第3話 お泊まり
楽しかった女子会はお開きとなり、家庭のある
「温かい紅茶でも飲まない?」
まだ眠る気がないらしい
「あ、気にしないで…明日仕事でしょう?」
若いときと違って年齢いくと夜更かしに睡眠不足はきつい。
けれども
「大丈夫、明日シフト入ってないから………って、もしかして、お
なんか、子供扱いされた感じ…。
普段から
もう40になるのに何だかなぁ…と、微妙だった。
「ううん、私も何だか眠たくない」
実際本当に眠たくはなく、久々に誰かと話したい気分だった。
「じゃあ、お茶でも飲みながらお話しましょ」
一ヶ月違いで入社した
だいたい家で温かい紅茶を飲むのに茶葉なんて使ったことなんてなかったし、
紅茶をいれるとしたらティーバッグだった。
外見や所作だけでなく、生活習慣までもがひとつひとつ自分と違いすぎた。
「お砂糖ミルクは?」
「あ、ミルクだけいただきます」
しばらくして
「どうぞ」
私が腰かけているソファーの前の小さなテーブルの上にティーセットが次々と並べられた、白を基調としたオシャレな陶器だ。
それは白無地ではなく、白地に白い花やフルーツが
カップ&ソーサーだけでなく紅茶の入ったポットにミルクピッチャーまでもが同じデザインで、感嘆せずにはいられなかった。
――もしうちで温かいミルクティー出すなら、ティーバッグにミルクは市販のポーション使うだろうな――
そう考えながら紅茶にミルクを注いだのだけど、これがまたほんのりと温かかったので、ビックリした。
――うわ!ミルクまで少し温めてる!私だったら牛乳冷たいまま使うだろうな…――
ひとつひとつに感心していたら、
「
思わぬ指摘を受け、仰天する。
「えっ、そうかな?」
「うん、さっきからビックリ箱開けたような
それは自分でも気がつかなかった…。
「だからかな、なんか秘密話したくなるんだよね」
これまた
「さっき彼女らには言えなかったことだけどさ…私元々不妊体質なんだよね」
「えっ、そうなの!?」
いきなりのぶっちゃけに驚く。
「うん、だからまーくんとの子供妊娠できたの、奇跡に近かったんだよね…だからこそ慰謝料上乗せされたんだけどさ…」
これまたすごい話!
あまりにもな内容なんで、言葉が出なくて目を見開く。
「私ね…さっき
不幸…。
私はそのフレーズに違和感を覚えた、
彼らが
「まーくんと別れてからはさ、2人くらいはつき合った人いたけどね、なんか結婚に繋がんなかったんだよね」
私の感覚からすれば、大失恋の後に普通に彼氏ができること自体がすごいことなので、彼女が未だに独身でいることに対し不思議には思わなかったのだけど、普通に考えたら美人で社交的な
「…そうなんだ…」
なんと返せばいいかわからない。
これが
私にはできなかった。
「実はさ…、婚活はじめてたんだ」
婚活!
それは私がはじめてみたいと思いつつ、何もせずにいたことだった。
具体的になにをはじめたのか、身を乗り出してしまう。
「婚活って…紹介所か何か?」
この問いに対し
「私、紹介所向きではないのよね…最終学歴は偏差値の低い高校卒業だし、これといった資格は持っていないし、社会人経験は読者モデルと今のパート勤務だけ。それに、実家は裕福でも母親は後妻だし…あ、二号さんじゃないけどね」
「えっ、そんなこと関係あるの?」
私はビックリした、田舎ならまだしも、
ここは東京…。
「お見合いとか紹介所は釣書が必要よ」
知らなかった…。
自分が20代後半になった当たりからお見合いの話はなくもなかったのだけれど、打診され迷っているうちに話が立ち消えになってしまってばかりだったから、正式なお見合いというのがわからない。
「とにかく私は若くないし、お見合いに不利な条件ばかりだから、恋愛がんばるしかなかったのよね…その恋愛も最近は不発だけどね」
そ、そんな!
「婚活って、具体的に何してるの?」
恋愛や紹介所に頼らない
「最初は合コンとかだったんだけどね、だいたい友人知人はモデル時代に知り合った人ばかりだから、なんかチャラいんだよね」
モデル時代に知り合ったような友人知人って、どんな人達なんだろう?想像もつかない。
「交際に繋がっても、結婚に向かないようなタイプばかりなのよ」
そもそも私自身が出逢いや恋愛に縁がないタイプだから、つくづく
「マッチングアプリも考えたけれど、あんまりいい話聞かないから利用しなくて…実は
なんと、彼女らにも相談していたとは!
婚活はじめてすぐあれこれ行動できる
「でね、今はね、合コン料理教室とかいうのに参加しているの」
「えっ、合コン料理教室!?」
私が驚いたのは、合コン料理教室という存在を知らなかったからだけではなく、
このコロナ禍でもこういう事があったというのにもビックリだった。
そこにはマスクとエプロンをつけた男女が数人、調理をしている様子が写っていた。
写真の中での
――やっぱり美人だよな――
思わず見とれてしまう。
普通女は40もすぎれば普段どんなにキレイでも写真に写し出された姿は残酷で、
シミやシワにたるみがわかってしまうことが多い。
自分の場合、シミにシワやたるみはわからないものの、若い時より瞼の腫れぼったさと肌のくすみが目立ってかなり見苦しい。
それが
次の画像を見せてくれた。
そこには赤いエプロンと白い不織布マスクををつけた外国人男性が、ホワイトボードを前に何か説明している様子が写し出されていた。
「この日はジョージア料理教室だったの…あ、うちらの時代はグルジアと呼んでいた国ね」
ジョージア料理とは!これまたオシャレな!
フレンチやイタリアンとかではなく、それを飛び越している!
「ジョージア料理って…どんなの!?」
まるで想像がつかない。
「この日作ったのはね、シュクメルリなの。ほら、最近話題でしょう?自分でも作ってみたくて参加したのよね」
シュクメルリ!?そういえば、なんかどっかの定食屋がそういう料理を出して話題になっていたことを思い出した。
さすが佐和子、話題の料理を作ろうとするなんて…。
「うふふ、
目を真ん丸………自覚してなかった………。
「でね、この合コン料理教室、毎月第2日曜日にあるんだけど、良かったら
「へっ!?」
突然のお誘いにヘンな声を出してしまった。
「あ、ここの料理教室はね、個人でやっているから入会金もなくて毎月必ず参加する必要がないから、気楽でいいよ」
いつもの私なら何でもすぐには決断できなくて、グズグズしているうちに話が流れてしまうのだけど、この時ばかりは「参加してみようかな」と即答したのには、自分でも驚いてしまった。
「良かった〜、来月から参加ね!」
深く考えずに即決しちゃって、なんだか不安…。
とはいえ、
今から緊張してどうすんだろ!?
こうして私の婚活は、合コン料理教室の参加表明から始まったのだった…。
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