第138話 仕入れ先の拡充

翌朝、朝食を取った後、宿をチェックアウトして、早速行動を開始する。


まずは何時もの様に商業ギルドに行って、この都市や周辺の情報と、売っている土地の購入とお勧めの奴隷商の紹介をお願いした。

この国の商業ギルドに初めて行くと、大抵外国人が珍しいらしく、結構驚かれるが、Sランクの商業ギルドのカードを見せると更に驚かれる。

大抵の場合、カードランクによって露骨に態度が変わる程の事は無い。商業ギルドは職員教育が行き届いているので、最初から一環して丁寧な対応をしてくれるのが好印象である。


サーランドの商業ギルドも同様で、無事に必要な情報と、選択肢は少なかったが別荘用の土地を購入する事が出来た。

運の良い事にデカ過ぎるのと放置で荒れてしまった塩漬け案件の土地があったのだ。

もしかすると、こう言う幸運に恵まれているのも女神様のお陰かもしれないな。


購入した土地を整地して、何時もの別荘セットを配置し終えると、丁度お昼時だったので、近所の定食屋に入り美味しい焼き魚定食を食べた。

ピョン吉もコロも気に入ったらしく、お代わりして食べていた。


午後はプラプラと買い物をしながら、紹介された奴隷商の所まで行き、結果4人と契約する事になった。

新たに契約した(元)奴隷は、調理と家事担当のキヌエ(22歳)女性、同じく調理と家事担当のサチエ(19歳)女性、海鮮物仕入れ担当のセイジロー(24歳)男性、砂糖の卸し担当のトラジローさん(23歳)男性の4名である。

