第46話 希望の星
コロナ騒動からさらに10日後、やっと
「ご迷惑をおかけしました」
顔にできたとかいうアザは、目視できないレベルになっていた。
彼女の旦那さんのモラハラDVに離婚話は社内中に漏れていなくて、その点は不思議だった。
「
お昼休み、彼女と休憩時間が被り休憩室で合流する。
「そんな、謝らなくていいですよー」
「いや。これだけは言わせて、まさか
元々スレンダーな人だったけれど、現在の彼女は心配になるレベルに痩せ細っている。
「あの…、
ああ、私はなんでこんな問いかけしかできないのだろう!
彼女のことが心配だから訊いたのだけど、とっさには言葉が出てこない。
「そうねぇ、とうとう離婚を決意して動きはじめた感じかな?ダンナのヤツ散々浮気しといて、いざ別れるとなったらゴネるし、わけわかんないわ。あ、それから私のこともう
どうやらこじれている様子、こんなんじゃ
私は年上の人と仲良くなってもなかなか相手のこと名前で呼ぶことができない、ひとつ年上の
「おつかれ〜」
と、ここで休憩に入った
復帰してからの
「
そう詫びながら
「いいのよ、あなたのお友達の弁護士さん、ちゃんと離婚専門の方を紹介してくれたから」
「あらあら、皆さんお揃いで」
今度は
「うわぁ、社内にいながら女子会できちゃいそうねー!」
「そうね、このタイミングでビッグニュースがあるの!」
「なに、なに?私の離婚話よりすごい?」
「人事部の
「えええーっ、マジで!?」「そもそも
私は相変わらず言葉は出なかったが、一応婚活中の身としては気になる話だ。
どこで知り合いどんな人と結婚するのかが、
もっとも知りたい情報だった。
「私もビックリよー!そもそも彼女結婚する気ないと思ってたわ〜」
「仲良かったんじゃないですか?」
「そうねぇ…
なんと、あの
「ええーっ?
「そうよ、
あの
「
全く、
どんな経緯で結婚が決まったのか、知りたくてたまらなくなった。
「ほんとビックリよ!普通私くらいの年齢になれば、だいたいが諦めて無理だと思ってしまうものだからねぇ…」
アラフォーの私だって心のどこかでもうムリかもしれないな…とメゲてしまっているので、少し年上の女性が結婚決まったのは希望の星だ。
——思い切って
そう決心したものの、どう切り出せばいいのかこの時は思いつかなかった。
お昼休憩を終えて事務所へ戻ると、話題は
「ついに結婚かぁ…彼女とは同い年だが、これまで一度もチラリとそのような影見せなかったよなぁ」
「
珍しく外回りに出ていない
「うっさいな、感動してるのだよ!いきおくれて結婚はもう絶望的に見えた同世代が、とうとう嫁にいくんだからな!」
「
「まぁ、あれですかね、
こう発言するのは、
「私は仕事を辞めたりはしませんよ」
ここで本人が突然現れたので、
「うわっ!ご、ご、ごめんなさいいっっ!けっ、けっ、ご結婚おめでとうございます!」
「あはは、謝らなくていいのに、お祝いの言葉ありがとうね」
「皆さん、ありがとうございます….と、肝心な用事を忘れてしまうとこだったわ。
普段めったにこちらの事務所へとやって来ない彼女を最近よく見かけるような気がする、
でも私が話しかけるタイミングはなさげだ。
「はいっ、なんでしょう?」
「
「えええーっ!?
「ええ、私もこんなことするつもりはなかったんですけどね、
なんとまぁ…。
このやりとりに事務所内のあちこちからクスクスと笑いが漏れる、私は吹き出したいのをガマンしていた。
——
実は自分も
嫌われているのかと悩んだこともあったけど、同じようにスルーされて憤慨している社員を見たことがあるので、常習犯のようだ。
「ボクがコロナで休んだの、しょうがないじゃないですかぁぁ、それまで有給になっちゃうなんて、ヒドイわぁ」
「コロナ感染でのお休みは有給ではなく特別休暇ですから。
一体なにをどう使えば有給休暇がそんなになくなってしまうのだろう?
彼の場合主に外回りの営業で直行直帰が多いため、そもそも休んでいても気がつかなかった。
「そんなわけなので、また休みたい日があれば、あと3日ですけどね〜、申請してくださいね」
——今がチャンスかも!——
私は業務中であるにも関わらず彼女の後を追った。
「あ、あの…」
エレベーター待ちしている
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