第251話 健二の急所
事が終わった後、クーデリア国王から健二宛に1通の親書が届いた。
その親書には、バカな貴族を抑えきれなかった事への謝罪と、王国の危機に対する警告への感謝、そして本来であれば、国が責任を持つべき国民へのこれまでの援助や支援に対する感謝が綴ってあった。
そして、現状の王都の状態や、王都民の窮状を書き連ね、王宮や貴族連中はどうでも良いので、何とか庶民の為に、そして『小さい子供』の為にも取引を再開して貰えないかと書かれていたのであった。
もし可能なら、一度仕切り直して、会談の場を設けられないだろうか? もし可能であれば、自ら何処にでも参上するとまで書いてあったのだ。
「ハァ~……なかなか心に響く、痛い所を突いて来るなぁ。 まあ良いんだけどね? うーん。 何か経済制裁してるみたいで気分も良くないから良いんだけどね?」
とウダウダ呟いていると、
「フフフ、やはり主君は行かれるおつもりなのでありましょ?」
とコルトガさんがニヤリと笑っている。
「まあね。 ここまで謝罪されるとね。 それに結構王都民達に影響出てるらしいし。まあしょうが無いよね。」
なんか、やっと落ち着けると思ったら、これだし。 最近殆どマッタリしてないなぁ。
5日以内にそちらに伺うという内容で返事を書いて、シャドーズの1人に持たせ、王都へとゲートで送ったのであった。
ついでに王都の城壁から4km程離れた森の中に、1軒の小さい小屋を設置し、周囲を塀で囲んだ。
これが、新しい城壁外のゲートポイントとなる、第一号だ。
常設型ゲートを設置し終わった頃、先程のシャドーズの1人から連絡があり、別れたポイントで合流し、この小屋まで連れて来た。
「おお、ここなら目立ちませんね。 これは、我らも利用して宜しいので?」
「うん、一応、各別荘とペアで城壁外にもこの小屋を設置して廻る予定だから。」
「それは我々としてもありがたいですな。 状況に応じて使い分ける事が出来ますので、かなり楽になります。」
と喜んでいた。
あまりにも喜んでくれるので、興が乗った俺は、そのシャドーズを連れ回し、次々と城外ゲートポイント小屋を作って廻ったのであった。
「やっと、全部終わりましたか。」
なんかただ連れ回しただけで、実作業は俺一人でやったのだが、グッタリ疲れ果てた様な顔をしているぞ? 解せんな。
全員に新しいゲートポイント小屋の事を伝達する様に伝え、やっと部屋へと戻って来たのであった。
残り4日でクーデリアの王都での店舗再開のプランを練り、それに必要な人員等を話し合い、大筋を決めて行った。
まあ交渉次第でどう変わるかは不明だけど、取りあえず、今回再開するのは、4地区全部ではなく、1地区の一部だけにする予定である。
有らぬ疑いを持たれるのは本意では無いからな。
一度撤退し、回収した建物を同じ様に再展開するんじゃ面白く無い。
そして、1箇所に集約するのであれば、それなりのインパクトが必要だろうと考えたのである。
この世界に無いインパクトのある物……フフフ、デパートとか面白いよね。やっぱり5階建てぐらいかな。 いや、もっと上を目指すか。
フフフ、レストラン街も作ってって本格的にやると凄い事になるよね。
デパ地下にはお惣菜コーナーか? この場合だと、フードコートにすべきなのか?
あ、でも1階の化粧品売り場だけは匂い最悪だからパスだなぁ。
デパートと言えば、思い出すのは小さい頃お袋に連れられて行ったデパートの屋上のミニ遊園地だな。
俺は、あれと玩具売り場が楽しくて着いて行った様なものだったし。
懐かしいなぁ~。
と一人で頭の中で構想を練ってニマニマしながら、巾着袋の中を物色してしまうのであった。
一人で一頻り構想を練った後、ドワーフの親方の所へ行き、作った設計図を見せて、打ち合わせをした。
「かぁ~、またケンジ様はおもしれぇ物を考えるなぁ! 動作とかは判ったけどよぉ、これっていってぇ、何に使うんでぇ?」
「フフフ、それはね……ゴニュゴニョゴニョ」
「マジか! そんな物!? うぉーーー! おもしれぇよ! 全力でヤル!!」
説明したら親方がヤル気を滾らせ、走り去って行った。
グフフ、これが完成したら、この世界が変わるぞ! いや、ちょっと調子に乗り過ぎたかな。 でも話題になる事は間違い無いな。
◇◇◇◇
そして、バタバタと4日が過ぎ、1日前に前乗りする事にして、マダラとB0の曳く馬車にのり、クーデリアの王都へとやって来た。
城門に辿り着くと、衛兵のお兄さんが敬礼して俺達を出迎えてくれた。
更に、「あのぉ、次回からは順番待ちをせずとも、あちら側の貴族門を使って頂ければと。」と申し訳無さそうに教えてくれたのであった。
「ああ、なるほどなぁ~、 そう言えばそう言うシステムがあるって言ってたな。 スッカリ忘れてたよ。 ありがとうございます。」
とお礼を言うと大変恐縮された。
「あ、宮殿の方には直ぐに連絡を入れて置きますので、このまま真っ直ぐ向かって頂いて結構です。 何卒宜しくお願い致します。」
と頭を下げて見送られたのであった。
「何か気の毒になる程、前回と対応が違うね。」
と俺が漏らすと、コルトガさんは、ウンウンと頷きながら「これが普通なのですぞ?」と誇らし気であった。
街の中だが、本当に驚く程に活気が無い。
心なしか、痩せている人が多い気もする。
一番活気のある筈のここがこれなら、もしかして孤児院も悲惨な事になってないか?
サスケさんにお願いして、先に孤児院に救援物資を運んで貰う事にした。
「ハッ! 拙者にお任せあれ。」
とサスケさんが馬車から飛び降りて、路地へと消えて行った。
「なんかさ、気の所為か、王都全体がスラム化してない?」
と俺が聞いてみると、アケミさんが、
「ああ、何かドヨンとしていると思ったら、それですね。 スラムの空気感と同じ雰囲気なんだ。」
と納得していた。
前回建国宣言の時は、既に帰りたいと思ってしまう程に嫌々だったのだが、今回は至って何の感情も無い。
ここ最近の諸々のお陰か、精神的に慣れたのかは不明だが、今回は全く胃が痛いという事も無く、平穏な気持ちで近付く王城を見ていた。
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