第16話:新しい魔法




「もう、貴方が何をしても驚かない自信があるわ」


 ニックと取り引きを交わし、泊っている宿屋まで戻ってきて早々に、そんな事を話すユイリ。


「それはどうも……、というより、まだ君と会って1日足らずというのにね……」

「……それだけ貴方が色んな事をしているからでしょう。全く、もう……」


 苦笑する僕に、さらに溜息をつきながらユイリは、


「兎に角、フローリアさんには話は通すけど……、どうなるかはわからないわよ。……最悪、審問は覚悟しておいてね」


 フローリアさんの審問……、耐えられる自信、ないなぁ……。

 早くも自分の行動に後悔し始めた僕を横目にしながら、ユイリは腰を上げて入り口まで歩き、


「じゃ、行ってくるわ。くれぐれも言っておくけど、勝手に出歩かないでよね……?」


 釘を指すようにそう言って出て行く彼女。……どこか手のかかる子供に言うような事を言って出て行ったユイリに、苦笑いをしながら僕は、少し緊張しているらしいもう一人のルームメイトに話しかける。


「どうしたの、シェリル?」

「い、いえ……、別に何でもありませんわ」


 そのように返答は来るけれど、やっぱりどこか硬い気がする……。


「……本当に大丈夫?どこか具合が悪いとか……」

「ほ、本当にわたくしは大丈夫ですから……!それより、コウ様、どうかなさいましたか?先程から何かを気にしていらっしゃるようでしたけど……」


 逆にシェリルからそう問われて、僕は自分の指に止まっていた小鳥を見る。されるがままに身体を撫でられている小鳥は、何処か眠たそうにしているように感じられた。


「この世界では、ペットという慣習は無かったよね。僕もまさかここまで付いてくるとは思わなかったんだけど……」


 そう言いながら僕は、高級木材の端を落とした小さな木片を取り出し、


「今からこの小鳥の止まり木を作ろうと思うんだけど……、それまでこの小鳥を預かって貰えないかな?」

「止まり木……、というのはどういうものでしょう?」


 ああ、そこからか……。この部屋にあった果物ナイフで、何とか加工できないものかと思っていた僕は、彼女に小鳥の止まっておける木の事を説明する。


「要するに……、その子の家みたいなものを作ってあげたいという事でしょうか?」

「まぁ、家っていったら大袈裟かもしれないけれど……、このまま僕の指で眠ってもらう訳にもいかないしさ。せめて止まれるものでもって思って……」


 僕の返答に彼女は少し思案して、


「わかりました、それでは木の精霊の力を借りましょう……」


 シェリルはそう言うと、部屋の窓を開けて、精神を集中させながら、小声で詠唱する。そして……、


「これは、また……」


 感嘆する僕の目の前で、窓の外にあった木が次々とシェリルの手元に集まっていき、集束して、やがて小さな木の小屋のようなものが完成する。


「ありがとう、ドリアード……」


 恐らくは精霊なのだろうそれにお礼をいい、パタンと窓を閉めるシェリル。


「これで大丈夫かしら……、気に入ってくれるといいのですけど……」


 彼女が小鳥の前にその小屋を持っていくと、それに気付いた小鳥がその中に入る。……暫くして、その中の止まり木の上で、小鳥は目を瞑ったまま寝入ったようであった。


「よかった……。気に入って貰えたようですね……」

「全く、この小鳥もなんで付いてくるんだか……。でも、凄いな……、これが精霊魔法か……」


 まさか、こんな事まで出来てしまうとは思わなかったよと、僕がシェリルに話すと、


「コウ様も、確か精霊魔法の適性があるという事でしたよね。わたくしでよろしければ、御指南させて頂きますけど……」

「有難い話だけれど、僕に出来るかな……?何せ、魔法のまの字も無い世界から来たものだから、使えるようになるのは憧れでもあるんだけど……」


 遠慮がちに提案してくる彼女に、僕はそう答える。子供の頃から魔法だとか必殺技を使えるようになれば、と思っていたのだ。事実、生活魔法としていくつかの魔法は使える様にはなったが、どれもステータスの確認だとか、実質、携帯電話の代わりである通信魔法コンスポンデンスはあまり魔法を使っている気がしない。

