♪♪昼ドラ風中国ミステリ「女怪(にょかい)~賈家の女たち~」

第4話 賈栄秀(旦那様)の独白➕

「眩しい…」

窓からの朝日がまともに顔を照らし、目が覚めた。

朝日、いや、

もうとっくに朝食も終わり、掃除や今夜の支度に店の者たちが

走り回っている。

友人の武済信、王松蒙とともに

この廓に来て

どのくらい経つだろう。

そもそも、家にもう三月は帰っていない。

用事は下男の徳偉に言いつけて

こと足り、それ以外のことを話す時は担当のものをこちらへ呼ぶ。

私には三人、妻がいる。

正妻は袁玲楓。

人は皆、美人だと言う。友人の武は間違いなく、玲楓に懸想している。

しかし、私にはつまらない女でしかない。

正妻の椅子に座らせるには、

ちょうどいい美貌の人形。

第二夫人は元人妻だ。

夫が病死した。

多分、妻のなかで最も年上で、私より年上だ。

物欲情欲が深いがまた情も深い女だ。

私を甘えさせてくれる。

第三夫人は元廓の一番芸妓。

若く美しく可愛く、

そして生きるためにしたたかに立ち回る知恵もある。

私に生の喜びを与えてくれる。

だが、

今はどうしてか

妻たちと戯れる気になれない。

きっと私を待っているだろうに。

武済信が来た。

「起きたか、賈栄秀。王松蒙も起きたぞ。

俺はもう

この店の娼妓で抱きたい者はいない。

お前もそうだろう？

昨日は

独り寝だったようだな。

なあ、王松蒙を誘って次の廓へ行こう。

雪鳥楼

とかいうのが良いらしいぞ」

武済信の言う通り、ここの娼妓たちには飽きた。

昨夜は久しぶりに寝台が広々としていた。

新しい店で

新しい芸妓に出会おう。

旅の途中で良い娘に出会ってもいい。

疲れはしっかり取れて

力が身体中にみなぎっている。

「俺はこのように身体がでかく

無骨でヒゲモジャだから

芸妓たちも恐れてあまり寄ってこないが、お前がいると

よりどりみどりだからな、お前を連れ歩くのは止められん」

と、豪放な笑い声を上げる武済信に、胸の中で

そう言いながらお前も

相当な相手数をこなしているぞと苦笑する。

「なあ栄秀、

そういえば廓もいいが、普通の娘とも遊びたいものだ」

「はは、全くお前は。女人のことしか考えんのか」

武はいやいやと首を振り、

「人生は酒と女だ。それがすべてだ」

「それもいいが、

金や地位、名誉も欲しいな」

と現れた王松蒙が、会話に加わってくる。

「とすると、ここにいる賈栄秀は、全てに加えてさらに美貌まで欲しいままにしているぞ、羨ましい限りだ」武の顔は本気だ。

それを見て王が言う。

「武済信は、賈栄秀の妻が羨ましいものな」

武が応酬する。

「王松蒙だとて、栄秀の妻たちを見ればそうなるはず」

大男の武済信。

チビで小うるさいが、家が薬屋で

「使える男」王松蒙。私がいつもつるむ仲間だ。

賈家にはしばらく戻らず、私はこの面子でこんな風に遊び歩いていた。