世界を知っていても

掌に収まる薄い端末。たったこれだけで世界と繋がり、多くを知ることができる。それがどのように作られ、動くかも知らず。目の前に立つ女性が身重であることも、彼女が腰掛けられる席に自分が座っていることも知らず。隣の男性が自分の元同級生であることも、相手が確かめるようにこちらを見ていることにも気づかず。視界には、この画面だけが映る。

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