 ……不可思議魔法ワンダードリームに限っては、何が起こるかわからないから、とても使えるものではないし……。


「コウ様なら大丈夫ですよ……。精霊魔法は、精霊に援助を願う魔法ですので、精霊との相性が悪ければ使えないのですけれど……、幸い、コウ様に興味を持っている子もいるみたいですし……」


 興味を持っている?僕に?

 疑問に思う僕に、微笑みを湛えながら再び窓を開けるシェリル。そして……、


「コウ様、わたくしのところに、ある精霊が来ているのですが……、お分かりになりますか?」

「シェリルのところに……?」


 その言葉に、彼女を凝視すると、なんとなく、シェリルの手元に生き物というには儚い、でも何らかの気配がするような……。


「……どうやら知覚されたようですね。さぁ……精霊がそちらに参りますよ……」


 シェリルが両手を僕の方に差し出すようにするのと同時に、先程の気配が僕の方に近づいてくるのを感じる。そして、その存在は……、


(……何だろう、僕を、探っている……?)


 自分の前に来た気配……、恐らく精霊であろうその存在は、僕に接近しては離れたりを繰り返している。


「君が……精霊なの……?」


 僕が呟きながら手を前に差し出すと、それに反応するように、精霊が一層強い気配を放ちながらその手に集まり、


(……ぼくのこと、わかる……?)

「!?い、今、声が……!?」


 今のは……精霊の声!?

 僕はさらに集中すると、さらに気配が濃くなり……、精霊の輪郭のようなものが見えてくる。


(ぼくは……かぜ……きみ、は……)

「……僕に、話しかけてくれているのか……?」


 途切れ途切れ聞こえる声……。僕はそれを聞き取ろうと耳をこらすも、


(もっと、精神を集中させるんだ……、僕に問い掛けてくる……精霊を……!)


 確かに語り掛けてくる精霊の声をよりはっきりさせる為、僕は精霊の存在を受け入れ、心を開く……!すると……、


(ぼくはシルフ……。ぼくのこえ、きこえる……?)

(……うん、聞こえるよ……。さっきよりも、はっきりと……)


 僕がそう答えると、精霊のどこか嬉しそうな気配を感じた。


(にんげんで、ぼくたちのこえをかんじてくれるのは、めずらしいよ……。かのじょにおねがいして、きみのことをすこしおしえてもらったよ……。きみは……ぼくになにをのぞむ……?)


 精霊の問い掛けに、僕は暫し考え……答える。


(僕は……君の事が知りたい……。シルフの事を、教えてくれるかい?君が知りたい事にも、出来る限り答えるから……)

(そうか、うれしいな……。きみのこと、かんさつさせてもらうよ……。ぼくも、きみがよびかけてくれたらこたえるから……いつでもよんでね……!)


 僕の言葉に、シルフは喜んでくれたようだった……。その言葉のとおり、シルフが僕を見守ってくれているような感覚を覚える。


「……シルフに気に入られたようですね、おめでとう御座います、コウ様……」

「君のおかげだ、シェリル……。君がシルフに話を通してくれたから、僕は精霊を感じる事が出来た……」


 シルフとの契約を感じ取った彼女の祝辞に、僕はお礼を述べると、


「今、コウ様の近くにシルフがおりますから……、このまま、古代魔法もお試しになられますか?」

「古代魔法も?それってどういう……」


 意味かと問おうとした時、シェリルは小声で何かを唱えると、彼女の周りに風が集結していくのがわかった。


「……はじめて古代魔法を使用される際は、傍にある確かな気配に触れた方が理解しやすいのです……。古代魔法はその名の通り、このファーレルではるか昔に栄えていた古代文明の遺物を現代に伝えた魔法……。既に言霊も確立された魔法ではありますが、その原理を理解するのが困難ですので……、まずは、わかりやすい風の気配に身を委ねて下さい。シルフのお陰で部屋内にも風の気配が集まっておりますから……」


