第321話 家族でプチお出かけ

「ねぇ、アケミ、聞いて聞いて! ついに完成したんだよ!!」


「おかえりなさい、あなた。 えっと、どれが完成したんです?」


あれれ? 言ってなかったっけ? ああ、驚かせ様と思って内緒にして貰ってたんだった。


「あー、ゴメン。 驚かせようと思って、まだ言ってなかったんだった。」


アケミさんに謝ってから、アケミさん、ユーちゃん、リック、サチちゃん、エリックを伴い、いそいそと城の裏庭へと連れてきた。



「フフフ、じゃあ、出すよぉ~。 ジャジャーーン♪」


俺は効果音を口で付けつつ、スカイラーク0号を庭の上へと取り出した。


「あら、かなり大きな物ですね? これは?」


「お皿みたーーい!」


「何する物なんですか?」


とアケミさんも子供達もこれが何をする物なのか、全然想像出来ない様子。


「フッフッフ、これはね、何と、空を飛べる乗り物です!」


「え!? そ、空を飛ぶんですか? これが?」


驚くアケミさん。


「「「えぇーーー!? 空!?」」」


「ケンジ兄ちゃん、すっごーーーい!」

サチちゃんが目を輝かせながら褒めてくれた。


「テストフライトは済ませたから。 ちょっとだけ先に乗ってみるか?」


「「「わーーーい!」」」

と一斉にはしゃぐ子供達。


「あなた、ユウコも一緒で大丈夫でしょうか?」


「勿論、そこは安心して大丈夫だから。」



全員がハッチから機内へ乗り込み、シートに座らせると、俺はコクピットへと入って行った。



<えー、皆様、長らくお待たせしました。 これより当機は遊覧飛行に入ります。

離陸時は、シートにお座り頂き、決して窓から身を乗り出さない様にして下さい。 ああ……窓は開かないけどね。>


一応定番の機内放送を行って、魔導スイッチを入れ、スカイラーク0号を離陸させた。

着陸時のギアを格納し、ドンドン上昇する。



「わぁーーー! 凄いよーー!」


「ヒッ! あ、あんなに城が小さくなって行く!」


「すごーい、全く揺れないよ?」


「これは! あなた、凄いです!!!」


後ろの乗客席から色んな声が漏れ聞こえてくる。


俺は目的地をランドフィッシュ村にセットし、自動操縦に切り替えて、乗客席へと移動したのだった。


2時間程のフライト中、子供達は飽きもせずに下を見下ろして、キャッキャとはしゃいでいた。

ユーちゃんもみんなと一緒のお出かけで嬉しいらしく、ご機嫌である。

俺とアケミさんで一緒にあやしながら、空の旅を満喫した。




そして、2時間後、目的地であるランドフィッシュ村の傍の丘の上に到着し、密かに着陸した。


6人でアケミさんのご両親のお墓にお参りし、初孫である優子や、リック、サチちゃん、エリックも紹介したのだった。



「さて、本来なら避けたい気もするんだが、せっかくだから、子供達に出来たての海鮮汁とか食べさせてやるか!?

ユーちゃんもお披露目しとく?」


俺がアケミさんに提案すると、やはりちょっと我が子を自慢したかったらしく、嬉し気に「はい!」と応えて来た。



「さぁ、という事で、子供達よ、今から戦場へと赴くが、覚悟は良いか? 相手は海千山千の強者だ。

気を引き締めて掛かれよ!」


「「「おーー!!」」」


子供達が元気に片手に拳を握り締め、振り上げていた。



「そ、そこまでですかっ!」


そんな俺達を見て、アケミさんが苦笑いしながら呟いていた。




久々に訪れたランドフィッシュ村だが、かなり様変わりしていた。

鉄道が出来た影響で、市場はもの凄い活気である。


――にも関わらず、早速市場の入り口付近で拿捕されてしまった。


「あらぁ~、何処の奥様かと思ったら、アケミちゃんじゃないのぉ~。 まあ! まあ!! 可愛い赤ちゃんだこと! あらあら、アケミちゃんの小さい頃ソックリじゃないのぉ~!!」


