫までしか出現していなかった時期にこのエリア132に機械虫が現れたことがあった。
「まさかあそこまでしてくるとは思わなかったよな」
「だね、僕もさすがに驚いた」
GOTにはまだライゼインは無く、ゼインに搭乗したライトとガンバトラーで救援に向かったところ、A国はエリアへの侵入は攻撃対象になると警告してきた。
GOTは日本に基地を持ちながらも所属国がないため、A国は容赦なく攻撃してきたのだ。
「国際問題になることがないとは言え、あの頃は手に余っていたC級を相手にだよ。GOTの救援を断るだけでなく攻撃までしてきたから、よっぽど隠したい物があるんだろう」
「ホントにあそこには何があるんだろうか。宇宙人関連の何かなんて言われてるけど」
それはもはや都市伝説だがガイファルドという古代の遺物があると考えれば、あながち都市伝説とは言い切れない。
今回も攻撃されるのかと考えるとどうした物かと悩んでしまうのだった。
発進準備を進めてはいたのだが、いまいち気乗りしないガーディアンズたち。そんなガーディアンズのメンバーをよそに、GOTの機動重機部隊の隊長代理であるガンバトラーは、GTOの司令官に「A国の救援に行かせて欲しい」と直訴したのだ。
「領海侵入しただけでもうるさいのにエリア132となると考えるだけで頭が痛いわ。あそこは同盟軍ですら入れない場所だから。でも今回はB級以上の精鋭部隊が相手だし、自国だけで対処できるとは思えない。状況を見て助力してあげてちょうだい」
そう命じたのは
ガンバトラーからの訴えを受け、悩んだ末に出動の許可を出した。
既に発進準備を完了していたガンバトラーとガードロンはすぐに飛び立ち、超高速でA国に向かっていた。
一方、ガーディアンズも遅れながらもようやくA国の戦地へ発進準備が整った。
発進がGOTから大きく遅れたのは、完成間近の試作兵装とプログラムのインストールで動けないセイバーの移動に時間を要したからだ。
みんな今までと変わらないように見えて、セガロイドとの戦い以来、危機感と警戒心が高まっている。
そんなテストもしていない試作品が使えるかどうかの問題ではなく、あらゆる状況に対応できる準備をしておかなければ不安だったのだ。
カタパルトから高速で撃ち出されたイカロスはディストーションミラーを展開して不可視状態となり、先行しているGOTの機動重機部隊を追いかける。
***********************************
続きが気になる方、面白かったと思った方、フォロー・応援・感想など、どうぞよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます