第36話 光


「――――私の記憶では、教皇の息子家族は7年前の事故によって命を落としていたはずである。

しかしその時に死んだはずの孫は、聖堂の中で秘密裏に匿われていた――。この事実はもはや、家庭内の事情として片付けられるものではない。

精霊教会の最高責任者が『自身の孫を亡き者とし、信徒のみならず国民全体を欺いていた』という事実が国へ知れ渡れば、精霊教会の信用は崩れ去るだろう。

……ネロ教皇、何か納得できるような言い分があれば聞いておきたいところだが、いかがか」


ヨルクが責めるように、ネロへと問う。

しかし床に手足をついた教皇は小さく「ダネル、ダネル……」と呻きながら、弱々しく咳込んでいる。その肩を教会員が抱きかかえる様子は、とてもまともに話が聞けるとは思えない。

ヨルクは諦めるようにため息をついて、俺へと視線を向けた。


「では、敢えて其の方に聞きたい。

其の方は何故、精霊教会が長年対外秘としてきたはずの教皇の孫の存在を知り得た。何故この場にダネル・モロゴロスは出廷し得たのか」


「……ダネルの身柄は、数日前からダミアン様の邸宅で預かっていました。そこで一度話を聞いた上で、この審問会に招き入れたのです」


「数日前から、預かっていた……?」


ヨルクが怪訝な表情を浮かべかけたところへ、割り込むように大声を上げたのはまだ退場していなかったらしいドイルである。


「ロ、ローレン・ハートレイ……ッ!! 貴様が攫ったのか……!? 3日前、聖堂を去るその足で……!! ……ダ、ダネ――――」


「ようやく自分の身の安全が確保された時に、そんな馬鹿な事をするはずがないでしょう……。あの時点で俺は、教会側の事情も、ダネルがどこの部屋にいるのかも知りませんでした」


「で……、では何故、貴様らの手に……!!」


「――――俺が連れ出したんだよ」


「!」


会話に割って入ったのはカイルである。


「教会が大騒ぎしてた隙に、ダネルを部屋から連れ出して貴族地区に逃げた。

誘拐で責められるべき奴がいるとしたら、それも俺だ」


「……カ、カイル……。なんという事を…………!」


ドイルは絞り出すようにカイルの名を呼ぶが、カイルはそれ以上答える事をしない。会場には沈痛な空気が流れた。

それを断ち切るようにヨルクが言う。


「相分かった。では改めてローレン・ハートレイに、事の経緯の説明を求める。

しかし、現時点でダネル・モロゴロスの件と、其の方の嫌疑については別問題である。証人として招き入れたところを見れば、教会の内情を暴きたいが為だけにここへ呼んだ訳ではないのだろう」


「はい、全てに説明が付けられるかと思います。少し長くなるかもしれませんが……」


「よい、話せ」


ヨルクは頷き、俺も頷く。

会場の全員が静かに俺の言葉に耳を傾けている。3日前のろくに話を聞く気もなかった審問会とはあまりに対照的だと思いながら、俺はマドレーヌに聞いた7年前の事件の概要から説明を始めたのだった。





7年前――、ネロ・モロゴロスが教皇の座についてから既に久しかったが、精霊教会の実質的な運営は息子であるロネリ・モロゴロスが担っていた。

精霊教会の教皇職というものは別段、世襲制という訳ではない。しかし、現教皇の子息というものは否が応にも注目されるし、周りからの賛成が得られれば教皇を継ぐということも十分にあり得た。実際、ロネリは精霊教の布教に熱心であり、魔術の腕も相当なもので、教会員からの信頼も厚かったようである。

加えて、ネロとロネリは非常に仲が良い事で知られていた。それはネロの亡き妻が遺した唯一の息子だったから、という側面もあったのだろう。


ロネリ・モロゴロスは妻との間に、ダネルという子をもうけていた。

しかし不思議なことに――、この事は事実が公表されたのみで、人前に姿を晒す機会はほぼなかったようだ。本来は盛大に執り行われるはずの生誕祭も、不自然なまでに小規模に留まったらしい。


