会話の塩味
パパの話は味がしない。仕事の手柄や飲み屋でのどうしようもない出来事を話すだけ。私は無味無臭の話を詰め込まれてもうお腹いっぱい。お兄ちゃんとの会話はしょっぱい。私が話せばとてもよく聴いてくれるけど、自分のことは全然話さない。だから志望校を変えたのも、彼女ができたのも、直接は聞けなかった。あの子との会話は良い塩梅。互いに好きなことを話して聞いてまた話して。小さい頃から慣れ親しんだ味噌汁みたい。家の中がこうだったら、きっと幸福だろう。だからこそどうか、このままでいたい。
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