第33話 陽子ちゃんの幼なじみ
今日は
前回着る予定だったレモンイエローのワンピースに袖を通す。
控えめなウイングドスリーブ、首元はややオフタートル、そして小さなな花柄で今の時期にピッタリだ。
丈の長さは平均的な身長の人が着たらミディ丈なのだが、背の低い私が着用するとミモレ丈だった。
上にカーディガンを羽織ろうと思ったが、今日の予想最高気温は27度、とてもじゃないが暑くて着られない。
…本当はこのワンピースは前回の紹介のために新調したものだった。
先日は雨だったけれど今日は晴天、濡れて汚れてしまう心配がない。
このワンピースはネットショップで買ったものだ。
私にはかわいすぎると思ったのだけど、試着してみて違和感がなく、すっかり気に入ってしまった。
靴はぺったんこな黒のバレエシューズでこちらは手持ちのもの、明るめな色味のワンピースに対し無難ではあるものの華やかさに欠けるような気もした。
——まぁ、いいか…——
あまりにも気合を入れすぎるのは気恥ずかしい、変ではないと言い聞かせ、待ち合わせ場所へと足を運んだ。
待ち合わせ場所は地元の最寄りの駅前で、10分前と早めに到着したのにすでに
クールなショートヘアにパンツスタイルの
なにやら向かいにいる小柄の年配の女性と話し込んでいる様子だった。
——なんだろう、道でも尋ねられているのかな?——
他人から頼られやすいタイプの彼女だから珍しいことではない。
「お待たせ」
時間より早く着いたのでこのセリフは正しくはないと思うのだが、つい口をついで出てしまった。
「あっ、、
なんか少し動揺している?
ここで
「あなたが
えっ、これはどういうこと!?と思ったけど、
「
とりあえず名乗り深々とお辞儀をしておく。
「ごめんなさいね、さっきまで息子ここにいたのに、どこかへ行ってしまって…」
息子?ってことは、この人は今日紹介される予定の男性の母親かな?と、ピンときた。
——これはどういうことになっているのだろうか?——
不安になる。
「ごめんなさいねぇ、私ったらお見合いみたいなものだと思ってしまったのよ」
小柄でパーマを当てたショートヘアに銀縁のメガネをかけたどこにでもいそうな年配のご婦人といった雰囲気で、藤色のワンピースを着ていた。
「あれぇ、もう全員揃っちゃったかなー?」
ここで体格の良い男性がヌッと現れた、顔を見て一目で
「もう、
「うん、ちょっと北口ブラブラしてみたのよ」
最寄り駅は南口と北口とにわかれていて、待ち合わせ場所は南口だ。
約束の時間まで待てずに、どこかへ時間潰しに行ってしまったようだった。
「では、全員そろったところで行きましょうか」
——えっ、まさか着いてくるつもり!?——
なんとなく、息子に紹介されるのがどんな女なのか気になって見にきたんだろうな、というのは予想できたけど、確認したら帰るものだとばかり思っていた。
『ごめんねぇ
こんな話聞いてないよ、と言いたくなる。
『でも、3人で予約したんでしょう?』
地元の個室のある創作鶏料理専門店を予約してくれたのは、
『それがね、一人増えたところで大丈夫でしょうってきかないのよ、あのオバさんいい人なんだけど、昔っから強引で』
そんなぁ…嫁になるかもしれない女の品定めにでもきたのか!?
そう思うとみぞおちがキュッと痛くなるような気がしてきた。
「
うわ、いきなり地雷臭しか感じないセリフ!
たった数分間で、これから紹介される男性に期待できない気がした…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます