第311話 強敵現る
それからのクーデリアの動きは『今までのは何だったの?』と問い詰めたくなる程に素早かった。
王子(王太子)から華麗に王様へとなった新国王が、精力的に動き、早速自国民からなる作業員を大々的に募集して集め、速攻で作業員訓練へと入った。
それと平行して、大規模なクーデリア国内の盗賊一掃作戦を展開し、各国から流れて来た盗賊団を、面白い程に駆逐して行った。
何だかんだあったけど、クーデリア線は10月から正式に着工する事が出来た。
とは言え、その裏では人員や物資の調節で、かなり色々と無理をしたんだけどね。
外環状線の方は無事に開通し、他国の好意でその作業員の貸し出しもあって、イメルダ~クーデリア、クーデリア~サウザンドの外環状線も着工する事が出来た。
そして、12月7日に何とか全線開通した。
後は、作るとしたら、大陸の外周近くを廻る路線やローカルな路線ぐらいかな。
まあ、そこら辺は冬の間に各国と調節する感じだろう。
どちらにしても、俺の出番は取りあえず終わったんじゃないだろうか?
「さあ、これで心置きなく、ゆっくり子供らと過ごせるよな? それ位しても罰は当たらないだろ。」
やっとホッと出来る余裕が出来た。
それから数日が過ぎると、早めの初雪が降り始め、エーリュシオンにも本格的な冬がやって来たのであった。
冬の間、子供と遊んだり、剣術や魔法の訓練に付き合ったりしつつ、空いた時間で裏山のダンジョン攻略を再開して、ガンガンと先へ進んだ。
20階層を過ぎると、砂漠エリアに突入し、初めて見る砂漠に思わずはしゃいでしまった。
鳥取砂丘以外でこれだけ大量の砂を目の前にした事が無い。 いや、鳥取砂丘でも実際に歩くと広く感じるのだが、ここは終わりが見えない分、精神的な疲労度が増す感じであった。
この砂漠エリアでは、巨大なミミズの様なサンド・ワーム、デス・スコーピオン、デス・ホッパー等の虫系を相手に無双を続けた。
ちょっと笑ってしまったのは、何故かコナンさんだけが、18回程サンド・トラッパーという蟻地獄に似た感じの魔物の罠に嵌まり食われ掛けてた事かな。
まあ、確かに巧みな罠で、普通に砂丘の尾根を歩いて居たら、突然足下が崩れ、流砂となり滑落していく感じなんだよね。
「な、何で僕だけ?」とコナンさんが怒ってた。
「きっと、コナン殿は美味しい匂いがするのでござるよ。」
「ハハハ、案外そうなのかもな。」
その後、仕切りと自分の匂いをクンクンと嗅いで、「いや、大丈夫?」とか呟いていたようだ。
砂漠エリアで何が一番大変って、それは移動であった。
足場強化を付与したあのブーツを履いているので、足場は比較的に良いのだが、尾根伝いに歩く為、無駄な距離を歩く羽目になった。
マダラ達に乗って移動するという案もあったのだが、一度連れて来たら、
<<<<足ーーー! 足が焼けるーーー!>>>>
と砂の熱さで泣きが入り、ゲートで厩舎へと戻したのであった。
同じ理油で、ピョン吉達も砂漠エリアに入った直ぐにリタイアしていた。
尤も、ピョン吉は、足ではなく、お腹が焼けると云って、俺に飛びついて、ヒシッとしがみついていた。
デカくなったピョン吉が俺の胸にしがみついてプルプルして居るのを見ると、出会った頃を思い出し、思わず微笑んでしまった。
30階層代はまた洞窟エリアに戻り、オークが主体となっていた。
やはり他の階層と同じで、やたらオークの数が多い。
第39階層を終えるまでに多分5000匹は軽く倒したと思う。
ただ、洞窟エリアとオークと云う巨体のお陰で、一気に怒濤の様に取り囲まれて襲って来ると云うよりも、2列や3列で流れて来るベルトコンベアの様な流れ作業で倒せるので、実に楽であった。
第40階層のボスはオーク・エンペラーでキングやナイト、アーチャー、メイジ等を含め100匹程の大群だったのだが、そもそもそれ程大きくないボス部屋に100匹もの巨体がひしめく通勤列車顔負けの混み具合で、ダンジョンは一体何を考えてるんだろう?と不思議に思える状態だった。
無論ギッシリ詰まった状態で身動きが殆ど出来ないオーク共を一方的に殲滅しサラッと終わってしまった。
続く40階層代は乾いた岩場エリアで、主にリザード系が出て来た。
リザード系全般に言えるのは、兎に角外皮が硬い事だが、俺達の愛刀の前では豆腐と変わらない強度であった。
尤も、中には耐魔法攻撃に特化した種類も居て、コナンさんが多少苦戦していたぐらい。
