平凡な僕にはとてもじゃないが世界なんて救えないので勇者を辞退させてくれませんか
@miolz7
第1話
なんてことの無い日常
なんてことの無い生活
なんてことの無い人生
なんてことの無い自分
つまらない。つまらない。
曲がり角を曲がったって誰ともぶつからないし
野良猫のあとをついて行ってみても
不思議な世界なんて行けないし
こうやって何も無く日々を過ごして
何も無く歳をとる。
そう思っていた。今日までは
...................
なーんて事を考えたって
やっぱり何にもない。
だってそうだろ?
ここは日本で、僕は平々凡々な高校生。
何が起こる?何も起こるわけがない。
今日も今日とて地下鉄に揺られて
学校へ向かうんだ。
「HR始めるぞー」
ガヤガヤとしていた教室に先生の声が響く。
(ちなみに今年の春から担任になった川西先生。濃くもなく薄くもない顔とキャラ。生徒の人気は可もなく不可もなく。つまり普通。)
「秋山は卓球な」
唐突に声をかけられ顔を上げると
クラスメイトの影山がニヤついた顔で見下ろしていた。
「卓球?」
僕が聞き返すとニヤついた顔が更にニヤついて
「球 技 大 会 !!」
とわざとらしく大きな声でそう言った。
「なに、お前寝てたの?どっか違う世界行ってた?大丈夫?まあいいや、とりあえず卓球だから」
捲し立てるように早口で喋ると影山はさっさと黒板の前に立ち気が付くと端から端までびっしりと球技大会の種目と参加者が書かれていた。
「.......あれ?」
ぼーっとしていた。確かにぼーっとしていたけど。時計を見れば川西先生が「HR始めるぞー」と言ってから約30分経っていた。
教室は陽キャ達がギャイギャイと騒いでる。
とてもじゃないが物思いにふけられる空気でも、寝落ちできる雰囲気でもない。
30分間僕は何をしていた?
「まさか....ね」
よっぽどボーッとしていたんだろう。
タイムスリップ?タイムリープ?
そんな言葉達が
一瞬でも頭をよぎったことに
厨二病かよ。と静かに脳内で突っ込んでおいた。
...................
この時
机の端に描かれたアレに気が付いていれば
何か変わっていたんだろうか
どうしようもない後悔が
胸を、突く
...................
あの後は
普通に授業を受け、休み時間を過ごし
帰宅部の僕は全校生徒中2番目に校門をくぐるという帰宅部大会があれば今すぐにでも人気者になれるであろう早さで帰宅した。
いつもの僕の日常。
だからHR中30分意識を飛ばしてた事なんて忘れてたんだ。
今、この瞬間まで。
「は??」
目にも止まらぬ早さで帰宅したあと
僕は部屋に籠りスマホを眺めていた。
うちは母子家庭で母さんは看護師をしている。
「夜勤出れる人が少ないのよー」と
お人好しの母さんはしょっちゅう夜勤をしている。
今日も確か夜勤だと言っていた。
夜勤の日は
帰宅して直ぐに母さんが居間から
「ご飯できてるよー」と声を掛けてきて
早めに2人で夕飯を食べ、母さんは仕事へ行くのが習慣になっている。
ただ今日はその声がない。
夜勤行かなくなったのか?
確認しようと僕はスマホを置き、部屋のドアをあけた。
「.......は?」
この2度目の「は?」の時
恥ずかしながら僕はちびりかけた。
だってしょうがないじゃないか
決して広くはない2LDKの我が家
僕の部屋を開けるとすぐに目の前にはトイレのドアがあり、左は壁。右に居間へ続く短い廊下がある、はずなのに。
草、雲、太陽。
外だ。それも、森?
「なんで、なにこれ?え?」
ああ、もう白状しよう
僕は今度こそちびった。
平凡な僕にはとてもじゃないが世界なんて救えないので勇者を辞退させてくれませんか @miolz7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。平凡な僕にはとてもじゃないが世界なんて救えないので勇者を辞退させてくれませんかの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます