雨と彼女と僕と
茄子
第1話 僕が嫌いなもの、彼女が好きなもの
あなたは雨が好きだろうか。
僕は嫌いだ。
世間一般に言われるような、気持ちが落ち込んだり、じめじめするという理由もある。が、1番の問題は僕の家は喫茶店を営んでおり客足が遠のいてしまうことだ。
両親が3年程前に自宅を改造して開店したのだが、二人とも凝り性なせいで外国から取り寄せたお高そうなインテリアをいくつも飾っている。例えば装飾が凝られた大きな柱時計の金額を聞いたところウン百万したという...
リフォームとその他諸々の購入で借金をしているようで返済するために売上の大部分を使ってしまっている。
僕自身たくさんの人と関わることは正直苦手なのだが、従業員を雇う費用もないため学校から帰宅後仕方なく手伝っているわけだ。
今日もいつものように店を手伝っていると、からんと鈴が鳴り1人の女性が来店してきた。20代前半くらいだろうか。
「いらっしゃいませ。」
いつも通り挨拶をする。お好きな席にどうぞと言うと窓際の席についた。
「ご注文は何にいたしますか。」
「アイスコーヒーで。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
席を離れ、コーヒーの準備をする。———しばらくして出来たコーヒーを女性に持っていく。
「お待たせしました。アイスコーヒーになります。」
「ありがとう。」
そう言われ、立ち去ろうとした時声をかけられた。
「ねえ、君は雨って好き?」
「え?いえ、僕は好きじゃないです、むしろ嫌いですね。」
「そっか〜残念だな…私は大好きなんだよね、雨音を聴きながら読書したり、眺めてるだけでも心が落ち着いてね。」
それから彼女は僕にこんな事を言い出した。
「ねえ!今度の日曜にさ、私と出掛けない?」
「うぇっ!?」変な声が出た。「ど、どうして出掛けたいなんて」
「ごめんごめん。そんなに驚くとは思わなかった。君は遊びにも行かずずっとこの店で仕事してるでしょ。だからたまには遊びに行かないとって思ってね。」
「そうですけどなんで知ってるんですか?」
「私の家近くでさ、ここ通るとよく君がいるとこガラス越しに見えてたんだよね。」
「なるほど...」
「で、どう?一緒に出かけてくれる?」
早く返事をしてくれとばかりに身を乗り出してくる。
「わ、わかりました。出かけましょう。」
「やったー!私は天宮晴華。よろしくね。」
「僕は桐生快人です。よろしくお願いします。」
「じゃあこうしましょう、当日晴れてたら君が行き先決めて、雨だったら私が行き先決めるってことで!」
こうして、流されるまま僕と天宮さんの出会いが始まった。
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