Scene9 -1-
機械虫の新種との戦いから一ヶ月……、遅ればせながらアクトは無事に大学は卒業し、ロボタウンにある本部研究所メカトロニクス統合開発部門に正式配属し、ニ足のワラジで忙しいながら、充実の日々を送っていた。
出勤は不規則で博士や剛田の予定と合わせることが多く、それ以外はガーディアンズ基地での訓練や自主トレに没頭する日々である。
ロイドとの戦闘訓練によって戦士としての実力を身に付けたアクトは、合身時にもその成果が出始めた。というよりも合身時の方がよりその力を発揮していた。
それを証明するひとつの指針としてソールリアクターの出力がついに1000万を超えたのだ。共命度B1だと残念がられていたアクトがこの短期間でレオンとノエルに迫りつつあった。
そんなアクトに対して珍しくエマが質問する。
「アクトは共命度は高くないのに色々とできるようなるのが早い。なぜ?」
エマの表情はどこか悔しそうだ。
「それはたぶん……イメージ力かな? 博士もイメージが大事だって言ってたじゃん。あとは努力と根性。それがあれば無敵だ! って描かれてる作品が好きだったし」
「努力はわかる、でも根性って?」
「えーと、根性って言ったら諦めない精神とかそんな感じか」
その回答にエマは首を捻った。
「根性が曲がっているって言葉もあるし、努力にはプラスの意味しかないけど、根性にはいろいろな意味がある」
エマの指摘にしどろもどろするアクトは、
「た、たぶんそういう風に論理的に考えないでどんな状況でも『やってやるぞ!』って強い精神が根性っだと思うな。つまり、日々の鍛錬を怠らない努力と、来るべき困難なその瞬間を乗り越えるタフな精神?」
「そうなのね。わかった」
エマはぶつぶつと何かを呟き考えながら去っていった。
一方ルークはアクトの成長を純粋に喜んでいたのだが、
「努力と根性ねぇ。エマは論理的だからな。まぁやってりゃいつかなんとかなるだろ」
とエマとは違い楽観的だった。もう少し思い悩んで考えた方がいいのじゃないだろうかとアクトの方が心配してしまうほどだ。きっとその楽観的に見える言動は、日々の修練で身に着けた強さに対する自信の表れなのだろう。確かにルークはそれだけの修練をおこなっている。いかに強大な機械虫が現れても絶対に負けないという自信が、自分が勝利するイメージを作り上げているに違いないと、アクトは感心し、密かに尊敬していた。
だが、もしその自信が崩れたら……、そこまで考えてアクトは首をブンブンと横に振る。
『心配しすぎだな』
アクトはどちらかというとネガティブに考える傾向にある。だから努めてポジティブに振るまうようにしていた。
「どうした?」
「いや、ルークの爪の垢を煎じて飲みたいって思ったんだよ」
「うげっ、そんなもん飲みたいのかよ」
ルークは激しく表情をゆがめて身を引いた。
「ばか、言葉のあやだ。すぐれた人の爪の垢を薬として飲んででも、その人にみたいになりたいっていうような意味」
「俺みたいになりたいって?」
ルークはアクトの言葉を笑い飛ばした。
「そんなに笑うなよ」
「悪い悪い、実はさ俺も最近お前みたいになりたいなってちょっと思ってたから」
思いもかけないルークの告白にアクトは驚いた。いったい自分のどこをルークほどの人間が認めたのだろう。何を比べてもアクトがルークに勝るモノはない。少なくとも現状では。となると戦闘以外の部分か?
「オレの物理化学エンジニアとしての知識とかか?」
確かにこの点については頑張ってきた自負はある。この二ヶ月も柳生博士と剛田にいろいろなことを教えてもらい、更に磨きが掛かっているのは間違いなかった。
だがルークは首を横に振る。
「えー、じゃぁどんなところなんだよ」
笑ってはぐらかすルークをアクトは問い詰めた。
ビービー!
ガイファルドの出撃が必要な機械虫出現を知らせる警報音だ。ふたりはすぐにガイファルドたちが待機するハンガーに向かって走り出した。
「続きは帰ってきてからだな」
「帰ってきたらちゃんと教えろよな」
ハンガーにはすでにエマが到着しており、三人の共命体たちは先にエレベーターで超速機動揚陸艦イカロスのカタパルトデッキへ降りていた。
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