第162話 多彩な男 但し料理を除く
コナンさんと交流を持ってから、早3日。
大分、我々にも慣れて来た様で、話す際に不要な緊張も少しずつ緩和されている様子。
中でもサチちゃんとリックのコンビが良い仕事をしてくれている。
コナンさんと、魔法の話や錬金や付与の話をすると、結構盛り上がる事が判明している。
俺が拠点で作った物なんかを見せて説明すると、打てば響くという感じで、実に気持ち良い。
更には、俺よりも色々な薬草や金属や素材への造詣が深く、これだけでも是非とも拠点に来て欲しい人材である。
更に、コルトガさんが言う様に、参謀としての資質も凄い。洞察力もあり、人の心理的な同行や、その裏を掻いた様な発想が出来るのである。
彼に比べれば、俺なんかは、無知な直情型と言わざるを得ない程でだ。
「いやぁ~、本当にコナンさんは凄いね。 素晴らしい才能を沢山持って居るよ。うちの拠点で伸び伸び活き活きと生きてほしいなぁ。」
「であります。某の一推しの人物です。このままここに埋もれさせては人類全体の損失ですぞ!」
「何とか、うちの拠点に来てくれる気になって欲しいけど、彼の場合、余りせっつくと逆効果だから、ノンビリ慣れて貰って、それからそれとなく勧誘しよう。」
「主君、何卒コナンの事を宜しく頼みましたぞ!」
フフフ、コルトガさんとは真逆の性格だけど、大好きなんだなぁ。言葉の端々でそれが窺える。
「ああ、勿論だよ。俺もコナンさんの事、人間的に好きだし。 何か他人の気がしないんだなぁ。」
俺の思うに、あのポッチャリ体型だが、エネルギー消費量を増やせば良いんじゃないかと思う訳だ。
今がレベル45ぐらいだから、70近くまで上げちゃえば、新陳代謝も上がって、一気に痩せるんじゃないかなぁ?
これだけ食べている俺も、全然太らないのは、きっとレベルの所為だと思うんだよね。
となると、レベリングには、うちの拠点の横の森が最適だよな。
コルトガさんにももうちょいレベルを上げて貰う感じで、2人を連れてレベリングに行くのも悪く無いな。
「な、なぁ、ケンジ君。あ、あれを食べてみたいんだな。だな。」
「あれ? えっとどんな物だった?」
「何か嗅いだ事の無いような、ピリリとした良い匂いなんだな。だな?」
「ああ、カレーライスかな?」
こうして、段々と慣れた様で、日々色々とリクエストを出して来る様になっている。
彼は、辛い物も甘い物も両方OKで、何を出しても幸せそうに食べてくれる。
「ところでさ、今までは食事どうしてたの? ここにズッと居るって事は、もしかしてこの家庭菜園とここの周りで採れる物だけ?」
と尋ねると、悲しそうな顔で頷いていた。
お金が丸っきり無い訳ではないが、人の居る場所へ買い出しに行く気にならなかったらしい。
「え? じゃあ塩とかはどうしてたの?」
と聞くと、近くに、岩塩の出る穴があるらしく、そこで補充していたらしい。
魔法や錬金等の才のある彼だが、残念な事に料理だけは壊滅的だったらしく、材料があっても、食事は非常に侘しい物しか作れなかったそうな。
だからこそ、あの匂い攻撃は、本当に辛かったと言っていた。 ワァ……何かゴメンよ……。
◇◇◇◇
明日で、コナンさんとご対面から早2週間が過ぎる。
ソロソロ、神殿本部に寄ってから、拠点に戻らないといけない頃合いだろう。
スタッフ達の報告では、あれからもチョイチョイ流民が流れて来ていて、更に50名程増えたと聞いている。
今のところ、余分に住居は建ててストックしてあったので、間に合っては居るが、ジョンさんの面接でふるい落とした者も8名程居たらしい。
「なぁ、コナンさん。俺の今回の旅の目的の残りはあと1つでね、それはここの山にある神殿本部を一度見に行きたいって事だったんだよ。
もうかなり長い事拠点を放置しているから、ソロソロ次の動きをしないといけない頃合いなんだよね。」
と俺が言うと、もの凄く寂しそうな顔をしている。
「あ、でさ、お願いというか、俺の希望を言うとね、コナンさんに俺の拠点に住まないかなって誘いたかったんだ。
ほら、知らない所で暮らすのって、割と勇気が必要じゃん。それに拠点には人も多いしさ。
ただ、うちの城には、それ程人は居ないんだよね。村には人が多いけど。
ああ、ここで言う人ってのは、人族も居れば、獣人も居るし、エルフも居るし、ドワーフも居るんだよ。これら全てをうちでは、『人』って一括りで考えてるんだ。
うちの拠点には、人族が一番偉いとか、エルフだからとか獣人だからとかって差別する様な奴は入れない事にしてるから、種族関係無く、みんな楽しく暮らして居るんだよ。
前にも話した様に、温泉もあるし、錬金用の研究室や工作室、鍛冶施設なんかもあるし、魔道具の生産なんかもしているんだ。
せっかく、仲良くなれたと思ってるし、コナンさんと友達になれたと思ってるんだけど、そんなコナンさんをここに1人で置いて行く気にならないんだよ。
なあ、一緒に行かないか?」
俺は思いきって聞いてみた訳だ。
すると、コナンさんの顔がパーッと見る見る明るい顔になり、
「こ、こんな、僕でも、い、良いのかな?かな?」
と聞いて来た。
俺は心底ホッとして、
「ああ! 勿論じゃないか!!」
と即答した。
「フフフフ。じゃあ、一緒に来るって事でOKなんだね?」
と念の為明確に聞くと、コクンと頷いた。
「やったーーー!! 良かったよー。 断られるんじゃないかって、正直ドキドキだったんだよ。
じゃあ、これからも宜しく!」
と言って手を差し出すと、コナンさんも怖ず怖ずと手を出して、2人で笑いながら握手をしたのだった。
そうして、コナンさんの同行が決定し、この晩は、最後の晩餐? いや門出を祝う出発式の宴となったのだった。
翌日の朝、B7を一旦拠点に戻し、厩舎やテントなどを収納した。
馬車を出して、マダラとB0に繋ぎ、全員で乗り込んだ。
さあ、出発だ。
俺はゲートを発動して、丁度迷いつつ突っ込んだ、あの街道脇の藪に繋いだ。
ゲートに驚くコナンさんをスルーしつつ、一気にゲートを超えたのだった。
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