第185話 魔王降臨!

やっと先程の衛兵のお兄さんが戻って来て、俺達を先導し街を案内してくれた。


「おーー! これが魔族の街か! なかなかに洒落てるじゃん。」


割と凸凹の無い石畳でメインストリートが通りが作られていて、道幅も広い。

通りに面した建物も、統一感があって、まるでエーゲ海にある島の真っ白に統一された街並みを思い出す感じだ。

そして、何よりも凄いと思ったのは、俺の拠点同様に、道にはゴミが落ちて居ないのである。


「良く見ると、ゴミが落ちて無いね。素晴らしい!!」

と俺が褒めると、


「え? そうか? これが普通だと思うんだけど?」

と道案内してくれている衛兵のお兄さんが、何当たり前の事を?って感じで返して来た。


通りには、多くの魔族の人が居るのだが、みんな共通する事は、美男美女揃いで、肌は小麦色。

耳に特徴があり、エルフ程ではないが、やや尖っている。


女性は割と露出が多い服を着ていて、俺には刺激が強すぎる。

所謂ヘソ出しルックとか言う奴で、スカートの丈が短いミニスカートやホットパンツを履いているのである。

プロポーションが良く、上着も何やら谷間を強調する様なデザインで、目に毒なのである。


そして男性の服だが、これがまた普通というか、割と前世の日本でも通用する様な普通なデザインである。

こっちの世界特有のヒラヒラが付いて無い。 いやそれだけで素晴らしい。


「ああ、俺ここの服買って帰りたいなぁ。 やっぱり、こう言うデザインが良いよ。違和感無いし。」


「おお!気に入ったのか? ハハハ。 是非沢山買ってくれ!」

と衛兵のお兄さんが笑って居た。


「あ!! 買うで思い出したけど、お金って、ここでも共通なのかな?」


「あ! そう言われてみるとそうですね。」


という事で、衛兵のお兄さんに持っている硬貨を全種類見て貰った。


「これが俺達の持って居るマルカって言うお金なんですが、これ使えます?」と。


「おお! 使えるぞ? しかしやけに綺麗な硬貨だな。 俺達の硬貨って長年使ってるから、大分すり減ってしまってるのかも知れないな。」


通りには、屋台も出ていて、案の定ピョン吉達が屋台の前に俺を連れて行く。


<主ーー! これ!!>と。


えーっと、何人だ?


「おじさん、この肉串10本お願い!」


「え? 人族か! そっちはポチャっとしてるが、エルフ!? マジか!」

と驚いて居る魔族のおっちゃん。


おっちゃんの声に反応した他の住民達も、ザワザワしている。


「おっちゃん! 10本ね!」

と俺が再度注文すると、


「お? おお! 10本な。 小銀貨2枚だ!」


「わぁ、物価安っ! えーー? 小銀貨2枚で良いのか! 他だと大体小銀貨3枚ぐらいするんだけどなぁ。」

と俺が喜びながら小銀貨2枚渡すと、その硬貨の綺麗さに驚いていた。


そして、手にした肉串を全員に1本ずつ手渡し、衛兵のお兄さんにも1本渡すと、お兄さんが驚いて居た。

勤務中だからと受け取らないお兄さんに無理を言って渡し、全員で美味しく頂いたのだった。


流石はピョン吉大先生ご推薦の屋台だけあって、味に間違いは無い。


「うまっ! おっちゃん、これ良い味してるねぇ。わぁ、これはお土産に買いたいなぁ。

また後で大量に買いに来るね!」

というと、

「おう、うちの肉串は下味に手間掛かってっからな。美味いんだよ。 またのご来店、楽しみにしとくよ。」

と喜んでいた。



そんな事を5回程繰り返していると、衛兵のお兄さんから、


「な、なあ、お楽しみのところを申し訳ないのだが、王様もお待ちなので、先に王宮に来てくれないか?」

と申し訳無さそうに諭されたのだった。


「あ、そうか。すみません。ツイツイいつもの癖で。」

と謝り、王宮へと急ぐのであった。



王宮へ到着すると、衛兵のお兄さんに代わって宮殿の近衛騎士が俺達を案内してくれた。

平然と観光気分気分でキョロキョロして居たが、よくよく考えると、自分の所の城以外では初宮殿である。

他は知らないのだが、ここ魔族の王宮はなかなかに歴史を感じさせる西洋風?な宮殿である。

我が家の城は石造りは石造りなのだが、内部が割と落ち着く様な壁になっていて、寒々しさが無いのである。

だから、ある意味この城の造りは無骨に感じてしまうのだ。


建物自体が石造りで、廊下には赤い絨毯が敷き詰められていて、一定間隔で何やら高そうな壺や絵画等の装飾品が飾られている。


「なるほどなぁ、こう言う感じで飾るのが正しい城の廊下なんだね?」

と呟くと、


「ああ、そうか。そう言えばケンジさんのお城って装飾品って殆ど無いですよね?」

とアケミさんも気付いた様で色々な所をフンフンなるほどと見ていた。


時々メイドや執事とすれ違うのだが、その仕草というか姿勢や仕草が素晴らしく綺麗である。


「うわぁ~、何か全てスタッフがプロ中のプロって感じで、絵になるね。」

と俺が感心していると、全員俺の言わんとする意味を理解し、苦笑いしていた。

俺の拠点って、良い意味でフレンドリーというか、まあ俺がそう言う風にお願いしているんだけど、ざっくばらんというか、そんな感じなんだよね。

だって、長く住む所がギスギスというかガチガチだと、肩が凝るよね?


