第301話 家族サービス
8月一杯で全作業員を乗せた試運転を行ったり、プレオープンで、国民のみんなをのせて、試乗会を行った。
駅の前には出店は出るわ、花火魔法は打ち上がるわで、ちょっと早い収穫祭並の大賑わいである。
もうね、みんな目がキラキラしてて、少年少女の瞳になってたよ。
熱中症から生還した元祖村長なんかは、「ガハハ、長生きはするもんじゃて。 ケンジ様と一緒におると、これだから止められん。」と豪快に笑っていた。
もう完全にお祭り状態である。
ホームでは、列車をバックに家族写真を撮る者、恋人と抱き合って撮る者等、1人で自撮りする者等、様々であるが、みんなが良い顔をしていた。
俺? 勿論、アケミさんと2人の写真も、子供らと5人の写真も色々なカットで撮ったさ!
フフフ、また、フォトスタンド作らないとだな。
家族5人で、特等の空間拡張された個室に乗って一周したが、実に快適であった。
「こう言う旅もたまには良いねぇ。」
「はい。 子供らも嬉しそうですね。」
「ケンジ兄ちゃん、これ、凄いよー! 全然揺れないね。 しかも早いよー!」
とサチちゃんからも大絶賛であった。
9月1日には、本格的な開通式を行い、派手派手しく定期運行が開始された。
一応、社交辞令的に各国へ、開通のお知らせを送ったのだが、何故か、無茶な日程で馬車を飛ばしてやって来たよ……しかも王族がゾロゾロと。
まあ、流石にドリーム・シティ駅に来るのは諦めたらしく、各国の領土に一番近い駅にやって来て、ワイワイと嬉し気に乗り込んで来た……らしい。
俺はその時点では既に、サウザンド王国と魔王国線の建設に着手していて、決められたルートに従い、マギマーカーを上空から打ち込みつつ、海沿いの王都サウザンドまで自力で飛んだり、ゲートを使ったりして移動してたからね。
まあ、流石に長距離を自前で飛びながら、正確な直線上にマギマーカーを打ち込むぶのは何気に大変で、3日間掛かってしまった。
まあその甲斐あって、今では今では作業員達が、怒濤の勢いで直線上にレールを敷いて行ってくれている。
既存の生き残った都市や復活させた(又は復活予定の)都市を結ぶ為、何箇所かカーブを作って居るが、出来るだけ高速移動を可能にする為の直線である。
最小限に抑えているカーブも、出来るだけ緩やかにしてバンク角も付けているので、そこそこの速度で走っても大丈夫な様にはしている。
これらのお膳立てを完了し、ほぼ俺の手は離れ、後は総監督の指揮の下、作業員達の奮闘に委ねられたという訳である。
やっと、自由な時間が戻って来た俺は、やや放置気味になっていたアケミさんやリック、サチちゃん、エリックの4人と一緒の時を過ごす為、何処かで何かしようと計画を練るのであった。
「やっぱり夏と言えば、海かなぁ。 いや、既に9月か……秋と言えば、BBQもあるんだけど、それだと余りいつもの旅の途中と変わらない感じになるかな。」
俺はブツブツと呟きながら、何かこれまでにやった事無い物が無いかと思考を巡らせていたが、結局パッとした事は思い付かなかった。
9月に入ったとは言え、今年の残暑は長く、秋の気配すらしない。
まあ残暑もキツいので、プールでも行くかな。
早速アケミさんと子供達に打診すると、大喜びで即決となった。
そうそう、今回流れるプールやウォータースライダーを作る際、同時にこの世界初の伸縮素材による本格的な水着を開発して発売したんだよね。
その結果、もうバカ売れ。 とにかく、可愛い系からセクシー系まで色んなデザインを作ったのが功を奏したらしく、特に女性に大好評だったみたいだね。
で、女性に人気が出ると、必然的に男性もそこに群がる訳ですよ。
まあ、そんな訳で、若い連中にプールは大人気となり、デートコースに積極的に取り入れられた訳です。
しかし、ここで、俺はハッと気付いた。
プールに行くという事は、全員水着になる訳で、そうするとだよ? 必然的にアケミさんも水着になる訳ですよ。
貸し切りではないから、当然他の客も居る訳で、そうなると、男共もワンサカ居るんだよね。
見られちゃうじゃん! 俺の大事な愛妻の水着姿!!! あぁぁーーーー! どうする? 今更止めにするって言えないしなぁ。
暫く悩んだ結果、俺が導き出した答えは、『専用のプールを作る!』という事だった。
早速、4人には、3日だけ待って貰う様に予定を延期して貰い、放牧エリアの隣に新たな敷地を開拓して整地し、城壁で囲んで、プールやスライダーの施設を作成し始めた。
自分の家族の分と思うと、ついつい熱が入り、細部に凝り始め、流れるプールだけでなく、砂浜まで再現して波のあるプールも作ってみたりした。
椰子の木やなんかも植樹して、なかなか良い感じのプールリゾート施設が完成したのは、3日目の夜中の3時であった。
「ふぅ~、何とか形になったな。 フフフ、これでアケミさんの水着姿は、俺だけの物だな。」
疲れはピークに達して居たが、ヤリ切った満足感に浸りつつ、アケミさんの待つ部屋へと戻ったのであった。
翌朝、ベッドで爆睡していると、サチちゃんがフライング・ボディー・アタックをかまして来て、目が覚めた。
