第457話 定点観測

無事に遭難者3名を救出した俺は、以前に皇帝君と開発した、スカイラークの自動操縦システムを使って、『スノーマン島』上空にホバリングさせて、定点観測ポイントを作ったのだった。


上空から見る火山の噴火は迫力満点で、シールドを展開して居ても、ビリビリと空気の震えを感じる程であった。

更に、ある意味自然界のショーとして見る分には、豪快な火山灰の摩擦等による静電気の放電現象が、濃い灰色の噴煙に彩りを添えていて、神々しいし、赤い溶岩の光に照らされた別の生き物の様にも見える。


特に何と言う訳でもないのだが、折角の自然が作り出す壮大なショーなので、アケミさんや子供達、コナンさんらも定点観測用のスカイラークに呼んで、後学の為にも火山の噴火の様子を見て貰ったのだった。


殆ど全員が初めて見る火山の噴火に驚き、恐れを顔に表していた。

俺が何故火山が噴火するか、何故放電現象(雷)が起きているのか等を細かく説明すると、自然現象に驚きつつも納得し、闇雲に畏れる事は無くなったと思う。


シャドーズに日々交代で1日1回程度定点観測ポイントから確認して貰うレベルで、緩く観察する事にしたのであった。


とは言え、1日1回程度の確認を目視でして貰っても、観察する方も何の違いがあるのか、判断付かないと言う意見も合って、一定時間毎に静止画を撮影する様にした防犯カメラ的な物を考案し、現行のカメラを改造して作ってみた。


まあ、これなら、人の手も患わせないので、気兼ねが無くて良い。結局1時間に1回の撮影頻度に設定して、暫く放置する事にしたのであった。


 ◇◇◇◇


無人による定点観測に切り替えて1ヵ月が過ぎ、撮りためた静止画を元にパラパラ漫画の様なコマ撮り動画にして確認してみると、最初は目の錯覚かとも思ったが、面白い事が判明し、定点観察ポイントというか、対象をもっと拡大して、島全体をカメラのフレーム内に収める様なアングルから大きく観察する事にした。


更に1ヵ月が過ぎ、最初に目の錯覚かと感じた違和感は現実の物であった事が判明し、こう言う事もあるのかと、驚いたのであった。


通常、元の世界では、海底火山が噴火して溶岩が溢れだして、冷えて行き、徐々に島を形成して行ったり、その島がドンドン大きくなったりする事はあるが、これらは、火山から溢れた溶岩が陸地と変化して起こる物だとばかり思っていた。


だが、この『スノーマン島』では、現状、溢れた溶岩が流れ出て島を拡張してないのにも拘わらず、島自体が隆起して居る様である。


その証拠に、新たに追加した定点観測かの島全体のパラパラ動画では、海岸線が如実に変化し、島の面積が明らかに変わって居るのである。


この1ヵ月ぐらいで、島の面積は1.2倍くらいにはなっている。


嘗ては海であった海底部分が隆起して島の一部となって成長して行く。


実に面白い。


俺は、秘密基地に皇帝君を呼び出して、このパラパラ動画を見せて状況の説明をすると、皇帝君も驚いていた。


「俺も地質学とか詳しい訳じゃ無いけど、こう言う現象もあるんだね。このまま大きくなると、島じゃなくて大陸になったりしないかな?」と感想?を述べていた。


「ふむ、やはり、皇帝君も俺と同じ様な反応だね。何か面白いというか、不思議だよね。 一応、このまま観測は続けるけど、こんな状況だから、呉々もまた鉱山に戻って採掘しようとしちゃヤバイからね!?」とフリではなく、マジで止めておいたのだった。



さて、話はガラッと変わって、いよいよ、俺の嬉しくも有り、寂しくもある瞬間がまた訪れてしまった事に移るが、休暇でプロポーズ旅行をしていたサチちゃん&エリックカップルが王宮に2人仲良く戻って来た。

