第266話 期待の第6階層

1週間が経ち、各国からの親善大使?や王族も集まり、ワイワイと賑やかになって来た。

式典の時間に合わせ、ドワースからも、マックスさんやガバスさん、ジェイドさんを含む、ドワースの住民達が大勢駆けつけてくれている。


そして、いよいよ時間となった。 アナウンスと共に式典が始まる。


本来なら、こう言う場面ではBGMを流したい所なんだけど、無い物をグチグチ言ってもしょうが無い。

俺に音楽の才能は無いからなぁ。 残念だな。 せめてファンファーレぐらい鳴らしたいよなぁ。


アナウンスは、ドリーム・シティの紹介や説明、入場上のルールや法律等を軽く説明し、最後にやはりと云う感じで、俺のスピーチの時間となってしまった。

フフフ、俺は出来る子なのだよ! ちゃんと既に想定済みで、この1週間色々と考え抜き、毎日暗唱していたのだよ。


という事で、まずは、ご来賓の皆様や、ご来場の皆様にお礼を言いつつ、簡素に纏め暗記した文章を暗唱して、最後に「さあ、夢の街の始まりです!」で締め括った。

今回のスピーチは成功したらしく、会場を割れんばかりの拍手と歓声が包み込み、花火魔法と共にオープンしたのだった。




来賓の皆さんを引き連れ、1日掛かりで各地を案内し、夜はドリーム・シティに新たに作ったダミーの城で立食パーティーでを開き、魔王国と魔王さん達を各国へ紹介したのであった。


「朝も軽くご紹介しましたが、こちらは魔王国の魔王さんと奥方様です。 うちとは前から仲良くしている友好国なので、皆さんも宜しくお願い致しますね。」


「おぅ! 初めましてだな。 魔王国の王をやってる。 まあ、ケンちゃん所とはマブダチだからな! ガハハハハ。 以降、うちとも仲良くしてくれると嬉しい。 宜しくな!」

と何時もの調子で語りかけていた。 うーん、こんな場で、その口調は大丈夫なのか? と少し思ったのだが、やはりダメだったらしい。

横で、奥方様の顔が絶妙に引き攣っていたけど、後の事は知らん。 魔王さんに幸あれ!


それまで歴史上から存在すら消えていた魔王国の存在に、各国から代表して来ている人々は驚いて居た。


魔王さんの人柄か、奥方様の美しい存在感?からか、直ぐに打ち解け、パーティーは終始和やかなムードだったのでホッとしたのであった。

しかし、その夜魔王さんの部屋から、悲鳴やすすり泣く声が聞こえたとか聞こえないとか……。



翌日からは完全にフリーにして、好きに廻って貰う事にしてあるので、俺は晴れてお役御免である。


イヤッホォー! 俺は自由だーーー!



そして、翌日の朝、俺は3名を前に宣言する。


「皆様、お待たせしました。 ダンジョンアタックを再開します! ワーー ドンドンドン パフパフパフ♪(口で)」


ポカンとするコルトガさん、コナンさん、サスケさん。


思わずちょっと浮かれすぎたな……と顔を赤くしつつ、準備を整え、第6階層へとゲートで移動したのであった。

今回は、エバだけでなく、ピョン吉、黒助、コロも同行している。

ジジも本当は来たがっていたのだが、まだ甘えん坊の子供らの相手で忙しいらしい。

モモは、一気に成長し、35cmを超えるぐらいのサイズまでになったが、如何せんハンター・モモンガなので、余り強く無い。

ジジが子供らを連れてレベリングに行くらしいので、その際に一緒に連れて行って貰う予定になっている。


さてダンジョンの話に戻るが、第5階層までは洞窟エリアで、徐々にトラップ等が増えた事で難易度は上がったものの、ダンジョンの狭い通路と云う状況になれてしまえば、取り立てて難しい事は無かった。

最初こそ、モンスターハウスからのゴブリン軍団に苦戦していたコナンさんだったが、今ではウホウホと呟きながら、魔法を使ったり、ナイフに氷を付与して延長した刃でザクザク斬り伏せている。

本当に、器用で身軽なデブだよ。 いや、悪口ではなく、良い意味でね!


