小鉢の中身は覚えてない
「1週間前の夕食を覚えてる?」
彼女に問われ、すぐには言葉が出なかった。僕は視線をテーブルに落とした。目の前に並んだ小鉢が歪んで見えた。思い出せない。素直にそう告げる。
「私と過ごすこの時間も、そのうち忘れてしまうでしょうね」
箸を持つ僕の手が強張る。
「私もよ。だから少しくらい忘れてもいいくらいに、もっと沢山喋ってよ」
唇を尖らせ、目を逸らした彼女の耳の形が偉く綺麗に見えた。それは多分、暫く忘れなさそうだ。
2020/02/25
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