指にはお揃いのペアリング嵌めていた。


そして、改まって、「ケンジ兄ちゃん、アケミ姉ちゃん、俺達、結婚したいと思ってます。どうか、結婚のお許しを。」と2人揃って頭を下げて来た。


「そうか!お互いが幸せになる為に2人で決めた事なら、反対なんか、ないぞ! おめでとう!」と言って、家族みんなで2人を祝福した。

「サチ姉、おめでとう!」とユーちゃんが抱きつく。

「サチ姉、エリック兄、おめでとう!それで、旅行どうだったの?」とケンタがエリックにお祝いを言いつつニヤニヤしながら聞いている。


エリックは照れながらも、「そりゃあ、凄く楽しくて美味しかったさ!」と良い笑顔で返していた。


2人を囲んでワイワイを祝福していたが、俺は気になる事を先に済ませるべきだと思い、家族全員で、サチちゃんのご両親の墓に2人の結婚の報告をしに行こうと提案した。


リックの結婚から久しぶりの墓参りである。


ゲートで移動して、墓石と墓の周囲を綺麗にして、お花をお供えしてお酒をお供えし、腰を屈め手を合わせてご両親に語りかける2人、俺もそれに続く。


「リックとサチちゃんのお父さん、お母さん、2人は立派に育ち、それぞれ伴侶を得て、幸せな家庭を築こうとしています。余り親代わりとして何もしてやれずに、申し訳無い。 でも、きっと幸せな家庭を築いていってくれると思うので、温かく見守ってやって下さい。」と心の中で言って頭を下げたのであった。


心無し、サチちゃんもエリックもご両親に報告出来た事でスッキリとした表情をしている様に感じる。


「さあ、取り敢えず、帰って、今日は雷寿司で、みんなで、ミナールの握った寿司でも食べようか!」と言って、一度王宮に戻って予約出来るかを確認してから、家族全員で雷寿司へ繰り出すのであった。


「やっとミャ? おめでとうミャ!」と雷寿司の看板招き猫のミナールがお祝いを言って、2人の結婚宣言に喜んだライゾウさんが張り切って、美味しい所を惜しみなく握ってくれたのであった。



リック達のスケジュールを確認する為に連絡を入れて、サチちゃんとエリックの結婚式の日取りを決めてと、バタバタとした日々が過ぎて行く。


ちなみに、2人は結婚後城をでて、新居でラブラブ生活をするのか?と思っていたのだが、

「え? いや、サチちゃんの部屋に俺が引っ越す感じで居たんだけど?」とエリックがあれ?出て行かなきゃ駄目だった?ってキョトンとしていた。


「いや、それなら、もうちょい、広めの部屋に移動しろよ、折角の新婚なのに、狭いだろ?」と俺が王宮のちょっと広めの部屋2LDKぐらいの間取りの部屋を勧めると2人で嬉し気に即日引っ越しを済ませたのだった。


現代の日本人の新婚カップルの感覚だと、同居とか二世代住宅とか敬遠しそうな物だが、この2人には不思議とそういう感情が無いみたいである。


この世界はこれが標準なのだろうか?と思いつつ、その疑問をサチちゃんにぶつけてみると、


「え?だって、ケンジ兄ちゃん、みんな長年一緒の家族だよ? 部屋に入ればプライバシーもバッチリあるし、セキュリティーも万全で、その上、食堂で三食出るし、大浴場の温泉付きだよ?態々不便になって、セキュリティに不安が残る王宮の外に家を借りる意味がないじゃない?」と言われ、確かに・・・と納得したのであった。


確かに義理の両親も何も、そもそも全員、家族だったわ!しかも、職場が王宮の工房だし、王宮住まいの方がらくだよな・・・。


まあ、嫁に出すっていう寂しさは、少し緩和されたと思う。



そして、アッと言う間に迎えた結婚式の日、リック達、俺達家族だけで無く、長年2人を見守って来た王宮のスタッフや工房の同僚ら、それに帝国からは皇帝君と助手A君B君も参加しての賑やかな結婚式となった。


大神殿へと集まり、リックの時と同じ様に司祭長のモーテンさんの進行で、厳かに式が進み、2人は女神エスターシャ様の像の前に跪き、結婚の誓いを立てる。


2人の姿を、大神殿の窓からの優しい光が照らし、司祭長の合図で、鐘がゴーン、ゴーンと鳴って、式が終わった。


全員からの祝福の拍手の中、笑顔の2人が大神殿の外へと出て、B0の引くオープンの馬車に乗って宮殿のホールへと移動して行く。


道中、王都の街のみんなに拍手で祝福されて照れる2人が、ゲートで先回りした参加者全員で、待ち受け、そのまま結婚祝賀パーティーへと移行したのであった。


途中、エリックとサチちゃんの俺とアケミさんへの感謝の言葉に、またもや大号泣してしまったのは、勘弁して欲しい。


意外にも、皇帝君が俺の隣に立って、「良くやった。」と肩を組んで褒めてくれたのだが、余計に感極まってしまったのだがな。


でも、本当に良かった、これから、沢山幸せになって欲しい・・・。

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