あなたを諦めきれないギャルじゃダメですか?
桜目禅斗
少年とギャル
第1話 ♂トラウマを抱える少年
俺は
成績はそこそこ優秀な方で運動神経は平均的。
部活動はバスケ部に所属している。
教室ではスタメン
趣味は漫画やドラマ。主に学園を舞台にしている作品が好きだ。
青春ものは憧れるし、俺もそういう日々を過ごしたいと願っている。
特技は料理。母と二人暮らしをしていることもあって、自分で食事を用意する機会も多い。
苦手なものは野菜と水泳と……ギャルだ。
そう、俺はギャルが苦手だ。
苦手というか天敵と呼ぶのが相応しいだろうか。
ギャルのような派手な女性とすれ違う時は隠れてしまうし、テレビ番組に出てきた時はチャンネルを変えてしまう。
ギャルを見ると思わず身震いをしてしまう。
そして、トラウマを思い出す。
そう、あれは小学四年生の冬の日のことだった――
▲
小学五年生までは福岡の田舎町に住んでいた。
周りには田んぼしかない。
のどかだが、子供にとっては何も無い町。
若者や子供は少なく、町にはおじいさんとおばあさんばかりだ。
幸いにも俺には同い年の幼馴染がいて、遊び相手はいたので恵まれていたが……
冬休みで大型連休が訪れたにも関わらず、俺は毎日家でのんびりと過ごす退屈な日々を送っていた。
「はい七渡、お年玉」
年が明けて数日後、母親からお年玉を貰い財布に入れた。
今年のお年玉の総額は二万円。
半分は貯金箱に入れておきたかったが、ちょっとでもリッチな気分を味わいたかったのでとりあえず財布に全額入れて家を出た。
「七渡君、どこ行くの?」
「ゲーム買いに行く」
隣に住む幼馴染である
一時間はかかるが、俺にとっての自転車移動は二時間まで耐えられる。
しかし、途中で急な雨が降り始めてしまい、神社で雨宿りをしたんだ。
神社の屋根の下で雨が止むのを待っていると、派手な女子高生がやってきた。
髪も染めていて冬なのに肌も焼けていた。
可愛いというより、ちょっとエッチだなと第一印象で感じる雰囲気の人だった。
制服の上にコートを羽織っているだけであり、スカートから大きな太ももが見えていて寒そうな格好をしているなと思った。
「君も、雨宿り?」
思わず見惚れていると女子高生の方から声をかけてきた。
「うん」
「そっか。同じやね」
小学四年生にもなると異性を意識し始めていて、女性に興味というか魅力を感じてやまなくなっていた。
特にお姉さんにはドキドキしてしまい、幼馴染である翼の中学生のお姉ちゃんを見ても色々と湧き出る感情があった。
「お姉さんは冬休みじゃないの?」
「補習。お姉さん頭悪いから」
どうやら冬休みなのに制服を着ている理由は補習が行われているかららしい。
「君はお出かけ?」
「うん。雨が止んだらお年玉でゲームを買いに行く」
「ゲームにお金使っちゃうと? もったいないな~」
「大人はみんなそう言うよ。こんな田舎じゃゲームくらいしか楽しめんってのに」
「子供はね。でも、大人になると色んな楽しみ方があるんだよ」
しゃがみ込み、俺をからかうような目で見ながら話すお姉さん。
甘い香りが漂ってきて、そこはかとない色気を感じた。
「あたしもお金欲しいな~、化粧品とか鞄とか欲しいし」
「お姉さんはお年玉貰ってないの?」
「うん。中学生までは貰えとったけど」
高校生になっても学生だから両親からはお年玉が貰えると思っていたけど、そうではないらしい。
やっぱり高校生になると大人ってことなのかな……
「お年玉あたしにもわけてよ」
「やだよ」
俺のお小遣いは少ないため、お年玉は一年通して使用する貴重なお金だ。
誰かに譲るなんてできっこなかった。
「わけてくれたら~……そうやね、スカートの中とか見てもいいよ」
「えっ!?」
「お年玉の五千円くれたらね」
まさかのお姉さんの言葉に俺は酷く動揺した。
スカートの中という禁断のゾーンに足を踏み入れて良いと許可を出されている。
しかし通行料は五千円。
ゲームソフトが一つ買えてしまう。
「何で見せてくれるの? 普通の人は見せてくれないよ」