2年が過ぎ、人々がダネルの存在を半分忘れかけていた頃、悲劇が起こる。


ある大雨の夜、遠方から王都『ボルナルグ』への帰途に着いていたロネリ夫妻は、馬車に乗っていた。しかし川の氾濫によって本来通るはずの街道が封鎖されており、往来の少ない道へと誘導された。それは馬車が行き違えるかどうかという細い崖道だった。


事故の現場を見たものはいない。

しかし大雨の日の約3日後、ロネリを乗せた馬車を含めて計3台の馬車が、崖下の土砂の中から、捜索隊によって発見された。全9人の乗員の中に生き残ったものはおらず、まだ2歳だったダネルも生き埋めになった――、とされている。


マギア王国内のみならず他国からも、家族を一夜にして失ったネロ教皇への同情の声が上がった。3人を弔う盛大な葬礼が執り行われた。教皇はこの事件を契機に、どっと老け込んでしまったと言われている。


そして精霊教会の影に黒い噂が付き纏い始めたのも、この時からだったようである。





「――――これが一般に知られている7年前の事故の概要です。

実際にはダネルは馬車に同乗しておらず、事故を免れていた。にもかかわらず教皇はロネリ夫妻の死と同時にダネルの存在も抹消した、と言うことになります」


そこでマドレーヌが俺の背後から、そっと一枚の紙を手渡した。

それは少し強く持っただけで破れてしまいそうな、茶色く色褪せた紙だ。


「ここに、7年前にロネリ夫妻が一泊した宿の宿泊者名簿があります。

あくまで従業員がメモとして記しただけの、信憑性の不確かなものではありますが、この一覧の中には確かに『ロネリ・モロゴロス』の名前が記載されているのです」


この名簿は、マドレーヌが彼女の言うところの『使用人ネットワーク』をフル活用して手に入れたものだった。

たった2日屋敷を空けただけで、ロネリ夫妻の立ち寄った宿を突き止め、何年も前の名簿まで預かり受けてきたというのだから、その仕事の速さには驚嘆しかない。

肝心の本人が事も無げな顔だったのに対し、ダミアンの方がやたらと自慢げだったのが印象的だった。

上段の椅子からは見えるはずもないが、ヨルクは目を細めて名簿を睨む。


「…………よくそのような古い書類を見つけてきたものだと言いたいが、その名簿にダネル・モロゴロスの名前がない事が証拠だとでも言うつもりか? ダネル・モロゴロスは当時2歳の赤子だったのだろう」


「ええ、さすがにそこまで気の利いた宿屋はめったにないでしょう。ここにも『ロネリ・モロゴロス様御一行』と記載されているのみです。

しかし、幸いなことに人数は書き残されているんです。『ご宿泊 8名様』と――」


「8……? 先の話では、事故にあった人数は9人だったはずだが」


「はい。調べた限りどの新聞記事でも、事故で亡くなったのは9名だとされています。つまりこの名簿の人数と1名分の齟齬があるということになります」


「なるほど……。その齟齬が、ダネル・モロゴロスであると言いたい訳か……。

しかし、宿泊人数の勘定に赤子を入れていなかったという事は十分にあり得ることだとも思うが」


「勿論、その可能性も大いにあります。

しかしそもそも、何故2歳の息子を同行させたのかという疑問がある。新聞記事には隣国への訪問以上の事は書かれてはいませんが、それでも数日に及ぶ長旅だったはずです。そこへ人目に触れる機会自体が少なかったダネルをわざわざ連れて行った理由が分かりません」