まあ本当は3名でも十分だとは思ったのだが、男性陣のセイジローさんとトラジローさんは兄弟で、それぞれが想いを寄せている相手がキヌエさんとサチエさんだった訳だ。

先に男性陣から決めた訳だが、女性陣を決める際に、その2人を選ぶと、パァーっと目に見えて喜ぶ訳ですよ。

フフフ、これで女性1人とかにしちゃうと、あぶれてしまった方が悲しすぎるからねぇ。

それに何かとある程度人員に余裕あった方が、後々楽だろうという事にした訳であった。


まあそんな訳でサーランド2日目も無事に任務を終え、後は新しいスタッフに仕事内容の説明等を行う訳だが、これもこれまで何度もやって来たのでスムーズに終えた。



 ◇◇◇◇



5日間の滞在中に塩の買い付け先との契約や、砂糖の卸先との契約も終わり、新しいスタッフ4名に見送られ、次の街へと出発したのだった。


特筆すべき事が無いので省略するが、この後の3週間で更に2つの都市と1つの小規模な街に別荘を設けた。

それぞれ海に面した街であったり、海に十分に近い都市である。

都市はどれもサーランドと同じ規模で、トーラス、デクスターという都市である。

トーラスはどちらかというと万遍無く色々な魚介類が市場に並んでいる感じ。

デクスターは、漁獲高は多いのだが、如何せん王都や各都市と離れ過ぎている為、日保ちする加工品が特産物となっていた。

海苔や海苔の佃煮、昆布、それに鰹節や干物等で、マグロ等の大型魚も市場には沢山売っているのだが、需要が限られている為に非常に安いのである。

なので、デクスターでの買い付けを強化する様にスタッフの構成と人員を通常より増やしておいたのだった。

そして、小規模な漁港の街の名は、ジャンセンという漁港の街で、規模的にはランドフィッシュ村よりも大きく、人口も1.5倍~2倍くらいである。

この街の住民の大半は漁業に従事していて、冒険者ギルドと商業ギルドの出張所まである街だった。

城壁は他に比べるとショボい感じだが、居心地の良い街であった。

そして、何よりもここの名物は蟹で、名前もジャンセンカニという街の名前が付いた物であった。

これがまた美味いのなんの。凝縮された旨味と仄かな甘味とで、絶妙であった。

思わず何杯も買えるだけ購入してしまった。

流石に買い占めるのは自重して我慢したが、市場の人達からは大変驚かれたのだった。

他にも甲殻類の漁獲高が多かったので、ここではそこら辺をメインに仕入れて貰う事にした。


また、この街の特徴としては、イメルダ王国とマスティア王国の国境に近い事である。

なので、蟹を仮死状態?でマスティア王国へ輸出したりもしているらしい。



という事で、大陸の沿岸部をグルリと廻って漸く今回の旅の目玉であるマスティア王国が目の前と言う所まで来たのだった。



「ハッハッハ!思えば遠くまで来たものだ。しかし驚く程にスムーズだったな。」


「ええ、本当に。

まあ、スムーズだったのは、ケンジさんやピョン吉ちゃんやコロちゃんが出て来る魔物達を遠距離で発見して、総ナメに潰して廻ってくれたからなんですけどね。」

とやや呆れた様に言うアケミさん。


「だけどさ、アケミさんだって、結構途中でレベル上げにはちょっと物足りないとか言いながら、ヤってたよね?」

と俺が指摘すると、フッと目を逸らされた。



国境と言ってもやはり、城壁や柵等がある訳でなく、不干渉地帯って言うのかな? どちらにも属してない地域が在った後にいつの間にか別の国に入っている様な感じである。

事前に得た情報では、マスティア王国は問題の無い国と聞いているが、旧アルデータ王国の例もあるので、あまり当てにしていない。


マスティア王国にはエスター山という割と険しい山があり、そこに神殿本部が存在する。

その為、この国に巡礼に訪れる信者は多いらしい。

そう聞くと、宗教国家なのか?と思ってしまうのだが、ちゃんと政教分離されているらしく、よくある様な宗教の戒律によって雁字搦めにされていたり、神の威光を笠に着た様な蛮行も無いらしい。


という訳で、多少は通常通りの警戒をする程度で、端から見ると油断しきっている感の健二御一行であった。


海沿いの街道を走っていたが険しい岩山を避ける為に一旦内陸部へと迂回してしており、道なりに進んで行く。

馬車が国境の空白地帯に入った辺りの丘の上の一本の大木の麓で、一旦休憩を取った。


周囲はなだらかな起伏のある草原で、長閑な風景である。

日本で言うと、北海道や九重辺りにありそうな風景かな?


マダラとB0に泉の水と果物を与えてやり、俺達もテーブルと椅子を出して、冷たいお茶とおやつを頂く。

小鳥の囀る声が聞こえて、なかなかに気分が良い。


1時間程休憩してから出発して街道を走るのだが、流石に起伏に富んだ道を通常のマダラペースで走ると、ラリー車の様にジャンプしてしまうので、スピードはかなり落としている。


「かなりアップダウンが激しいけど、アケミさん大丈夫?」

と心配になって聞いてみたら、


「ええ、これくらいなら。私、こう見えても漁師の娘ですから。」

と微笑みながら返されて、


「あー、確かに船はもっと揺れるね。」

と納得したのであった。


うん、本当に揺れる感じだな。スピードがスピードだけに。

多分、前世の俺だと耐えられなかったかもしれない。

今の身体だと全然平気だけど。


等と考えていると、広域に張り巡らしている気配察知が異変を知らせて来た。


「あ、なんかある。この先約1km! 人同士が争ってる。盗賊か!?」


「え? それは大丈夫なんですか? 盗賊なら至急救援に行かないと!!」


流石、元ギルド職員のアケミさんである。

まあ、元よりそのつもりなので、マダラに指示して道を急がせつつ、俺は両脇にピョン吉とコロを抱えて先行する事にしたのだった。



空中から視力を強化して見て見ると、商団っぽい五台馬車に、汚い格好の男共が群がっており、既に護衛と思われる冒険者3名が、地面に血を流して倒れている。

生き残っている護衛の冒険者は残り12名だが、内数名が腕や足に怪我を負い、血を流しながらも必死で応戦している様子。

対する盗賊は、戦闘可能な者が35名で、周囲には既に返り討ちに遭った盗賊らしき男が6名程横たわって居た。


更に、その先頭現場の前後には街道を見張っているらしい、盗賊の仲間が各3名潜んで居て、様子を窺っていた。ピョン吉とコロに前後の盗賊3名を殺さぬ様に倒す様にお願いすると、

<了解!>

<任せてーー!>

と俺の腕から飛び出して行った。


その数秒後に現場上空に到着し、そのまま ドンという音と共に地面へと着地した。


その地響きと舞い上がる土埃に

「「「うぉ!?」」」

と双方の陣営が驚きの声を上げて、双方の動きが止まったのだった。

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