「あたしね、君みたいな可愛い少年が大好きなんだよね~君みたいな子はからかいたくなっちゃうと。どうするん? 見たいん?」
お姉さんは俺の目の前でスカートをひらりひらりとさせながら、悩んでいる俺に向けて優しい笑みを見せてきた。
「うーん……」
「今日だけだよ。こんな日はもうないかもよ。見たかったら見せてお姉さんってお願いしてね」
何もせずに後悔するより、何かして後悔する方がいいと色んな凄い人たちが声を揃えたかのように言っていた。
なら俺も挑戦した方がいいはずだ。
というか俺の好奇心はもう誰にも止められそうになかった。
「見せて、お姉さん」
「いいよん。君からおねだりしたんだからこれは合法ということで。あたしは悪くないからね」
俺は財布を取り出すと、そのままお姉さんに取られてしまった。
そして、五千円を俺の財布から抜きだし、まいどありと言ってスカートの中へ俺を手招いてくれた。
あのスカートの先にはいったい何が待っているのだろうか……
天国なのか地獄なのか、それともここと変わらない世界が待っているのか――
「おしまーい」
お姉さんはスカートを閉じたため、スカート探検ツアーが終了してしまった。
「どうやった?」
「ヒョウがいた」
「ヒョウ!? あー……ヒョウ柄のパンツことね」
むっちりとした太ももにヒョウが挟まれていた。
スカートの中は今まで味わったことのない甘酸っぱい匂いが広がっていて、身体が火照るような生温かい空気だった。
「どうしたの? ボーっとして」
「……かちかん? ってのが変わった気がするよ」
「まるで海外の絶景を見た後の旅行者のような感想やね」
スカートの中から出た後だと、小さいと思っていた田舎町が大きく見えるようになっていた。
きっと大人の階段ってやつを昇って視野が広くなったのかもしれない。
「もっと見たい?」
「えっ!?」
耳元で甘い声を囁き、俺に問いかけてきたお姉さん。
いったいこれ以上何を見せてくれるというのか……
世の中にはまだまだ知らないことがたくさんある。
だから、俺はもっと深くまで女性のことを知りたいと思ってしまった。
「まいどあり~」
再び五千円が消費され、合計で一万円を失ってしまった。
性へのお金というものはあっという間に消費されていってしまうということを子供ながらに知ることになった。
世の中には知らないことがたくさんあるが、知らない方が良い事実もたくさんあるということを悟った……
これより先の記憶には蓋をしてしまっていて、今はもう鮮明には思い出せない。
だが、おぼろげな記憶なら残っている。
スカートの中はアフリカのサバンナが広がっていてヒョウがいた。
そこを抜けるとケニアのジャングルが見えて、そのジャングルに足を踏み入れると、ちょっとした沼地があったんだ。
雨が止む頃には俺の財布は空になっていて、当初の目的だったゲームを買うお金は無くなってしまった。
ギャルのお姉さんに誘導されて、全てを搾り取られてしまっていたのだ。
「じゃあね少年。おかげで化粧品がいっぱい買えるよ」
動揺している俺とは違って笑顔で帰っていったお姉さん。
え、ちょっと待って、俺の財布の中が空なんですけど!?
たった十分ほどで二万円消えてんですけど!?
しかも消費税とか言ってお年玉じゃない千二百円も持ってかれたんですけど!?
そして俺は泣きながら家に帰った。
失ってから気づくお金の大切さ……
後日、何故か俺がお年玉を女子高生に渡したことが両親に知れ渡っており、信じられないくらい怒られてしまった。
激しい後悔に襲われて、目の前が真っ暗になった。
それが俺のトラウマになっており、ギャルみたいな派手な女性が怖くなってしまったというわけだ。
あの日を境に俺の性格は酷く歪むことになってしまった。
何故なら興奮という衝動と共にあの日の後悔が襲いかかるからだ。
つまり、興奮するとすぐに気持ち悪くなってしまう。
これは男として生きていくには致命的なトラウマなのだ――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます