第3話 魔力測定を行います。
講義室のある校舎を出発し草木が生い茂る庭園を抜け、階段を上ると芝生が敷き詰められた広場に到着した。
かなり広く、貴族の屋敷一軒分は優にありそうだ。
広場には数個の白い箱が浮いている。それらは、私の腰ほどの位置にふわふわと空中に留まり揺れていた。
「では、それぞれ六人ほどのグループになって下さい。皆さんの人数からすると、五グループほどになりますね。グループ内でそれぞれ記録をお願いします。魔力量と、
ソイン教授がそう言うと、みんなそれぞれが微妙な距離感でグループを作り始めた。
私は、とりあえずカリカに声を掛けてみようかなと思っていると、彼女が駆け寄ってくる。
「ロッセーラ様、もしよければ……同じグループに入れて下さい」
「もちろん、よろしくね、カリカ」
「はい!」
どことなくほっとした顔つきで彼女が笑う。私もつられて笑いかけると、他にも声を掛けてくる者がいた。
「ロッセ、よろしく」
「ロッセーラ、一緒だな」
王子二人が、さも当たり前だと言わんばかりに近づいてきた。カリカと違い、彼らからは有無を言わせない気迫を感じる。さっきからこの四人で行動しているわけで……微妙に目立っているのが気になる。
「よろしくね。レナート、ヴァレリオ」
「ああ、よろしく。カリカといい、見知った友がいると和むな」
ヴァレリオはそう言って、カリカの方を見た。
うう……さっそく惹かれ始めているのだろうか……。要注意だ。
もし婚約破棄を口に出されたら、即了承しよう。もうこうなったら二人がくっつくようにした方が良いのだろうか?
そんなこんなで私を含め四名はすぐ決まった。あと二人必要なわけだけど、この集団に他のクラスメート達は入りづらそうにしている。
確かに王子様が二人もいたら、そりゃあ入りづらいだろう。
でも、よく考えたらレナートはまだ婚約相手もいないし、我こそはって人が現れてもおかしくない。男子生徒も親交を持ちたいと考える者がいてもよさそうだけど……。
そういう生徒がいないかきょろきょろしていると、男女一人づつ近づいてきた。男子の方に目をやると、彼の身につけている制服は平民向けのものだった。
「あの、ロッセーラ……様ですよね?」
「はい」
「ああやはり……アロエの令嬢様」
なっ。こんな所で、微妙な二つ名を……。
「そ、それは皆の前ではあんまり……」
「し、失礼しました。ロッセーラ様、お許し下さい。眠り病の件で、私は一命を取り留めました。原因がわからなければ今頃どうなっていたか……とてもロッセーラ様に感謝しております」
そうか……彼はきっと、王家の活動により救われたのだろう。
「私は何もしていないわ。レナートに感謝をした方がいいんじゃないかしら?」
「既にレナート殿下にはご挨拶をさせていただきました。ロッセーラ様にも、と思いまして……」
その男子生徒の傍らには、可愛らしい女子生徒がいる。その少女は私と同じ貴族向けの制服を身につけていた。栗色の髪の毛を、二つに束ねている。
どことなく見覚えがあるのは、誕生日パーティで出会っていたからだ。
次に、その女子生徒が口を開く。
「ロッセーラ様、今日再びお目にかかれて、とても嬉しく思っております。もしよければ、同じグループにしていただけたら」
「俺も、もしよければグループに入れていただけないでしょうか?」
特に断る理由もないので、OKだと伝えた。
それにしても……二人の関係が気になる。ただの友達と言うには距離も近いし、二人は恋人同士なのだろうか? だとしたら恋愛の経験が私より豊富だろうし……いろいろ聞いてみたい。
それに身分違いの恋なんて、とても尊いのではないだろうか?
こうして私は、レナート、ヴァレリオ、カリカ、そして初対面の学生二人と同じグループになったのだった。
辺りを見渡すと、他のクラスメート達もグループを作りつつあった。アリシアを探すと……貴族だけのグループにいる。
「平民が混ざったグループに負けることはありませんことよ」
なんだか周囲のグループに喧嘩を売っているようだけど、あまり相手にされていないようだ。
今日は単なる計測なのだから、勝ち負けなんかないはずなんだけど……。
あれ? ヴァレリオがなんだかそわそわしているような気がする。
アリシアの方をちらちらと見ているけど……なんだろう? どちらかというと警戒色を発しているようにも見える。
後で聞いてみよう……。
「では、この
ソイン教授が私達に告げる。
なるほど、まずは魔力強度の測定のようだ。
「その次に職階級の計測です。各自、好きな魔法をホワイトボックスに向かって使用して下さい。接触型魔法は直接ホワイトボックスに触れて魔法を発動してください。空間型、投射型魔法は離れたところから魔法を向け打ち出して下さい。同じ魔法でも、職階級により魔法の発動方法が変化します。ホワイトボックスはそれを読み取り、職階級を色で教えてくれます」
細かい言葉はともかく、触れたり魔法をホワイトボックスに向けて放てばいいようだ。ふむふむ……と思ったけど、次のソイン教授の言葉に私は戦慄した。
「色によって魔術師、妖術師、招喚師、神官などの職階級の判定が行われます。非常に珍しいものとして『
え? 魔王? ちょっと待って。
「あのー、魔王って表示されたらどうなるんですか?」
「もちろん、すぐに騎士を呼び引き渡します」
「えっ……」
「大丈夫、何年も同じ方法で判定していますが、黒色なんて見たことがありませんよ」
生徒の一人が質問すると、さも当然のようにソイン教授が答えた。これってとってもマズイような……。
「ねえ、ちょっと……」
私はどうしようか相談しようと、レナートの服の袖をひっぱった。
こんなところに、処刑へつながる口がぽっかりと開いていようとは……。
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