「え? アケミちゃんの赤ちゃん!! まぁまぁ、可愛いわねぇ! 女の子よね? あらあら、可愛いわぁ! ああ、そう言えば結婚したんだっけ? あらあら、旦那は? ああ、あのイケメン? 羨ましいわぁ! ウフフ」


「あら、こっちの子供達も? あら~、一気に子沢山ねぇ? 幸せそうだわねぇ。 良かったわねぇ。 そうそう、モンゾウさんの所にも男の孫が出来たって言ってたから、将来は結婚させるのも良いわねぇ~。」



お、恐ろしい事を言ってやがる! 優子は渡さんからな!


「ダメです。 うちの優子は嫁にやりませんからっ!!!」


俺が真顔で叫ぶと、おばちゃん連中から大爆笑されてしまった。

まあ、その大爆笑に釣られてワラワラと更におばちゃんが寄って来てしまい、大変な状態になったのだがな……。




30分ぐらいで、やっとおちゃんの包囲陣から脱出出来た頃には、俺もリックもエリックもかなり、ゲッソリしてしまっていた……主に精神的に。


「ケンジ兄ちゃん、俺、やっと意味が判ったよ。 あれはキツい。」


「だろ? 俺達、男には厳しいよな。 誰が誰に対して話ししてるのかさえ判らん。」


「こ、怖かった……」



「兎に角、昼飯だ! 食い物は美味いから、安心しろよ。」


俺達は気を取り直し、食い物の屋台を廻ってガンガン買い漁って行く。


いつものおっちゃんの海鮮汁も大鍋に別けてもらって入手完了。


「よし、食い物の調達完了だな。 機内に戻ってマッタリと食べよう。」


俺達は、ゲートを丘の横に出て、機内に乗り込み、一旦上空へと飛び上がった。

そしてアケミさんの用意してくれたおにぎりや、出汁巻き卵やに付けもテーブルに焼きたての焼き魚や海鮮汁、刺身や焼きイセエビ、焼きウニ等を堪能したのであった。


「あぁ~美味しかった。 やっぱり、お出かけと言えば、おにぎりだよなぁ。 アケミの作ったおにぎりは、最高だよ! 優しい感じが堪らないね。」


「フフフ、そんな……ただ普通に握っただけですよ? でも、ありがとうございます。」


アケミさんは照れながら返してくれたのだった。



「で、物は相談なんだけどさ、折角こんな移動手段も出来た事だし、家族旅行というか、この大陸とは別の大陸を探してみたいと思っているんだけど、どう?」


食後の団欒で俺は熱いお茶をフーフーしながら聞いてみた。


「新しい大陸ですか! あるんですか?」


「どうだろう? 島があるのは判っているから、大陸だってあるんじゃないかな? まあ、この世界がどう言う構成? 構造? かは不明だけど、一般的な惑星なら、丸い球状だと思うんだ。

その証拠に海の向こう側は見えないよね。平坦で何処までも続くなら、視力さえ上げれば向こう側だって見える筈なんだけどね。」


俺は紙に円を描いて、見晴らし線を描いて説明した。


「うーん、スケールが大過ぎてイメージが湧かないですけど、なる程…… で、それを探検したいという事なんですね?」


「うん、その為にこの機体を作ったと言っても過言では無いかな。 まあ、何かあれば、ゲートで直ぐに帰る事も出来るから。」


「まあ、この飛行機でしたっけ? このスカイラークに乗っていれば、ユーちゃんも城に居るのと同じで特に問題は無いですし、一緒に行きましょうか。」

と賛同してくれたのだった。



その日は一旦、城に帰り、着替えや食料等の必要な準備をする事にしたのであった。

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