50階層のボス部屋は、レッド・リザード・キングで50匹のレッド・リザードと一緒に出て来たが、これも問題無く瞬殺であった。
「主君! 段々楽しゅうなって参りましたな! この先がワクワクしまずぞ!」
階層がすすにつれ、強くなって行く魔物達にコルトガさんが嬉し気である。
しかし、50階層代に入って、ちと状況が一変して来る。
第51階層からは廃墟エリアであった。
何というんだろうか、完全に建物が崩壊した際の瓦礫と今にも壊れそうな倒壊寸前の建物、それもビルっぽい物まである。
「まるで、地球の成れの果ての様な風景だな……」
俺に取っては、映画のワンシーンで見た様な最終戦争後の地球に見える。
そして、出て来る魔物は、ゴーレム? ゴーレムだよね? まあ生命体では無い石で出来たストーンゴーレムから始まった感じなんだが、これが完全にロボット風のゴーレムなのである。
最初は寸胴でドラム缶的な胴体と手足、丸っこい頭だったのだが、階層を進む毎に徐々に洗練されて行き、材質も石から鉄へと変わり、堅く強靱になって行く。
まだ、鉄製のアイアン・ゴーレムぐらいまでは良かったんだけど、スチール・ゴーレム辺りから動きも素早くなって来て、刀に五重の付与を掛けてやっと関節を斬れるかどうかぐらいにまで強くなってしまった。
そして、迎えた第56階層では、ついにミスリル・ゴーレムへと進化し、身体加速を使ったアケミさんレベルの速度となった。
「こ、これはかなりヤバいな。」
思わず呟く健二。 周りもそれに同意する様に頷いていた。
最初は昭和臭のするロボットだったのが、徐々に宇宙世紀に突入するぐらいのデザインとなっていて、しかもマグネット・コーティングされたかの様な動きになっていると云う訳である。
大きさこそ、全長5~7mぐらいなのだが、魔法攻撃は全く意味が無い。
寧ろ、魔法攻撃を受けた際の魔力を吸収して、自らの攻撃や動作のエネルギーに転換している感じであった。
4人掛かりで1匹……いやロボット風だけに1体と言うべきか? 兎も角最初の1体倒すだけでも軽く1時間程掛かった。
ゴーレムを倒すのは、ゴーレムのCPUと云うべき核を壊すか、魔石を破壊する必要があるのだが、これは一定箇所にある訳では無く、絶えず動いているのか、それとも個体別にランダムなのかは不明だが、決まった場所が無い。
しかも第57階層に入ると、一度の接敵で出て来る数が増え始め、そんなヤバいミスリル・ゴーレムが、まるで足軽の様な量でやって来る様になる。
流石のコルトガさんも、少し顔色が悪く、嫌な汗を掻いているっぽかった。
何とかシールドを張りつつ各個撃破していたが、丸一日戦い続けた21体目でとうとう、シールドが突破される様になり、危うい所で緊急離脱したのであった。
「危なかったな。 いやぁ、ちょっと舐めてたよ。 まさか、あそこまで強力な奴が居るとは思わなかった。」
這々の体で逃げ戻った城の休憩室のソファーでグッタリ身を沈めつつ、俺が呟くと、
「主君、あれは災害級等のレベルじゃあ収まらない奴らでしたな。 このコルトガ、ここ十年で一番肝が冷えましたぞ。」
「拙者もでござる。 あれがゴーレムでござるか。 あんなので侵略されたら、太刀打ち出来ないでござるな。」
「魔法を吸収して赤く光輝くと、動く速度も力も倍以上って、反則だよ! 僕役立たずじゃん。」
「まあ、何とか無事に戻って来られたけど、今日一日で装備がボロボロになったな。 ウーン、これはもっと装備を改良する必要があるのかな。 ちょっと親方と相談してみるか。 という事で暫くダンジョンは休憩ね。」
今回のダンジョンでは、ある意味愉しみを見つけた様な気がする。
確かに絶対的な信頼を持っていたシールドを破られたのは想定外ではあったけど、まさかゴーレムがなぁ~。
まるで近未来アニメや映画の世界ぐらいでしか思ってなかったけど、ゴーレムかぁ。 面白いな。
この世界にゴーレムを研究している人とかって居ないのかなぁ?
あれ、パワードスーツ的に、身体に装備する感じでもかなり凄い感じになるんじゃないだろうか?
例えば、過酷な開拓とか土木関係でも使えるし、魔物、それもスタンピード的な時には、村や都市の防衛に役立つんじゃないだろうか?
これも目標の1つに追加しておこうと心に決める健二であった。
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