長い廊下を何回か曲がり、階段を登り、また廊下を歩きグルグルと15分程彷徨い、やっと目的地に着いたらしい。


部屋の前の扉の横には騎士が2名両脇を固めている。

案内の騎士が合図すると、扉が開かれ、謁見の間の様な場所へと通されたのだった。



「おぉーーーー」


その余りにも豪華な造りに俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまった。


天井は高く、10mはあろうかという大広間で、床には赤い絨毯が敷き詰められ、一定間隔で採光用の窓が高い場所にあり、天井には壁絵って言うのかな?

金泊をで縁取られた天井の随所には絵が描かれていて、大きなシャンデリアが5箇所に吊られている。

昼間だが、シャンデリアと外からの光りで、キラキラと輝いていて、正に豪華絢爛。


「これは、素晴らしい。」

と俺が呟くと、案内してくれた騎士のおじさんが後ろを振り向き、

「王の御前である。私語は慎んで頂きたい。」

と静かに注意されてしまったのだった。


玉座の前までの通路を進み、中央付近で立ち止まると、騎士がガッと跪き、

「魔王様、外界からの旅人らを連れて参りました。」

と報告をした。


俺はその騎士の動作にポカンとその様子を見ていたが、あっ、これは追従した方が良いの? と思ってコルトガさんやコナンさんの方を確認すると、俺の視線の意図を汲んだコルトガさんが静かに首を横に振った。

ふむ、このままで良いのか。


しかしだ、そんな事よりもさっきから目の前に居る魔王様?の風貌に視線が外せない状況なのである。

魔族の王様は他の魔族同様に金髪系かと思いきや、何と意表を突いたピンク色!!!! しかも、天然パーマなのか、アフロっている。

もうそのピンク色の鳥の巣の様な頭から目が外せず、ブホッと吹いてしまいそうなのを必死で我慢している状態なのである。

顔、うん顔を美形よりという精悍な顔つきで如何にも強そうなオーラはあるんだけど、髪の毛がねぇ。

昔見たドリ○のコントで有名な雷様ですよ。 だ、大丈夫! 今必死で腿を抓っているから。




そうやって必死で耐えて居ると、魔王様が渋い声で

「その方がケンジという旅の者らか。 苦しゅうない、面を上げよ。」

と。


そう言われても、最初から表を向いているので動き様が無いのだけど。




どうすれば良いのか判らず、固まっていたんだが、そこでズイとコルトガさんが一歩前へ出て、


「僭越ながら、某が魔王様へ我が主君をご紹介させて頂きます。

ケンジ様は我らがエーリュシオン王国の王でございまして、魔宮の森を含め周囲を治めておられます。」

とぶちかましてしまった。


何言っちゃってくれるのかな? タラーリとおでこや背中や脇に冷や汗が滲み出てくる。



慌てて、その奥に居るコナンさんや反対側に居るアケミさんを見たのだが、2人ともウンウンと小さく頷いていた。


あ、あれれ? こ、これは乗っかるべきなのか? うーん、俺には判断出来ないが、ここでコルトガさんの言う事を否定すると、余計にややこしい事になりそうなので、黙って置く事にしたのだった。



「ほう、貴殿も王であったか。」


「初めまして。エーリュシオンのケンジと申します。 偶然こちらの森を突っ切る予定で入ったのですが、偶然貴国を発見し、訪問した次第です。

しかし、ここは素晴らしく綺麗な街ですね。 エーリュシオン以外でここまで綺麗な街は見た事がございません。

ゴミを散らかさないというところが素晴らしいです。」

と素直な感想を告げてみると、


「おお!そうか!! いや、そう言って頂けると、嬉しい物だな。

まあ、お互い王同士という事なので、気さくに話そうではないか。

余も他国の王と接するのは初めての機会でのぉ。」

と満面の笑みを浮かべる魔王様。


最初は魔族の王、魔王と聞いて連想したのが、ブー、そして次に連想したのが戯曲?の魔王だったのだが、全く違った。

強さは感じるが、怖さは全く無く、髪の毛で全てをチャラにした感じである。


「せっかくじゃ、こんな僻地故、大したおもてなしは出来ぬが、食事でもしながら、周辺の情勢等を聞かせてくれぬか?」

と提案されて、ご相伴に与る事にしたのだった。

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