ヨルクはそこで腕を組み、難しげな表情を浮かべる。


「…………其の方の言う事には、一理ある。いや、仮にどのような訳があろうとも、現にダネル・モロゴロスは生きているのだから、細かな経緯は些事だ。

つまり――、ダネル・モロゴロスには生まれた当初から人前に出せない事情があり、事故を隠れ蓑に亡き者として扱うようにさせたのではないか、と主張するのだな……」


俺はヨルクの問いかけに対して、無言で頷く。

ヨルクは腕組みをしたまま目を閉じ、深い溜息を吐いた。


「なれば問題は、何故そのようなことをする必要があったかと言うことだ。

まだ2歳の赤ん坊を、何故そこまでして世間から隠す必要がある。息子の事故に、まだ幼い孫の死の偽装を紛れ込ませたなど、想像するだに尋常な事ではない。私も7年前の葬礼には参席していた。その時のネロ教皇の憔悴ぶりは目も当てられないものだったと記憶しているが……」


ヨルクはそこで、俺の背後のダネルに目を向ける。

当の本人たるダネルは、終始複雑そうな表情で話を聞いていた。そして苦し気に呻く祖父を、それでもなお心配そうに見上げている。

ヨルクはそんなダネルに言った。


「……本人に聞くのは、些か酷であるとは思う。しかし、この場に出てきたこと自体が決心を固めた末のものであると信じて問いたい。

ダネル・モロゴロス、其の方はどのようにして幼年期を過ごしてきた。祖父から何と伝え聞いていたのか」


ダネルはちらりと周囲の大人たちを見まわしてから答える。


「…………物心がつく前には、僕の両親はもういませんでした。事故で亡くなったということ自体は聞いてました。でも、僕が自分の部屋から出られないのは、僕自身が病気で体が弱いからだって……、そう聞いていたんです」


「それが偽りであると気づいたのはいつか」


「――――」


その時、しばらく俯いていたネロ教皇が顔を上げた。

ひたすらに為されている会話から逃げるように発言を避けていたネロの顔色は、ひどく土気色にくすんで、あまりにも生気がない。ダネルの存在を公にされた今、教皇の権威はもはや風前の灯である。しかしネロが最後に縋りつこうとしているのは、権力や精霊教会の立場とは別の何かであるように見えた。


「1年位前です……。カイルが、見かねて僕に打ち明けてくれたんです」


「……1年……。それを知っていながら尚、其の方は…………」


「…………」


ヨルクがダネルの胸中を思いやり、言葉を失う。

憐れみの折り混ざった複雑な視線が、会場中からダネルへと注がれている。

ダネルはそれに対して、頷くでもなく、ただ上段の祖父を見やっていた。


対するネロは、天を仰ぐようにしながら、ただただ話に耳を傾けている。

ひょっとすると、この事実こそがネロにとって最も衝撃的だったのかもしれない。ネロの中でダネルは何も知らない、籠の中の小鳥だったのだ。

しかし小鳥はすべてを悟っていた。それでもなお、歌って見せていたのだ。


ダネルがカイルから自身の死について知らされた後も、あの部屋で己の境遇を受け入れ続けることを選んだ理由――――、その真意については俺も踏み込んでいない。

祖父の抱える事情を慮ったのかもしれない。大人達の考えが変わることを待つことにしたのかもしれない。事実を打ち明けたカイルを守る為だったかもしれない。

しかしきっと一番根底にあったのは、この事を訴えて結果が何も変わらなかったら、ダネルはいよいよ己の人生に光を見出せなくなってしまう。ダネルはその時にこそ、自分と世界に対して、同時に、永遠に、諦めをつけなければならない。

その事を何よりも恐れたのではないだろうかと思う。


海の底にいるような沈黙が会場に降りる。


しかし俺は首を振った。

違う――、ダネルはこんな同情の視線を受けるために、満を辞して審問会場に登場したのではない。これは孤独で可哀想な少年の話ではなく、英雄になるために一歩踏み出した少年たちの話なのである。