 彼女の言に従い、僕は風の気配を辿る……。確かに……感じる……。近くにいるシルフの気配……、そして、精霊がもたらす風を……。


「そうです……、そしてその風をひとつに集めるイメージを……。わたくしのように、魔力素粒子マナでもって風を集結させて、一陣の刃とする想像を働かせて下さい……。シルフと契約なされたコウ様なら出来るはずです。そのようにして完成された魔法を……わたくしにぶつけて下さい」

「シェリルに……!?そ、そんな事……」

「わたくしなら大丈夫ですから……。まずは、先程のとおり、イメージされて下さいませ」


 笑顔でそう言われたら、信じるしかない……。シェリルも何か考えがあるのだろうと、僕は彼女の言った通り、想像力を働かせる……。


(風の……刃か……。鎌鼬かまいたちのようなものかな……?はは……なんか、子供の頃に空想した必殺技みたいだ……)


 それを実際に自らの手で起こす事に、知らず知らずの内に興奮しているのかもしれない。さらに集中して自分の持つMP、魔法力でもって魔力素粒子マナに働きかけようとした際に、


「……万物の根源たる魔力素粒子マナよ……、我が言霊に応えよ……」


 自身の脳裏にその言葉が浮かび、自然と声に出していた事に気付く。もしかして……これが、『言霊ことだま』なのか……?

 その言霊を発した次の瞬間、ごそっと精神力が削られる感覚に陥る。同時に、いつの間にかシェリルへ向けた右の掌に、風が集まって凝縮されたエネルギーを感じていた……。


(くっ……、でもこれで……、僕のMPが、魔力素粒子マナに干渉して風を一つに集めたのか……)


 そして、次々と浮かんでくる言霊……。魔法を使う為に必要であろうソレを、僕は復唱する。


「自由なりし風よ、我が刃となり、幾重にも張り巡らせて、全てを切り裂け……!『風刃魔法ウインドブレイド』!!」


 最後の詠唱を口にして完成された、僕の放つ、生まれてはじめての攻撃魔法……!それがシェリルへと向かっていき……、


「……全てを切り裂け、『風刃魔法ウインドブレイド』」


 一瞬遅れてシェリルの魔法も発現し、僕の風の刃と重なり合い、互いを喰らうように交わり続け……、やがて消滅する。


「今のが、風の系統の初級古代魔法……、『風刃魔法ウインドブレイド』です。如何でしょうか、コウ様。古代魔法の使用する感覚を、ご理解頂けましたでしょうか……?」

「ああ……、わかったよ。それにしても……、まさか、あのようなかたちで魔法を相殺するなんて……」


 驚いている僕に、微笑みを浮かべながら彼女は、


「コウ様の魔力に合わせて、同じ魔法を使用致しました。威力が同じであれば、同系統の魔法で相殺する事が出来ます。勿論、属性毎に相性もありますし……、魔力の大小によっては威力に飲まれたり、逆に押し包む事もありますけど……」


 何でもないように説明するシェリルだが、やっている事は普通ではない……。あの一瞬で、僕の魔力を見定め、同じ威力の風刃魔法ウインドブレイドを発動させたのだ。


 ……やっぱり、彼女はただのお姫様じゃない……。少なくとも、魔法に関しては、精霊魔法、古代魔法、生活魔法に加え……、神の奇跡たる神聖魔法まで扱う事が出来る……。さらにはこのように、彼女の教えに従い、精霊魔法、古代魔法と覚えてしまったけれど……、これって実は相当凄い事なのでは……?