「ケンジ兄ちゃーん、何時まで寝てるのぉ~? もう朝だよー。 早く起きようよ!」
「ぅっ!?」
「あ、サチちゃんか、おはよう。」
「おはようじゃないよ? もう朝だよ? 朝の7時半だよ? プールの朝だよ?」
「ハハハ、ゴメンゴメン。 ちょっと寝坊しちゃったね?」
俺は急いでベッドから這い出し、着替えを済ませて、プールの準備を始めた。
よくよく考えると、俺の水着が無い事に気付き、慌ててスタッフに適当な物を持って来て貰ったり、軽くドタバタしたが、何とか30分で準備完了。
「お待たせ! じゃあ、プール行こうか。」
「「「「はい!」」」」
ニコニコ顔の4人が声を揃えていたのであった。
「さ、ここだよー!」
ゲートでプライベート・プールへとやって来た俺は、プールをバックに両手を広げながらドヤ顔で紹介する。
「え!? 3日延期したのって、まさか、これを作ってたんですか!」
と驚きの声を上げるアケミさん。
「そだよぉ~。 だってプールってさ、色んな人が居るじゃん。 そうするとさ、俺のアケミさんの水着姿を他の人も見る訳じゃん! だから、プライベート・プールを作ってみました。」
「もぉ~、あなたったらぁ~。 ウフフ。 ありがとうございます!」
とアケミさんも嬉しそうであった。
「すっごーーい、こっちのプール、波があって海みたーーい。」
「ホントだー、サチ姉ちゃん、砂浜まであるよー!」
「おいおい、あんまりはしゃいで走ると、転ぶぞー!」
リックが注意した傍から、サチちゃんが砂浜で転けて砂まみれになって、爆笑していた。
「凄いです、あなた。 こんな砂浜、どうやったんです?」
「ああ、それね? その砂は、海岸線の人の居ない所から頂いて来た。 ちょっとそこら辺の地形が変わってしまったけど、大丈夫。 多分」
まあ、その砂の所為で、少しこの波のあるプールは、塩水になっている訳なんだがな。
逆に海っぽさが増して、結果オーライと思う。
ちなみに、この波のあるプールの砂浜だが、深さ4m分の砂がある。
砂浜と言えば、ほら、人を埋めたりするじゃん? まあ大抵は横になって上に砂を掛けるわけだけど、縦に埋められても良い様に、念には念を入れた訳です。
で、待望のアケミさんの水着姿だが………最高でした。
思わずね、見惚れてしまって目が離せなかった。 黒髪に合わせた黒のビギニなんだけど、キュッと締まったウエストや長い手足、アップにしたうなじが堪らなく魅力的です。
ポーッと暫く眺めていると、
「もう、あなたったら、そんなに見つめないでください! は、恥ずかしいじゃないですか!」
「あ、ご、ゴメン。 スッゴく綺麗だよ! あ、ああ、後で日焼け防止の、お、オイル塗ってあげるから。 あ、いや、今塗っとかないとか!」
思わずドギマギして声が上ずってしまった。
備え付けの大きなビーチパラソル代わりの屋根の下で、アケミさんの背中や彼方此方に、日焼け防止のオイルを塗り塗りしながら堪能していると、何故かその後ろにサチちゃんやエリックが並んでいたのだった。
「エリック、良い?? こう言う時は、ちゃんと並んで順番を守らないといけないんだよ?」
「はい、サチ姉ちゃん。」
その後方ではリックが苦笑していたのだった。
波のあるプールで一頻り波に揉まれた後、ウォータースライダーの各コースを制覇したら、丁度昼時である。
海と言えば、何となく、焼きそばとかだよね? 態々再現した海の家で、トウモロコシや焼きそばを作ってあげて、みんなで食べた。
こう言う所で食べる焼きそばって、格別に美味しく感じるんだよね。
「しかしさ、今年の夏は、本当に暑いよね。 既に9月なのに、まだ暑いし。 こんな事ってたまにあったりするの?」
「うーん、私の記憶では、無かった様な気がしますね。 まあ、マーラックとここでは場所も違うから判らないですけど、でも今年は異常な気がします。」
「あぁ、やっぱりか。 何事も無ければ良いんだけどねぇ。」
そんな会話をしながら、昼食を終え、食後は魔物素材で新開発した浮き袋に乗って、プカプカと流れるプールをアケミさんと一緒に流れていた。
午後の4時ぐらいになると、プールを終えて、横に併設したログハウスでシャワーを浴びて、着替えて夕食の準備を始める。
夕食は勿論定番のBBQだ。
沈む夕日を眺めながらのBBQは、リゾート気分を盛り上げてくれたのであった。
流石に元気な子供らも、1日中プールではしゃぎ廻ったお陰で、夕食を食べ終わる頃には、疲れ果てたのか、コクリコクリと船を漕ぎ始めていた。
3人にクリーンを掛けてやり、ログハウスの部屋へと案内し、寝かせた。
さぁ、ここからは、アケミさんと2人……大人の時間である。
2人並んでソファーに座り、星空を眺めながら、マッタリとコーヒーを飲む。
「今日は、ありがとうございました。 私も子供らも、楽しかったです!」
「フフフ、喜んで貰えたなら、良かったよ。 作った甲斐があるという物さ。」
そして、俺達は、2人の部屋へと消えたのであった。
その日の夜は、最高だったとだけ言っておこう。
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