第4話 もんだい編 ~犯人は魔法使い?~
「――やはりしっかりぬすまれていますねぇ」
今日の売上のお金がレジのそばに積み上げられているのを見ながら、イズミはいまの状況を口に出して言いました。
犯人はおさつを持っていませんでした。それなのに、このとおりしっかり持ち去られています。いったいなぜなのでしょう。
タケルはじっとおさつをにらみつけました。なんで消えたんだよとでも言いたげな顔です。そんな顔で見たって、とうぜんおさつはなにも答えないのですが。
さて、そこでイズミがタケルに声をかけました。
「タケルせんぱい」
「なんだよ」
「さっきので、もしかしたら犯人が僕たちの動きに気づいたかもしれません。というか99パーセント気づいてます。そして、それはほとんどタケルせんぱいのせいです」
「……ごめん」
「ごめんですんだら『なさい』はいらないですね」
笑っていいのか、というかそもそもそれはおもしろいのか、はんだんに迷うギャグをサラッと言いながら、イズミはタケルの顔をのぞき込みました。
「謝るよりも、犯人を取り押さえる協力をしてください。僕じゃ力が足りなくてつかまえきれないんです」
「……え?」
とつぜんの申し出に、タケルはあんぐりと口を開いてイズミを見返しました。イズミはというと、にこにこと楽しそうな笑みをうかべています。……どうやら困るタケルを見て、ちょっぴり楽しんでいるようです。
「え、や、でも俺さっ、」
「つべこべ言わない! もちろん、団長に話をして、手伝いもしてもらいます。でも、これは自分でしたミスなんだから。せんぱいが自分で取り返さなきゃ」
笑顔のまま、でも少しだけまじめな顔になってそう言うイズミに、タケルは少し迷うように顔をふせました。……イズミの言うことは、間違っていません。自分のミスは、自分でカバーしなくては。
そう。弱気になっているヒマなんて、俺にあるのか? いいや、ない! なんせ俺は、将来、団長のあとをつぐ男になるんだから!
タケルは、元気よく顔をあげました。
「そうだな! おっし、おめいばんかいだ!」
「それを言うなら『めいよばんかい』です」
「……」
……まだ立ち直ったばかりなんだから、なにも今言わなくても。
タケルが早くもくじけそうになっているのを見て、イズミはいじわるく笑ってみせました。そんなんじゃ社会に出てから困りますよ、とまた言ってやってからお客さんのいない夜のお店を見渡します。店のはじっこの方を見ると、店長がいつの間にかイスを出してきて、またいねむりをしていました。
――そう、いまはおとなでも眠たい時間です。はやく帰らないと団長、もといイズミパパに怒られてしまいますが……まあ、今日のところは大目にみてもらうとしましょう。タケルにももう少し頑張ってもらって、元気を取り戻してほしいし。イズミはこう見えて、ちょっぴりおバカさんなタケルのことが好きなのでした。
そのことに気がついているのでしょうか、おバカなうえにどんかんなタケルは、イズミのまねをして店内を見渡していました。……この店のどこかに、事件解決のカギがぜったいあるはずです。でも、いったいどこに? それは、ふたりで見つけられるものなのでしょうか?
不安がたえないタケルのとなりで、イズミがひとり納得したように何度かうなずきました。
「でもあれですよ。空回りするのはいつものこととして、せっきょく的なのはいいことですよね」
「そりゃどーも……」
ほめられた気がしませんが、タケルはとりあえずお礼を言っておくことにしました。
そんなことより、とにかくいまは、犯人がどうやっておさつを消したのか考えなくてはいけません。
「なぁイズミ。犯人はさ」
「はい」
「どうやってお札を消したんだろうな」
いちばん最大のミステリー。このなぞが、はたしてふたりに解けるのか。
イズミは少し間をおいてからタケルの方を向きました。
「本当に消えた、って思います?」
「は?」
「魔法使いならありえますね、おさつが消えるっていうのも。でも彼は魔法使いじゃありません」
「なんでわかるんだよ、そんなこと」
ついさっきまで魔法使いだの超能力者だのと言っていたのに、今度ははっきりちがうとだんげん。考えていることがいまいちわからなくて聞き返すと、イズミはよゆうたっぷりにほほえんでいます。タケルはハッとしました。……まさか。
「イズミ、犯人のトリックがわかったのか!?」
そうたずねると、イズミはたっぷりともったいぶったあと、ニヤリと笑ってみせました。
「……タケルせんぱい。エリート探偵の血をなめてもらっちゃ困りますよ?」
なんということでしょう。イズミにはもう、犯人がどうやっておさつを消したのかわかってしまったのです。
いまにも飛び上がりそうないきおいで喜ぶタケルに、イズミは顔をよせました。
「タケルせんぱい、決戦はあしたの夜です……これから僕が指示するとおりに動いてください。いいですね?」
「わかった」
いつになくしんけんな表情のイズミに、タケルは背筋を伸ばしました。やっと事件にきちんと関われるときがきたのです。
するとイズミは、とつぜんあらぬ方向を向きました。
「ああ、読者のみなさんはここまでですよ。僕たちは作戦タイムに入るので、すこーし自分で推理してみてください」
「……だれに言ってんの?」
「ちょっと黙っててくださいよ、ここがいちばんいいところなんだから……そうですね、ヒントは――」
おっと、みなさんはいったんここでストップです。
どうですか? ヒントなしでも、このミステリーは解けそうですか?
きっと、イズミと同じでもうわかってしまった人、あと少しで解けそう、もうすぐそこまで、のどまできてる!! という人、さっぱりトンチンカンな人、事件に興味がわかなくてここまで読むのが大変だった人、いろいろいらっしゃると思います。
ということで、次のページは「ミステリーを解くヒント」です。もう解けてしまった人やヒントなしで頑張りたい人は、次のページを読み飛ばして、「かいとう編」を読んじゃってください。ヒントがほしい人は、そのまま次のページへ。
さあ、これがイズミからのスペシャルヒントです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます