第201話 謎が謎呼ぶ大事件!?
それから、一日おきにレッド・オーガ、コボルト、リザードマン、デス・アント、ワイルド・エイプ等の集落を一掃して廻った。
中でもダーク・デス・ハンター・ウルフの群を発見した時には思わず興奮してしまった。
最近、巾着袋(マジック・ポーチ)を作りすぎて、ダーク系の素材が尽き掛けてたから、実に嬉しい。
あ、そう言えば、ダーク・スライムもそろそろ在庫が切れる頃合いだなと思いだし、慌ててステファン君に誰かに狩って来て貰う様にお願いしたのだった。
250名の秘密防衛軍からは、50名ずつの中隊に別れて、交代で参戦して貰った。
全員強いのだが、ただリザードマンとデス・アント戦だけは別格で、かなり冷や汗を流す結果となった。
初めて負傷者を出し、更に剣や刀を折ってしまう者が続出した。
これは武器そのものの性能よりというも、魔刃(刃先に魔力を纏わせる技法)が不十分な者達が居て、その所為で刃を折ってしまい、反撃に遭ったのが原因であった。
彼らは直ぐにポーションで全快したのだが、本人達は、血の涙を流して自分の未熟さを嘆いていた。
まあ、結果として、討伐自体は成功し、彼らもより一層修練に精を出す結果となったので、ドンマイである。
そして12日目、とうとう大森林を抜けて、ゴツゴツとした岩肌の山の麓へと辿り着いたのだった。
「こうやって、間近で見上げると、かなり迫力あがあるな。」
「ええ、100年以上噴火してないという事ですが、結構彼方此方から煙りというか何か色々吐き出している物なんですね。 ちょっと生き物みたいで怖いですね。」
とアケミさんもその異様な火山の雰囲気にゴクリと唾を飲み込みながら呟いている。
この火山、寝そべって口を尖らせた様な形をしていて、かなり急な勾配となっているのである。
アニメはイラストで出て来る蛸の口と言った方が判り易いかな?
少なくとも俺は地球に居る時にこんな山見た事も無いな。
全員がポカンと口を開けて上を山頂の火口辺りを見上げていると、油断しているのを良い事に、ロック・リザードが近付いて来た。
バカめ、俺が気付いてないとでも? フッフッフ。 これまでの俺とは違うのだよ! もう、油断はしないぞ。
と俺が動作に入る前に、コルトガさんがザックリ行っていた。
「チッ先を越されたな。流石だよ。」
「フッフッフ、主君もお人が悪い。 某がどう対応するか、見ていたのでしょ? フッフッフ。このコルトガまだまだ耄碌はしておりません故に。」
と何か良い感じに解釈してくれていた。
「例の卵の腐った様な匂いとか感じたら早めに教えてね。」
俺達はグルリと大森林と山の境界線を広範囲に探索しながら、湯煙を探して廻る事にした。
一応有毒ガスが出る事もあるから、全員にシールドを施して、人体に有害なガスは排除する様なフィルターを中で発動している。
ほら、完全に密封しちゃうと、硫黄の匂いとか嗅ぎ取れないからね。ちゃんと外気の匂いを判別出来る様にと工夫してみたのだ。
そして放浪する事、3日間、やっと念願の源泉を発見したのだった。
「うぉーーー! 夢にまで見た温泉の源泉だーー! ヒャッホー!」
「おお! 温泉卵なんだな! だな!! 約束なんだな! 約束なんだな!!」
どうやら大事な事らしく、2回念を押された。
「コナンさん、判ってるって。俺も楽しみにしてたんだからさ。
竹で編んだ籠に人数分のウーコッコーの卵を置いた。
「さあ、これを温泉に入れて……おっと待った! 穴を開けてなかったよ。」
お湯に漬ける寸前に気付いて慌てて竹籠を引き上げ、卵のお尻に針で穴を開ける。
そして、お湯へ――
「ねぇ、ケンジ兄ちゃん、何で卵の殻に穴を開けたの?」
とリックが聞いて来た。
うん、確かにウーコッコーの卵の殻は固いから穴開けるのに苦労してたもんね。 つまりあんな苦労してまで穴を開ける意味だよな。
「フフフ、良い質問だね。何でもそうだけど、空気でも水でも鉄でもジャガイモでも、何でも温めると少し膨張するんだよ。卵も同じだけど、殻が封じ込めようとするから、最後には爆発したりするんだよ。 ああ、爆発って言っても本当の意味での爆発じゃないよ? 殻が割れて中身が出ちゃう事を指してるだけで、そんなビビる程の大爆発は無いからね。」