痛いほどの沈黙を破り、俺はあえて声を大きくして言った。


「ヨルク様、話を戻してもよろしいでしょうか。

肝心の『ダネルがそうまでしてひた隠しにされてきた理由』について、です」


俺がそう言うと、ヨルクは少しハッとしたように顔をあげる。


「――――ああ。そうであったな」


「恐れ入りますが、説明のために、ここでまたひとつ資料を提出させていただきたいと思います」


「何の資料だ」


「俺自身の研究資料の一枚です。精霊教会による没収を免れたページであり、カイルが今まで隠し持っていたものです」


「…………? 資料に欠落があったということか……? してそれは、この段階で提出が必要なものなのか」


「はい」


「…………分かった、それをここへ」


ヨルクはやや戸惑うような表情を浮かべながらも許可を下す。

横の係員が俺から資料を受け取ると、ヨルクへと手渡した。


ヨルクは静かに目を通し――――、ややあってから驚きの表情を俺へと向ける。

その瞳は、先ほどよりも更に強く戸惑いを宿していた。


「ローレン・ハートレイ……、ここに書かれている内容は、本当か…………?」


「はい。誓って、事実に基づいた検証結果のみが書かれています」


ヨルクが目を見張ったのも無理はない。

カイルが隠し持っていた最後の一枚には、魔術が使えなかった俺が、魔術を扱えるに至った経緯が記されていた。

端的に言えば、プテリュクスの枝を魔力の放出口とし魔法を生み出した方法――。

俺の魔術研究の出発地点である。

ただ本来ならば、ほぼ全ての人が魔法を当たり前に扱えるこの世界において、大した重要性を持つ内容ではない。氷魔法の発見の方がよほどセンセーショナルだし、社会に与える影響も大きいだろう。


しかし今回だけは、そうとも限らなかったのだ。


「資料に書かれている杖はここに」


俺が服の袖口からプテリュクスの杖を抜き取り、目の前に掲げて見せる。

こうして手に持つのは、案外久しぶりだった。


「これがなければ俺は、氷魔法どころか、一滴の水魔法さえ生み出すことができません。

生まれてからずっと、今もです」


ヨルクは前のめりになって、俺の持つ杖を見つめる。ヨルクからはただの枝切れにしか見えないだろうが、事ここに至れば細かな事実検証など後回しだ。問題はこのページで提示されている内容の意味。


ヨルク・M・バーウィッチという人物は、噂に違わず、物事を見極めて客観的に事実を判断する事のできる人物だ。

ここまで言えば、彼はきっと全てを察してくれるだろうと俺は確信していた。


ヨルクは額を掌でつかみ、目線を足元へと落として、小さく呟く。


「……カイル・フーゴーはこのページを目にし、自宅へと持ち去った。それは友であるダネル・モロゴロスの為であると言う。そのページには魔法適性のなかったローレン・ハートレイが今に至るまでの経緯が書かれており…………、加えて死んだはずの教皇の孫が生きていたという事実…………」


ヨルクは静かに顔を上げ、俺の背後でカイルと並んでいるダネルへと目線を向けた。

そして――――、ネロや精霊教会上層部が長くひた隠しにしてきた、一番の禁秘へと辿り着く。




「ダネル・モロゴロスは、同じ体質か……。

精霊教会教皇の子息でありながら、魔法が使えなかった為に、その存在を隠匿させられていたのか……?」




その言葉に、会場の聴衆が一斉に息を飲んだのが分かった。

それを見て事情を知る数少ない教会員達は、ついに諦めたように顔を伏せる。その無言はヨルクの推察が正解であると雄弁に語っていた。


俺は、ヨルクのたどり着いた結論に補足をする。


「ダネルは病気という名目で、聖堂上階の一室にて長らく自由な外出を禁止されていました。その遊び相手として充てられたのがカイルであり、ダネルの存在を外部に漏らさないよう固く言いつけられていましたが、偶然この研究資料を目にしてしまった。

そして、ダネルの『魔法が使えないという体質』に改善が図れるのではと思いつきます。しかしダネルの存在が発覚してはいけない。だから思わず、資料を持ち帰った。それが不運にもドイル司教の手に渡り、今回の事態まで発展した――――。

