第73話 名誉の回復へ
早い物で、あれから2ヵ月が過ぎ、夏はそこまでやって来ている。
当初少しだけ心配していた子供達も、ドリス君もサラさんも、完璧に拠点に馴染み、一緒になって農作業後に騒いでいたりする。
ドリス君曰く、
「いやぁ、普通農業ってもっと大変なイメージあったんですが、なんでしょうかね? ここって作付面積多い割に、結構みんな自由時間を持て余してますよね?
午後の2時には既に1日の作業終わりって、凄いですよね。」
と言っていた。
「そりゃあ、あれだよ、雑草とかは、割と俺やリサさんとかが魔法の練習で抜いてみたり、ピョン吉達が運動がてらに抜くのを手伝ったりしてるからだよ?
収穫時期とかはそれなりに忙しいから、覚悟は必要だぞ。」
と返すと、
「いや、そもそも、ここは凄いよ。税も無ければ、変な縛りも無いし、更に温泉付きだよ? 最高だよ。」
とサラさん。
「ところで、君らは冒険者活動は良いの? 今度ドワースに行く時、一緒に連れて行こうか?
取りあえず、チョコチョコとは依頼とかやっておいたほうが良いぞ?」
と俺が言うと、
「ああ、そうですね。身分証にもなるし、持っていた方が何かと便利っすもんね。じゃあ、それでお願いします。」
と軽い感じで言っていた。
理由は、俺やリサさんが魔法の訓練や剣術の訓練をやって、更に一緒にレベリングに連れて行った結果、予想以上に育ってしまったのだ。
いやぁ~、子供の成長期って凄いね。
その結果、この周囲のAランクぐらいなら、ソロでも余裕で討伐出来る程になったんだよね。
Sランクだと2人で向かわないとちょっとまだキツいかな。
彼らにも、巾着袋を1つ渡してあるから、農作業が終わると、時々森に討伐に行って、美味しいお肉を持って来てくれるんだよね。
つまり、それなりに、実力が付いた事と、食うに困らない様になったので、あまりガツガツしてないという事だ。
そうそう、肝心の子供達だが、来た時はガリガリだった子供らが、今じゃあ、どの子がアリスタから連れて来た子なのか見分けが付かない程に、逞しく育ってる。
笑顔も自然に出てて、凄く良い感じ。
そんな笑顔を見ていると、本当にこっちに連れて来て良かったと、心から思える。
今だから言えるけど、俺の身勝手な思いで、無理をさせたんじゃないかと、若干心配してたんだよね。
ああ、いかん、元気に笑って遊んでいる子供らを見ると、何か感極まって目から汗が……。
「と言う事で、取りあえず、一回ドワースに行って置こうと思っているんだよね。
あと、リサさんも一緒に冒険者ギルドで、登録状況を確認しておこうか。
せっかくだから、ギルドカードを復活させない手は無いだろ?」
「えっと、ご存知ないかもですが、その奴隷墜ちする原因が、前にパートタイムで所属したパーティーでの依頼失敗でして。
その罰金が払えなかった事で、借金奴隷になったのです。
だから……。」
と段々と声が小さくなるリサさん。
「ああ、その件は知ってるけど、そもそもだけど、依頼失敗の原因ってリサさんじゃないよね?
それに、その一件の冒険者ギルド側の判断って、ちょっと何かおかしいと思うんだよ。
どれ位の依頼だったかは知らないけど、そのパーティーってEランクじゃなかったんでしょ?
おそらく、DとかCとかじゃないの? それなのに、たった1人のEランクの所為で、そこまで失敗するかな?
そもそもだけど、何かおかしいでしょ。普通にちゃんと捜査したら、判りそうな気がしない?」
と言うと、
「ああ、言われてみれば、そうですよね。あの時私、ちょっと男性恐怖症に陥ってましたので、かなり正常な判断が出来てませんでした。
そして、気が付くと、とんでもない賠償金額を言い渡されて、勿論お金なんてカツカツだったので、為す術も頼る人も居なくて……。」
「だよね。だからこそ、今ギルドに行くべきじゃないかって思うんだよね。それって、ドワースのギルドではなくて、旧ラスティン子爵領のギルドでしょ?
大丈夫だよ。ドワースのサンダーさんなら、ちゃんと正常な判断してくれると思うんだ。」
と言うと、顔がパーッと明るくなった。
やっぱり、然るべき奴が報いを受けるべきだよな。
◇◇◇◇
そして、それから3日後、今俺達は、3台の魔改造馬車に乗ってドワースの街へやって来た。
1台は俺とリサさん、もう1台はドリス君とサラさん、そして最後の1台は村人達の夏物買い出し班6名が乗る馬車。
2日前に俺達がドワースに行く事を聞いた村の人達が、
「え?じゃあ、俺らも買い出しに行くべ!」
と言い出して、ワイワイ楽し気に欲しい物リストを作っていた。
街の中に入った後、買い出し班はそのまま自由行動へ移り、俺達とドリス君達は、一旦馬車を別荘に置いて徒歩で冒険者ギルドに向かう事にした。
ギルドに向かう途中、
「あのぉ、本当に話を聞いて貰えますかね?」
とリサさんは、少し不安気に俺に聞いて来た。
「うん、どうなるかは時間経ってるから微妙ではあるが、話はちゃんと聞いてくれるよ。
その為にも俺が居る訳だし。」
と言うと、
「お手数掛けます。」
と頭を下げて来る。
「ハハハ、これくらいは物のついでだから気にしなくて良いよ。
俺もたまにはドワースに来たいし。」
そして、到着した冒険者ギルドの扉を開けて中に入ると、やはり昼間と言う事で、ほぼ冒険者は居ない。
「あ! ケンジ君! お久しぶりだね。」
と手招きするいつもの受付嬢。
「お久しぶりです。今日は、幾つか用事があって、やって来ました。
まず、彼らですが、アルデータ王国のアリスタ支部から、こちらに拠点を異動したので、その報告と後は買取らしいです。
あとは、このリサさんなんですが、Eランクの冒険者だったのですけどね、どうやら旧ラスティン支部の方で不正があった可能性もありまして。
で、サンダーさんに少し話しを聞いて欲しいんですが、お逢い出来ますかね?」
と聞くと、ドリス君達の拠点変更手続きをした後、サンダーさんの所へと案内してくれた。
「おー!ケンジ君! 久々じゃないか? 寂しいからもっとこっちにも出て来てくれよー!」
と手を広げ歓迎してくれるサンダーさん。
「どうもご無沙汰してます。
ハハハ、その代わり、今日は優秀な冒険者をアルデータ王国のアリスタ支部から引き抜いて連れて来てますから、それで勘弁して下さい。」
「ほう! 優秀なのか! どの程度だ?」
と身を乗り出すサンダーさん。
「まあ、ランクは現在Eランクですが、実力は、ソロでAランク、パーティーでSランクの魔物を倒せるぐらいですかね。
そして、今回連れてきた、こちらのリサも同じぐらいまで鍛えました。
話と言うのは、このリサの件なんですが、どうやら旧ラスティン支部の方の不正で、嵌められた可能性が高くて連れて来ました。」
俺は、リサの証言も交え、全てをサンダーさんに説明すると、
「なるほど。確かにその判定はおかしいな。で、その問題のパーティー名だが、『アンダルシアの星』で間違いないのだな?
ちょっと当時の資料を取り寄せて、こちらでも不正のチェックを行う。
あと、Eランクのカードはその際に抹消されているとの事だが、私の判断でDランクとしてカードを再発行しよう。
でだな、その問題の『アンダルシアの星』だが、なんと現在こちらの支部に拠点を移して来て居るはずだ。」
とサンダーさん。
ほほーー、それは好都合ですな。
「フフフ、じゃあリサがここで活躍しているのを見せれば、滅茶苦茶動揺しそうですよね。
動揺すると、ボロを出す……。フフフ。」
と俺が笑うと、
「ハハハ、お主も悪よのぉ~。」
とサンダーさんも悪い笑みを浮かべる。
「でも、そんな奴らが真面目に頑張ってる若い子らを食い物にするなんて、絶対に許せないですよね。
リサだって、必死で鍛錬し、魔法の勉強をして、頑張っていたんですよ。
そして、まあ俺と出会い、こうして実力も付けた訳です。
このまま闇に葬られたままじゃあ、真面目に頑張っている冒険者が浮かばれないですからねぇ。」
と俺が怒りを露わにして言うと、
「まったくだ。それにどうも勘だが、こちらでも同じ事をヤラかす可能性が高い気がする。
私のお膝元で、そんな事はさせん!」
とサンダーさんが、力を込めて宣言していた。
サンダーさんが、受付嬢を呼んで、Dランクのカードの作成と、『アンダルシアの星』の動向についてを聞いていた。
「そうか、あいつらは明日か明後日帰って来るのか。フフフ。 じゃあ、こう言う筋書きはどうだ?」
とサンダーさんがまた悪い顔をしながら話始める。
今回Dランクになったリサさんと、大量のAランク、Sランクの魔物を持ち込んだドリス君達も無理矢理依頼達成としてカウントし、Dランクに昇進させ、俺を含め暫定4人をパーティーとして登録する。
で、丁度『アンダルシアの星』が戻って来た所に、『偶然』俺達が戻って来て、奴らが驚く様な成果物(魔物)を持ち帰り、そしてその際に強姦未遂を犯している『アンダルシアの星』を発見して騒ぐ……と。
うん、まあ、良いんだけどさ、俺要るか? まあ、良いけどね……。
あと、サンダーさん曰く、気になるのは、こっちに来て、今回の依頼を請ける際に、Eランクに成り立ての女の子を仲間に引き入れているらしい。
なので、そこが凄く心配なんだとか。
凄く嫌な予感がするぞ?
「あと、そのアンダルシアの星が請けた依頼ですが、内容が判れば、俺が監視して未然に防ぐ事も可能じゃないかと思うんですが?」
と提案してみた。
受付嬢のお姉さんの話では、北の森の手前の街道に出る、ハグレのオーガ討伐らしい。
依頼ランクとしてはCランク、アンダルシアの星もCランクと言う事で、特には問題ない内容だった。
「ところで、ケンジ君、君いつの間にアルデータ王国のアリスタなんかまで行ってたの?」
とサンダーさんが聞いて来た。
「ああ、いやアリスタは、通りがかりで1泊の予定だったんですがね。
最終目的地は、イメルダ王国の沿岸部だったんですよ。
ほら、ここって海が無いでしょ? 海の新鮮な魚が食べたくてね。
まあ、結局知り合った後、予定を変更して戻って来たんですけどね。」
と言うと、
「あぁ~」と少し呆れた感じを臭わせていた。
そんなに変かな? 海の幸、美味しいんだけどなぁ。
想像しただけで、涎出ちゃうよ?
と言う事で、了解して現在1階の掲示板を眺め、何か手頃な依頼を物色する事になった。
まあ、なければ、俺の巾着袋から適当に魔物を出して、買取に持って行く感じかな。
「ん? これ、良いじゃん。」
とSランクの依頼を1枚発見して俺がニヤリと笑う。
「サンダー・ウルフの素材依頼ですね。これ先日倒しましたね。」
「私のポーチに入ってますよ。」
とニンマリ笑うリサさん。
「だろ? フフフ。」
4人でこの依頼を請けるべく、受付に提出し、正式に受理された。
そして、俺はリサと一緒に監視に出掛けたのだった。
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