そうそう、肝心な事を忘れてた。 宝箱からの出て来る『お宝』の事だけど、認識阻害のマスク、幸せを呼ぶ指輪、透けるとんペンダントと出て来た中、幸せを呼ぶ指輪は俺が着用する事で落ち着き、上がった幸運値を使って出て来る宝箱を開けた結果、色々と出て来た。

『毒攻撃無効の指輪』、『俊敏増幅ブーツ』、『防火マシマシマント』、『空歩ブーツ』、『魅惑のメロメロマスク』、『魔法増幅ブレスレット』等や『スキルブック』も出て来た。

しかし、中には魅惑のマスクの様に実に微妙な物が含まれている。

ちなみに、魅惑のメロメロマスクの効能は 赤いラメ入りの目元だけを隠す怪しげなマスクで、それを付けて異性を見つめると、相手を魅惑してしまい、メロメロにしちゃう物なんだそうで。

『意中のあの子に!』というキャッチフレーズが書かれていた。 いやいや、それ場合によっては犯罪だから!! と思わず突っ込んでしまった。

他にも似た様な物があって、『魅力マシマシ・ブラ&ショーツ』ってのがあって、『これであの人も私の虜!』というキャッチフレーズを読んで愕然としたよ。


「これ、錬金神ドワルフ様はどんな気持ちで作ったんだろうな……」

と思わず呟いてしまった。


スキルブックは3冊程出たんだけど、どうやらこれを読むと、スキルが生えるらしい。

出て来たスキルブックは、『鑑定』、『暗視』、『並列思考』という物であった。

まだ階層が浅い所為か、正直な所、割と微妙なラインナップである。

暗視スキルはサスケさんが使うかな?と聞いてみたら、既に持って居るらしい。


もっと役立つスキル……それこそ『マッピング』とか出してくれればな。



まあ、そう言う事で、今日から心機一転、第6階層のスタートである。


この階層はジャングルになっていた。

亜熱帯性雨林って言うんだっけ? なんか、光学迷彩を施した宇宙人のハンターとかがやって来そうなジャングルである。


もう、第5階層まではゴブリン尽くしだったので、いい加減飽き飽きだ。

さあ、どんな魔物が出て来るんだろうか? 実にワクワクである。


ピョン吉達が森の賢者様に良いところを見せようと張り切っている。


ジャングルを進み始めて5分ぐらいすると、早速魔物の反応をキャッチした。


「来るぞ!」

全員に注意を促し、反応のある辺りに目を向けるのであるが、魔物が発見出来ない。


シュッ シュシュッ


何か小さい物が俺達の方へと高速で飛んで来た。

咄嗟に回避しつつ、刀で俺の方に飛んで来る2発を弾き飛ばした。


どうやら、吹き矢の様である。 先の針には紫色の液体が塗られている。


また続け様に シュシュッシュッ と何発も吹き矢が飛んで来る。


やっと吹き矢の弾道から、魔物の位置を特定出来た。


どうやら、魔物は……… またもやゴブリンである。

しかも、どうやらゴブリンの亜種らしく、通常は緑色の皮膚をしているのだが、こいつらは迷彩色であった。


ゲリラの様な戦い方をする奴らだ。


「種族名は、ゴブリン・レンジャーらしい。

ステータスとしては、通常のゴブリンの1.5倍~2倍くらいある。」

と俺が叫ぶと、全員ウヘェーって顔をしている。


気持ちは判る。みんなもゴブリンばっかり討伐してたから、結構ウンザリなんだよね。

コルトガさんなんか、若干キレ気味だし。


しかし、この階層もゴブリン推しなのだろうか…… いや、それは勘弁して欲しいな。



「コナンよ、焼け!」

とコルトガさんが鬼の形相でコナンさんにお願いした。


「え? ちょ!」

と森で火は拙いよ!と言おうとした時、コナンさんのファイヤーボールが吹き矢の発射元辺りに次々に着弾し、グギャーーと言う悲鳴が辺りに鳴り響いたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る