「コツさえ掴めれば、他の系統の魔法も使用できるようになると思います。ですが……、コウ様も大分、魔法力を消耗されたと思いますから……、今日はもうお休みになりませんか?」


 そう提案してくるシェリル。確かに大賢者の館にて、何度もMP枯渇の苦しみを味わい、今もこうして、立て続けに精神を集中させたから、とても身体が消耗している感じは見受けられる……。


「……有難う、シェリル。だけど、何か今……とてもいい感じなんだ……。ちょっとこのまま僕が使用したい魔法の習得を目指したいのだけど……、独創魔法ってどうやって覚えるものなのかわかるかな?」

「独創魔法、ですか……。基本的には古代魔法を覚える感覚と、そう変わらないかとは思います。ただ……当然の事ながら、『魔法大全』にも確立されていない魔法ですので……、一から魔法を編み出す事になります」


 ですから易々と覚えられるものでは……、と控えめながらに話すシェリル。だけど、古代魔法を使用するイメージはわかった。後は……僕の知識や体験で、それを実用化のレベルに持っていくだけだ。


「わかった……、ちょっと試してみて……駄目そうなら明日にする。シェリルは先に休んでいていいよ」

「……そういう訳には参りませんが……、わかりました。控えておりますから、何かあればお申し付け下さい……」


 少し言いたい事があったようだけど、そう言って彼女は引き下がってくれる。僕の意思を汲んでくれたシェリルにお礼を言いつつも、僕は重力の事について思いを馳せる……。


(……といっても、僕だって重力が何なのかって言われても詳しく説明なんて出来ないぞ……。ニュートンの法則やら、万有引力の法則という名前だけは聞いた事があっても、その原理までは流石に……)


 一概に重力魔法を使いたいといって覚えられる訳がない……。学生の時に習った事を引っ張り出そうとも……、そもそも僕の専攻でもなかったし、自分の頭では専門外の物理の原理まで理解出来る筈もない……。


(それに重力には時間の概念もあったような……。確か、重力が強いほど時間が遅くなるとか何とか……。という事は、僕がこの世界にいたとしても、向こうの時間ではあまり経過していないという事になるのか……?)


 いや……駄目だ……。難しく考えれば考える程、訳がわからなくなる……。クソッ……やっぱり無理か……?僕はただ、自分が地球にいた頃と同じ重力に調整したいだけなのに……!


「ん……?そうか……それなら別に難しく考える事もないのか……?」


 そこまで考えて、ふとある事に気付き、僕は元の世界にいた頃の感覚を思い出そうとする……。今のような妙に浮遊感のある感覚ではなく……、つい先日まで、自分が生活していた時の感覚を……。それこそが、自分の体感していた重力そのものなのだから……!


「……広大なる大地よ、我が言霊を聞き届け給え……」


 自分が地球にいた頃の感覚に戻すだけ……。そう考えを切り替えただけで、不思議と頭もすっきりし、先程の古代魔法を使用した時のように、自然と言霊が口に衝いて出る……。


「此の地に宿りし引き合う力、その強弱を知れ……!『重力魔法グラヴィティ』!!」


 こうして魔法は完成し……、すぐに部屋内に変化が訪れる。この感覚……、間違いない、元の世界に、地球にいた頃と同じ感覚だ……!

 成功したんだ!そう喜んでいたのも束の間……、


「コ……コウ、さま……っ」

「ッ!し、しまった、シェリル!!」


 重力魔法の習得に夢中になる余り、僕の様子を見守ってくれていたシェリルの事を失念してしまっていた……!慌てて辛そうなシェリルに駆け寄り、『重力魔法グラヴィティ』の解除方法を探す。


(どうやって解除すれば……。僕が送り続けている魔力素粒子マナへの干渉を止めればいいのか……?)


