第20話 お姉ちゃんのアドバイス
翌日は散々だった。
せっかくの
鎮痛剤を飲んでひたすらゴロゴロ…。
昨夜、
——こんな生理痛がひどいんじゃ、結婚なんてできないかもしれないな…。——
絶望的になる。
一時期家を出て一人暮らしをしていたことがあるが、あの頃生理痛で寝込んだとき、一人でいるのがすごく不安に感じた。
具合が悪くて寝込んでいるときは、誰かに側にいて欲しい…。
ただし、理解のある人に限るけど…。
昔から頭の中で『こうしたい』と思うことがあっても、それを叶えるための行動をして来なかった。
その理由は、ズバリどうすればいいかわからないというのがほとんどだった。
あまりにも自分が情けなくて、涙が出てきた。
ベッドの中でグダグダしていたら、ドアをノックする音とともに誰かが入ってきた。
「久し振り!相変わらずね、大丈夫?」
てっきり母親だと思い込んでいたので、入ってきた人物の姿を見てビックリした。
「お姉ちゃん!」
一人っ子だと思われてしまうことが多いが、私には一回り年上の姉がいる。
私が小学校へあがるころに姉は都内の大学に進学したのだけど、自宅からの通学が大変だったため家を出ていた。
多分それが一人っ子だと思われてしまう原因だ。
「コロナのせいでずっと実家帰れなかったけど、ガマンできなくて来ちゃったわ」
そう言って私が寝ているベッドに腰かける。
「ママから聞いたけど大丈夫?ちゃんとお医者行ってる?」
姉と私は正反対なタイプといっていい、陽キャでリア充、そして身長が平均で美人だった。
「一応病院へは行った…体質的に低用量ピル処方してもらえなかったんだ」
手術という選択肢もあったけど、怖くて経過観察を選んでいたりする。
「そう、タイヘンね」
姉は私と違ってドン臭くなく、体も比較的丈夫なほうだ。
「今日お仕事休み?」
姉はカルチャーセンターの講師を生業としていて、教えているのはフラワーアレンジメント、元は花屋さんだったのが独立したのが数年前だった。
「もう一昨年からコロナのせいで対面授業がなくなってzoomよ。前ほど忙しくなくなったのは良かったけどね」
そっか、やっぱり影響受けてたのか…。
姉は社会人になってしばらくしてから結婚し出産、子供たちはとっくに成人していて自由に動けるらしく「好きな仕事ができる」と喜んでいた矢先だったので、なんかかわいそうに感じた。
「
あまり一緒に暮らしてこなかったけれど、姉は人を見る目がある。
正社員ではない勤務であまり体が丈夫でもない私を常に気にかけてくれる。
「実は婚活はじめようと動きはじめたんだけどね」
「おお〜、スゴいじゃな〜い!」
姉は私がなかなか一歩踏み出せないタイプだということを知っている。
「でもね、色々あって、なんか結婚ムリな気がしてきた」
「なんかあったの?」
私はこれまで起きたことを話した、
合コン料理教室や婚活ドライブに参加したものの不発だったこと、元カレが突然現れ付きまとわれそうになったこと、そして既婚者である
「そうなんだ…」
姉はいつだって私の話に耳を傾けてくれる。
「婚活といっても、まだ一歩踏み出したばかり、って感じだね。それに不倫って、みんながやる訳じゃないから」
婚活が一歩踏み出したばかりだとしても私としてはもうお腹が一杯な感じ、続けて行動に出るのは難しい気がした。
「
子供!
考えたこともなかった!
そもそもこんな私に育てられるのだろうか?
それ以前に出来るのかな?
「いや、子供のこと考えてなかったかも」
現実に婦人科の病があるから、出来にくいと聞かされていたような?
「そもそも
そういえば私、なんで婚活はじめたんだっけ?と一瞬考えてしまったけど、
「一人でいるのが不安になったんだ。東日本大震災の後も怖くなって結婚したいって思ったけど、そのときはどうすればいいかわかんなかったんだよね」
正直にいえばこれ、なんか世間一般の人が考えてることとズレてるのかもしれない。
「うん、それもアリじゃない?ま、どうすればいいかわかんなくて行動できないのも、
そう、全て
「うん、職場の友達に誘われたの」
「ああ、だからかぁ、
う、図星…。
確かに
マジでこんな自分なんとかしたいんだけど、どーにもならないのが現実だった。
「ま、いいんじゃない、普通の結婚相談所入ると、何かと大変だし」
そういえば姉のダンナさん、昔結婚相談所で働いていたんだった!