まずこれが事の経緯です」


「…………」


ヨルクは自分自身のたどり着いた答えに、未だ戸惑うように額を押さえている。

俺はかまわずに続けた。


「教皇の孫ともなれば、未来の精霊教会を背負って立つ人材。恐らくは生まれてすぐに、魔法への素養がどの程度のものか、魔術師や医師によって確認がなされたはずです。しかしそこで、魔法への素養がまったくないことが発覚した。

精霊からの加護を受けんと人々を導く最高指導者、その孫息子が魔法適正皆無というのは、教会として看過できる事実ではなかったのだと思われます。

ゆえにダネルの存在はあまり表に出さず、扱いについては保留とし、成長が待たれた。しかし2歳になっても、ダネルの体質は改善の兆しさえ見せなかった。そして、恐らくこの先も魔法への目覚めは期待が出来ないだろう――。

そのような判断が下されたのではないでしょうか。

ひょっとするとダネルの存在が、教会組織内の火種となるやもという懸念も挙げられていたかもしれません。更にそこで、ロネリ夫妻の事故が起こり――――」


「――――もう、そこまででよいだろう」


ヨルクはそこで俺の言葉を遮った。

勿論、後半の部分は俺の推測が多分に混じっている。しかし教会側の反応を見る限り、的外れな推測ではなさそうだった。

ならばそこから先はもう語る必要もない。全てが明らかにされた今、世間への真実の流布は免れ得ない。何年間も隠し続けてきた分、その反動も大きなものとなるはずだ。


ヨルクは恐らくそこまで理解した上で、首を振った。

そして、深く息を吐いてから立ち上がった。会場の視線が流麗な王子の立ち姿へと注がれた。


ヨルクはしばし沈黙をしてから、静かに俺の名を呼ぶ。


「……ローレン・ハートレイ」


「はい」


「……此度の騒動で、結果的に精霊教会の闇が暴かれたこと、正直に言って驚きを禁じ得ない。果たしてこの事実をいかにして裁くべきか、それは我が父たる国王の意見を仰がねばならないだろう……」


ヨルクはそこで一度言葉を切り、さらに続ける。


「しかし語弊を恐れずに言うならば、これは過去に行われた罪が、今になって暴かれたものである。加えてこの事実は精霊教会上層部しか知らぬ極秘事項であった。

つまり日々精霊に祈りを捧げる人々に罪はない。この国と精霊信仰は切って切り離せるものではなく、人々の心と歴史に深く根ざしたものである。マギア王国民から、精霊教会という拠り所そのものを奪うことは出来ない。

なればこそ、ここで同時に光も提示してみせよ」


「――――!」


「其の方には、それが出来るというのであろう。

魔法とは精霊の奇跡が見せるものではなく、誰しもに習得可能な技術である。信仰の多寡も、属性の壁も関係がない。それが其の方の研究の主張であったはずである」


ヨルクと俺の視線が交差する。

それは今日初めて会ったとは思えないほど、俺の全てを見通すような視線だった。聡明な王子は、俺の意図を汲み取った上で、期待を込めて問うている。

何故だろうか、初めからこのシナリオを思い描いていたはずなのに、俺の胸の底から熱いものが込み上げてきていた。


「精霊教会が諦め、亡き者として存在を葬り去ったダネル・モロゴロス。

魔法の素養がなく精霊からも見限られたこの者に、仮に魔法が使えるとなれば、それは其の方の研究の正当性を大きく裏付けるものとなるだろう。

…………違うか?」


「…………いえ……、ありがとうございます。

俺はこの研究が正しいと信じています。そしてこれが、その証拠です」


俺は高鳴る胸を必死に押さえつけながら、ダネルを振り返った。

気づけばダネルは俺のすぐ横に立っている。


俺は杖をダネルへと手渡し、耳元で小さく囁いた。


「ダネル、今がその時だ――……。度肝を抜いてやろうぜ」





ダネルが魔力を注ぎ込むと、会場の中空に輝かしい火の玉が浮いたのだった。






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