第227話 鬼退治の準備
ちょっと別荘でゴタゴタしたりしてたので、ここ2日程は別荘に籠もりっきりで過ごしていた。
尤も、コナンさんはちょいちょい俺からお小遣いをせびって街へ出掛けてたけどね。
で、ですよ、サスケさんとサスケさんが連れて来た5人衆とシャドーズの面々は、本当に優秀だった。
何と、この2日間で完全にこの王都のスラムを調べ上げつつ、散り散りに隠れていた家族達を全員連れて来たのだった。
「いや、マジで凄いよね? 流石というか、もう流石のため息というか。」
と全員の労を労っていると、片膝を着きながら少し上気した顔で見上げ、
「主君、過分なるお褒めの言葉、全員より一層粉骨砕身する所存でござる。」
と興奮を抑える様に宣言していた。
そして、サスケさんが続けて報告をして来た。
「実は主君に追加でご報告すべき事が……」
サスケさんの報告はスラムに関する物で、今回の家族の捜索中にこの家族以外にも泥を啜る様に隠れ生きて居る多くの被害者を発見してしまったらしいのだ。
その数、取りあえず87名。 他にも孤児が47名が居たらしい。
つまり、ザックリ135名居るそうで。
「なるほど。つまり宿舎をもう1棟増やせば収容は可能という事か。」
「ハッ! 如何様に致しましょうか?」
如何様にも何も、そんな期待する様なキラキラした目で見つめられたら――――
「わ、判ったよ。 じゃあみんなここに連れて来てくれる?」
「「「「「「「「「「「「「ハッ! 直ちに!」」」」」」」」」」」」」
まったくもう~。最初から応えありきの質問じゃねぇかよ! まあ、嫌じゃないけどね。
判っては居たが、スラムに居た135名で済む話ではなく、その135名の内、家族が奴隷墜ちしていたのが、42人程居てね。
その内、34名は生存が確認されて、奴隷商から救い出す事が出来たのだった。
残り8名は残念ながら亡くなっていたり、何処かに購入されてしまって行方が判らなかったりという状況だった。
そして、今この別荘には、俺達やシャドーズを除くと合計で207名、世帯数で言うと69世帯である。
ハハハ、増えたねぇ~。
ただ救いなのは、家族と再会して、涙を流しながら喜ぶ彼らの姿や、美味しそうに満面の笑みで食事をする孤児達の姿が見られた事である。
新しくここに来た人達も全員治療済みであるが、さてどうした物かね。
結局コナンさんの提案で、ここで奴らに怯えながら暮らすより、一旦拠点に退避して貰い、ノビノビ安全に暮らして貰い、英気を養って貰う事にした。
一応ここの脅威が去ったら、また戻すなり、拠点に正式に永住するなりを考えて貰うつもりである。
◇◇◇◇
あれから、3日が過ぎた。
全員取りあえず拠点に送り込んでしまったので、何か振り出しに戻った様な状態である。
一応、シャドーズ10名と、5人衆は残ってくれている。
さて、脅威を取り去る方法だが、コナンさんの作戦というか、提案は実にシンプルであった。
叩き潰すにしても、取りあえず奴から手を出させる方が後々正当性を主張し易いだろうから、態と餌を撒いて食い付かせろ! と。
そして、上手く戦闘又は決闘という状況を作り出せというシンプルな物である。
「な、なるほど。 で、決闘というか戦闘は誰がするの? その流れだと俺? ……だよね?」
ふむーー、俺で勝てるのか? いや、みんなそんなキラキラした目で見ないでくれないか? 既に嫌な汗で脇がビッショリだからね? おっと、クリーン! クリーン!!っと。
国内最強と言われる奴の実力が判らないと、実に不安だ。
その不安を払拭するかの様に、ここ数日毎朝コルトガさんやサスケさんと剣の打ち合いをしているのだが、
「ガッハッハ! 流石は主君! 良いですぞ! 良いですぞ!」
と頻りと褒めてくれるコルトガさんの言葉を何処まで真に受けて良いのか判断に悩む次第。
更に夜は夜で、サスケさんと新規の5人衆を連れて夜中の魔絶の崖でのレベリングを連夜行った。
5人衆は当初場所と出て来る魔物達を見て絶句していたが、レベルが上がるにつれて、慣れたらしく、嬉々として自分らで狩るまでに至った。
これで、ある程度は彼らの安全も確保出来たであろう。
それと平行して、取りあえず面の割れて無いシャドーズの10名で砂糖等の取引を開始した。
やっと準備が揃ったので、ホッとした瞬間に思い出し、慌てて油問屋のヨタローさんの店へと足をむけたのだった。
「やあ、やっと来てくれましたか! お待ち申し上げておりました。」
と満面の笑みで迎えてくれたヨタローさん。
「どうも、色々とバタバタしてて来るのが遅くなりました。」
と頭を下げつつ、近況の話から世間話、そして話はひまわり油へと移行していく。
「そうなのですよ、ひまわり油は収穫量に問題がありましてね。 花自身は順調に育つのですが、収穫時期にかなり厄介なのが寄って来ますので、収穫量の問題がありまして。」
とヨタローさん。
「そうらしいですね。 こちらで買わせて購入した分で味見して、レシピとの相性を見てみて良かったら、当方の拠点でも栽培しようかと考えてまして。」
と俺が言うと、ヨタローさんが食い付いて来た。
「ほほぉー、ケンジ様の所では、農地もあるのですね? なるほどぉ。 そう考えられているという事は、空から寄って来る魔物対策はバッチリという事でしょうか?」
「ええ、それは勿論です。 なので本格的に栽培を始めれば、多分余剰分が出来るので、その際には是非とも卸させて頂ければと。」
「おお!それは素晴らしい。 是非とも宜しくお願い致します。」
そして、いよいよ本題である。
それとなく勇者の末裔に関するネタを聞いて見た。
「そう言えば、余所で聞いたのですが、何でもこちらのイメルダ王国には300年前の勇者の末裔がいらっしゃるとか?」
すると、見る見る顔色が曇り、ゲッソリした表情に変わって、ポツリポツリと語り出した。
「ええ、まあ、居るのは居るんですがね。
……ケンジ様はなるべく避ける事をお薦め致します。 ハァ~…… とにかく傍若無人で、王家でもホトホト困り果てている様なのです。
この王都で彼の方とそのシンセン組の方達の所業で泣いた者や亡くなった者は多いのです。
うちの商会も、直接取引があるので、戦々恐々の日々でございます。 ハァ……」
とやたらため息交じりに語って居た。
どうやら、奴は食に『も』五月蠅いらしい。
ふむ、なるほど。 そこら辺を突いて藪から引き摺(釣)り出すかな!?
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