急にそのこと思い出し、ガバと起き上がる。
まだだるいけど、鎮痛剤はなんとか効いてくれたようだ。
「そういえばさ、
過去に結婚相談所で働いてたことに触れた途端、姉の表情が曇った。
「ああ、あれね…」
「結婚相談所入るとどう大変なの?」
入会金がかかることくらいしか想像がつかない。
「まぁね、入会金がかかるのは想定内だからいいとして…例えば相談所から紹介されてお見合いするじゃない?そのあと、2度3度会うよう相談所が言ってくるわけよ」
ふむふむ。
一度会って、そのあとすぐ会うよう強要されたら、私だったらきつい。
「ダンナが働いてたとこだけかもしれないけど、3回会うとね、結婚するつもりあると見なされ、成婚退会料を請求されちゃうんだって」
なにそれ、ヒドイ!!
「まぁ、あの業界はなかなかすごいみたいで、だからあの人もいやになって辞めたのよね」
そういえば、私の記憶に間違いがなければ、新婚早々にダンナさんが退職しちゃってちょっとした騒ぎになっていたような…。
「私は結婚相談所に対し良いイメージはないなぁ」
そうなのか…。
「なんかいい人いれば紹介できたのにね〜、私の同級生やダンナの知り合いって、ほとんど結婚してるからね」
もっと若いうちにお姉ちゃんに頼んでおけば良かったかな…。
「お稽古ごとしてみるのはどう?趣味で出会う人もいるみたいだよ」
「お稽古かぁ…」
それも悪くなさそうだなって思ったものの、習ってみたいことが今すぐ思いつかない。
私って趣味らしい趣味がないのかもしれない。
強いていえばスイーツ大好きでカフェ巡りするのが好きだけど、一人で行けるようになったのは最近で、しかもここ2年はコロナのせいでストップ状態だ。
食べるのが好きつながりで思いつくのは、料理教室への参加。
先日の合コン料理教室は不発だった。
色々考えてるうちに急に眠くなって、姉に悪いなと思いつつ寝かせてもらった。
気づけば夕方になっていた。
——あーあ、今日一日終わっちゃったな——
とくに予定がなかったとはいえ、体調不良で一日潰れてしまったのは何だか悔しかった。
とはいえ、これが仕事ある日に当たってもイヤなんだけど…。
本当は今日、
とりあえず姉からお稽古ごとを提案されたので、考えてみようかな?という気になれただけでも収穫な気がした。
階下から母親に夕食ができたと呼ばれ、ノロノロと階段をおりた。
気がついたらいつのまにか姉は帰っていた、
見送りできなかったのが残念だけど、きっと私に気を使ったのだと思う。
ご飯を食べ終えてシャワーを浴びた後にマッタリしていると、LINEの着信を知らせる音がブルブルと響いた、そういえば昨夜から
『お疲れ〜!なんかヘンな男が
いや、全然大丈夫じゃない。
『最初はね、どこの店舗にも
隠したもなにも…。商業ビルで働くイコール店員としか頭回んないのか?
『たとえおかしくても一応はお客様だから話聞いてたんだけどね、なんか
はい、ありません。
しばらく時間おいてからまたメッセージがきていた。
『ところで大丈夫?ちゃんとおうち帰れた?まさか拉致られてないよね?』
そして今朝のLINEは、
『おはようございます、無事ですか?』
あれれ、心配されちゃってる…。
私は慌てて返信した。
『すみません、体調悪くさっきまで寝込んでいました』
午後8時すぎ、この時間ならもう仕事終えているだろう。
すぐに既読がつき、返信がきた。
『良かった〜、心配したよ〜!』
…よくよく
私にはよくわかんなくて、頭の中がグルグルしてきた。
職場の近くで元カレに待ち伏せされ、危ないところを
考えてしまう。
二人の間に何があったのか、正直気になる。
でも、私のキャラ的に他人に対し根掘り葉掘り探ったことって、今までなかった。
結局まだ体がだるいので、LINEが長くなるのを避けたくて簡潔に元カレの件だけ伝えることにした。
『実は昨日私を訊ねてきたの、元カレだったりします。正直思い出したくもない人なんですが』
ここで一旦送信し、一呼吸してから次の文章を送った。
『迷惑かけてしまい、申し訳ないです』
自分からなにか行動起こした結果ならしかたないけど、なんで向こうから一方的にけしかけられたことを謝らなきゃならないんだろう?
理不尽だ。
『そうなんだ、大変だね〜!私も昔ストーカーされ会社にまで押しかけられたことあるから、恐怖はよくわかるわー』
そういえば
『
え、そこまでしなきゃなんない!?
『大袈裟じゃなくさ、万が一犯罪にまで発展したらシャレになんないから、防ぐためにも必要だと思うよ』
犯罪!!
いくらなんでもそこまでないとは思いたい、
一時的にでも
話の流れ的に
——そういえば彼女をストーカーしていた男って、なんか犯罪やらかしてたんだっけ?元カレはビビりだからないと思うけど、またしつこくされたらイヤだなぁ。もう婚活めんどくさいかも——
この数日間は色々と密度が濃すぎた、ここで婚活やめたいって思うの、短絡的かしら?
色々ぐだぐだ考えているうちに睡魔に襲われ、いつのまにか眠ってしまった…。
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