 果たしてその考えは正しかったようで、漸く重力がこのファーレル元々のものに戻る。肩で息をしているシェリルを労わりつつ、


「ごめん、シェリル……。大丈夫?」

「え、ええ……、ですがコウ様、今のは……」


 まだ少し苦しそうな様子だったが、次第に落ち着きを取り戻してくるシェリルに僕は伝える。


「あれが……今まで僕がいた世界と同じ重力なんだ。このファーレルではその重力が弱くてね……。今まで妙に浮遊感があったんだ。それを調整したくて今の重力魔法を使えるようになりたかったんだけど……」


 元の世界に戻った時、此方の重力に慣れてしまって普通の生活に戻るのも辛くなってしまう。そんな事にならない為にも、どうしても使えるようになっておきたかった魔法でもあった訳だが、


「重……力……?」

「此方の世界では重力の概念はないのかな……?このファーレル自体がもたらす引力というか……。でも、次元とか時間、空間の知識は僕のいた世界よりも進んでいそうだったから、その概念がないというのは意外なんだけど……」


 そこが元の世界との知識のずれ、なのかもしれない。もしかしたら、星とか引力とかの概念も薄いのかな……?だけど、星銀貨という風に使われてはいるようだし、全く未知の分野という訳ではないと思うけど……。


「ですが……、無事に完成なされたのですね……。コウ様だけの魔法……、独創魔法を……」

「ん……そうなのかな……。でも、これで正式に『魔法大全』に加える事が出来るんでしょ?コツさえ掴めば、シェリルでも使えそうな気がするけど……」


 そう話す僕に、シェリルは静かに首を横に振る。


「『魔法大全』に記載されるといっても、それはあくまで独創魔法として、です。古代文明にも存在しなかった魔法が独創魔法なのですから……、恐らく、わたくしではコウ様の魔法を使用する事は出来ないと思います……」

「そうなんだ……。でも、かなり精神力が削られたな……」


 今日、何度こんな状態に陥ったのかわからないけど、その経験から恐らく自分のMP、魔法力が尽きかけているのだろう……。僕はシェリルの容態が落ち着いたのを確認し、立ち上がるやいなや、小声で先程の魔法を詠唱する。


「コ、コウ様……?まさか……!」

「……『重力魔法グラヴィティ』」


 今度の重力魔法グラヴィティは部屋全体では無く、自分のみを対象としてかける。すぐに効力が発動し、先程よりも少し強い重力が掛かるのを確認するも、MPが切れたのか、とても立っていられなくなる……。


「コウ様ッ!!」

「うぅ……魔法力が、尽きたのかな……」


 重力魔法グラヴィティの効果はかかり続けてはいるものの、完全にMPが枯渇したらしい……。咄嗟にシェリルが僕を支えてくれるものの、魔法で普段より重くなっている僕を支え続けるのは辛いはずだ。そんな僕を支えつつ、彼女は何かの魔法を詠唱してゆき……、


「……我が魔法の力を分け与えん……『魔力譲渡魔法マジックギフト』!」


 すぐさま彼女の魔法が発動し、その効力なのか、先程までも倦怠感が少しずつ薄れていく……。漸く自分の足で立てるようになり、支え続けてくれたシェリルに礼を言う。


「……今日は何度もシェリルに迷惑を掛けてしまっているね……。今のは、君が……?」

「……魔法力を他者へ譲渡する魔法です。……コウ様、あの状態で新たに魔法を使われるのは余りに無茶が過ぎます……」


 叱責、とまではいかないけれど、彼女の静かな抗議に、僕はごめんと素直に謝る。……今日だけで何度、彼女に助けて貰った事か……。正直ぐうの音も出ない……。


「……本当にごめん。でも、シェリルには悪いけれど……、ある程度魔法力が高まってくるまでは、今のような事を続けるかもしれない……」


 この世界での魔法力の重要性はわかった。あのMPが切れた時の感覚は未だ慣れるものではないけれど……。それでも今日1日でMPの最大値が「49」まで上がったのを確認する。

 携帯電話の充電のように、完全に無くなった状態から一気に回復させた方が、魔法力を伸ばせるというのは、今日学んだ大切な事のひとつだ。


「……仕方ありませんね。少し自重して頂けると助かるのですけれど……」


 苦笑しつつ肯定してくれるシェリルに感謝しながらも、僕は確かな達成感を感じていた。今日も色々あったけれど……、無駄な一日ではない。元の世界に戻る為の一歩を、確実に進んでいる……、僕はそう思う事にした。

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