第252話 我の秘策を見よ!

王宮に到着すると、これまた丁寧な対応でむず痒くなる感じだったが、前回と同じ応接室へと通された。

そこへ何と、王様自らがタイムラグ無くやって来たのだ。


これには健二も普段驚かないコルトガさんも驚いていた。

コナンさんに限っては、然もありなんと言った様子だったが。


「スギタ殿、本当に良く来て下さった。 前回の事、本当に申し訳無く、我々王家の者で済むのであれば、どんな償いでも……。」

と頭を下げて来た。


「判りました。謝罪を受け取りますので、頭を上げて下さい。」


俺がそう言うと、やっとホッとした表情で俺を見つめて来たのであった。

その顔は1ヵ月ちょっと前とは変わり、疲れが溜まっているらしく、かなり窶れていた。


「さあ、じゃあ前向きな話を始めましょうか――――」



クーデリア国王や大臣達を含めた会議はその後3時間程続いた。


当初クーデリア側の要望では、再度4地区にモデルタウンを再開して欲しいとの事だったのだが、俺がそれを拒否した。


「え? お許し頂けたのでは? ……」と固まるクーデリア側へ俺がニヤリと笑いながら


「ダメです。 もうモデルタウンは飽きましたよ。

それは来る人も同じでしょう。 同じ物を作っても全然インパクト無いし、『ああ、また始めたのかぁ?』程度ですよ。

ヤルならもっとドカンと一発ぶち上げないとね。フッフッフ。『我に秘策有り!』ですよ。」


というと、パーッと目に見えて顔が明るくなる。


「じゃあ、何かもっと凄い物を作って頂けるという事ですか!? あ、でも食料等の販売はそちらで出来るのでしょうか?」


「ええ、そこら辺はご安心を。 兎に角、ドカンと行きましょう!!

あ、但しですが、モデルタウンNo.1の跡地に建設します。 他は……幾らスギタ商会と看板を出しても、実質エーリュシオンと同じと人々は考えるでしょうから、他の地域まで当方で抑えちゃうと、それはそれで後々問題になるかと。

なので、取りあえず、1箇所でやってみて、必要があればまた趣向を変えるなりして他の地区も検討するぐらいの感じで行きましょう。」


せっかくなので、夜なべして作った俺の力作――完成予想模型を見せて上げた。


「うぉー! こ、これは!? 何とも?」


あれ? なんか微妙な反応だよね。 何で?


「えっと、ケンジ殿……誠に申し訳無いのであるが、これは? モデルタウンのあった場所にこれ1つだけを建てるという事であろうか?」

と何か凄い期待外れな顔で聞いて来る王様。


「えっと、その予定ですが? 何かご不明な点でも?」


「いや、なんかポツンと1つで、ちょっと意外というか、何でこんな小さい物を1つだけ? というか――」


「ああ、なるほど、つまりこんな小さい物1軒でどこがドカーンか? と言いたい訳ですね? ああ、うん、そうか。スケール感が合って無いのか。」


うーん、どうしよう、どうしたら凄いと判って貰えるかな? ああ、そうだ!


「えっとですね、これ判りにくい様なので、この模型のサイズに人を合わせるとですね――――」


と言いながら、俺が米粒を1つ取り出して建物の横に立て掛けて置いた。


「この米粒1つが大体、大人の男性ぐらいですね。」


「「「「「「えーー!?」」」」」」


一気に驚きの声を揃えるクーデリア側の面々。


「な、なんですか! この巨大な建物は!?」

王様がテンションMaxで叫んでいる。


「フフフ、タワマンですよ。 総合商業施設です。 名付けて、『スギタ・ヒルズ』」

と俺が自信満々に両手を広げて2日間考えた名前を披露する。


「「「「「「………」」」」」」


あれ? ポカンとしてるな? ああもしかして、ヒルズって名称に馴染みないのか?


何か予想と違う反応に納得のいかない健二であった。



健二は更に追い打ちを掛ける様に、ビルをワンフロアー毎にバラして、中身まで精巧に作られた中身の予想模型を見せ、説明して行った。


「す、凄い! バラせるのですか。これ!」


と一部大臣が違う所に注目していたが、スルーして説明を続けたのであった。


結果、クーデリア側は興奮の坩堝。


「いつから着工されますかの?」 と急かす急かす。


「まあ、それなりに準備が必要なんで、ポッと出せるもんじゃないですからね。

しかし、そうは言っても、取りあえず王都の食糧事情や物価事情の改善も急務ですから、取りあえず、先に仮店舗を置きますよ。」


俺の提案に

「こ、これでやっと王都民達がまともな食事に有り付ける様になる……」

と王様が涙を流していたが、大臣が水を刺してきた。


「陛下、それがそのぉ~、多分それだけでは難しいのです。 現在不況の為、失業者が多くなりましてね、食事を買うお金が無い者が多数出ておりますれば、仮店舗で安く販売して頂いても、末端の住民達には購入出来ないかと。」


「まあ、そうでしょうね。 ここに来る道中に見て来ましたけど、完全に王都全体がスラム化の一歩手前でしたもん。

やっぱ、炊き出しと職を提供するしかないですね。 そうなると、一般的に考えられるのは、公共事業ですよねぇ。 道路とか建築とかですが、スギタ・ヒルズは特殊過ぎてここで雇って造る訳にはいかないしなぁ。

ウーーン…… じゃあ、こうしますか? まず炊き出し要員を王都で募集して雇う。 片親で育てている女性をメインで。 子供は託児所を併設するので、そちらで仕事中は預かって、後は……スギタ・ヒルズの周りの工事をお願いするか。」


余り俺の言う単語が理解されて無い感じだったので、詳細に説明してやったら、やっと「なるほど! 勉強になります!」と目を輝かせていた。


というかさ、統治しているんだったら、それ位自分らで思い付けよ!!

根本を何とかしないと、ズッと対処だけし続ける事になるのになぁ。


悪い人じゃないんだろうけど、何だかなぁ…… と思わず残念な者を見る目になってしまう健二であった。


結局なんだかんだで、旧モデルタウンのあった場所4地区とも自由に使って良いというお墨付き貰い、話し合いを終了したのであった。

早速健二達は、託児所の設置と炊き出し所及び仮店舗の開設、炊き出し要員や工事要員の大々的な募集から始める為に、クーデリア側の文官達と手分けして動き出すのであった。

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