と俺の説明途中で、ビビって岩の影に退避したコナンさんとコルトガさんに突っ込むと、頭を掻きながら出て来たのだった。
7分ぐらいで良いかな? 最初からお湯だし、7分で良いよな? 通常の水からの場合、ウーコッコーの卵は大きいから12分ぐらいじゃないと半熟でなく、黄身まで固まってしまうのである。
半熟のゆで卵は意外にこの加減が難しい。
熱々の1つを引き上げた籠から取り出し、慎重に上部の殻を割って取り除くと、絶妙の加減であった。
「おお、良い感じだぞ。 ほら、熱いから気を付けて食べな。」
と言って、殻を取った最初の1個をスプーンと一緒にサチちゃんにあげる。
「ケンジ兄ちゃん、ありあとーー!」
とニッコリ微笑む我が家の天使。
リックも苦戦していたので、殻を剥いてやり、渡してあげた。
アケミさんも同様に剥いてやると、デレッとしながら、「ありがとうございましゅ」と照れていた。
「おいちーーー!」
先に食べ始めたサチちゃんが絶叫している。イカン早く食べないと熱が廻ってしまって半熟でなくなってしまう。
冷やして粗熱を取るという手もあるんだけど、俺は熱々トロトロが食いたいのである。
慌てて剥いていると、
<主ーー、俺らは殻要らなーーい。>
とピョン吉達が暗に催促をして来た。
ああ、そうだったね、君ら殻を剥けないもんねぇ。
わーったよ! 剥いてやれば良いんだろ? しょうが無い。
俺は身体加速を使って、ピョン吉達の分、3つの殻を剥いてやり、皿にだしてやった。
さあ、やっと俺の分だ!
と籠から取ろうとしたら、
「あれれ? おかしいな。人数分入れた筈なのに、オレノタマゴガナイゾ」
おかしい! 犯人はこの中に居る!
まあ、爺様の名前には掛けられないが、俺の視線が捕らえたのは、バクバク食べながら時折恍惚の表情を浮かべるコナンさんである。
良く見ると、足下には、1個分の空になった殻が落ちて居るし。
クックック、俺の卵を取るとは良い度胸じゃねーか!
俺の怒りに満ちた視線に気付いたコナンさんがソッと静かに足下の殻を隠そうとしているが、もう遅いのだよ。
フッ、捕まる側に廻るとは皮肉な物だな。
他のみんなは既に美味い美味いと恍惚状態に入っているので、この大事件に気付いていない。
「ご、ごめんなんだな! だな! お、お、美味しかったんだな! だな!!」
と焦りながら謝るコナンさん。 その口元には卵の黄身がキラリと光っている。
「まあ、自白したから良いか……。許してあげるよ。」
と俺が言うと、ホッとした表情になるコナンさん。
しょうが無いので、もう1個卵を取り出して、籠に入れ、7分温泉に漬け、やっと味わう事が出来たのだった。
待望の半熟の温泉卵をスプーンで掬い、口に入れると、「うぉーー! マジで美味い!」と思わず絶叫。
先程の大事件を全部根こそぎ忘れてしまう程の美味さである。
2口目に入る前に醤油を2滴落とし、また一口。
「かぁーーー、堪らん。やっぱり半熟卵には醤油だよなぁ。」
兎に角美味い。 俺も何時しか恍惚の表情で温泉卵を堪能するのであった。
「暫く動けないかも。」
「そうだね。ウーコッコーの温泉卵って結構お腹一杯になるね。」
「サチ、少しおねむでしゅ。」
「しかし、コナンよ、お主よくこんなサイズのゆで卵を2つも食したのぉ。凄いもんじゃ。」
と感心するコルトガさん。
「確かに、これ2個はキツいよねぇ。普通は。」
と俺も同意した。折角レベル上げをしたが、コナンさんの体型に変化は無い。その理由はやはり食べる量である事がハッキリとしたのであった。
いや、寧ろ以前より食べる量が増えている気さえする。
しかし、不思議にコナンさんの身のこなしは素早いのだ。 動けるデブなのである。 まあ微笑ましいのだけどな。
当初の目的であった温泉も発見し、温泉卵で満足したので、今日はここまでにして拠点に戻る事にしたのだった。
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