籠の殺人
朝陽うさぎ
1
「えッ、マジか!? ぅおっしゃぁぁぁぁ!!」
読書を謳歌していた俺は、同級生及びマニア
「五月蝿いって……」
「これが喜ばずに居られるかよ! 合宿の許可下りたぞ!」
「合宿って……、脅迫状とか、悪戯が来たやつか?
一応訊くが、まさか行くんじゃないよな?」
「行くに決まってんだろ、馬鹿野郎!
腕の見せ所だ! 受けて立とうじゃねえの!」
出港前の船人のように、ダンと大きな段ボールに足を乗せる。が、相当劣化していたのか、はたまた力の加減が出来ていなかったのか、勢いに耐えられず、ぐしゃりと呆気なく潰れる。
それでも彼はめげずに腕まくり。
「一つ訂正するぞ。お前は
あとさ、そんなに
「お前がその噂を肯定してどうすんだよ!?
しっかしな……やる気有んのか? ずっと本読んでばっかじゃん」
「俺の人生から本を奪う気か!?」
「そうとは言って……」
「…あの…、今大丈夫で」
「取り込み中だから黙ってろ!!」
「取り込み中だから黙ってろ!!」
入室してきた女学生はぴえん、と涙顔。
今思えば、よくハモったよな。
「す、すみません……」
どうやら気を悪くしたようで、そそくさと部屋を後にする。
「ねえ、ちょっと待って!」
「はいぃ……?」
「もしかして、入部希望者?」
ん?入部?
……ああ、そうか。
クッソ、観察力もまだまだだな。
「そうですけど……」
「よく来てくれた!取り敢えず、此処にかけてくれ」
さっきの威勢は何処へ行ったのやら……。
女学生と言えど、背は俺等よりも遥かに下回っている。140cmくらいだろうか。
充は、部室兼探偵事務所と化した部屋に招き入れ、来客用のソファーに座らせる。
それにしても、よくこの部活を見つけたな……。
俺が入部している部活は、ミステリ部。
名前からすると、ミステリーを好む者たちが集う場と勘違いする者が多い。
「そんな、のほほんとした内容ではなぁいッ!!」
と、充は叫ぶだろう。
ミステリ部は事件を解決していく部活でもある。
ただ、依頼など滅多に来ない。
それに、頼みに来る奴はどうにかしてるんじゃねえのって思う。
=====
「えっと……、1年B組の
「我朱さんね…。何でミステリ部に?
あ、その前に、一つ推理して貰おう」
「推理…?」
「俺等の時、そんなんなかっ……」
「いいから!
…オホン。
さて、密室殺人が起こったとしよう。鍵はカード式で、マスターキーは何処に有るかさえ不明。
さあ、どうやって入るか!?」
正解するか、しないかはあなた次第!とでも言いそうな
女学生–––––我朱さんは、間髪入れずに答えた。
「簡単なことです。
ドアの下の隙間から、先を少し曲げ、L字型に変形させた針金を差し込んで、部屋の中のドアノブに引っ掛ければ良いんです」
「もしかして…、ミステリ愛好家?」
「好意を持っちゃいけませんか?」
俺は、我朱さんの笑顔にぞっとする。
彼女にとってミステリーは、ただのファンのような浅はかな存在ではなく、愛人という捉え方なのだろう。
「あ、“我朱さん”ではなくて、下の名前で読んで良いですよ。
可愛く聴こえるし」
俺は愛らしさを求めてはいなくて、君の実力を拝見したいんだけど……。
「よぉし、解った!」
いきなり充が立ち上がり、座っていたキャスター付きの椅子が、棚にぶつかる。
そして、愛水さんの手を掴む。
「是非とも、入部してくれ!」
「えッ……ありがとうございます!」
そして、暫くの間、部室兼探偵事務所は、パリピが去っていったような状態になった。
……俺の本を穢すなぁッ!!
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