13人のゆりあ〜僕と彼女と秘密のログ〜

志摩しいま

プロローグ

プロローグ

 一人の女がベッドの中で眠りについている。

 

 枕元の端末からピコンと音が鳴り、女の目の前に空中ディスプレイが開かれた。


”今日はバタバタしててごめんよー。明日埋め合わせするから許してねん! オススメの取り寄せグルメ持ってくよー”


「んっ」


 明かりが眩しかったのか、女は目を閉じたまま体の向きを変えた。

 同時にディスプレイが閉じる。


 空間はまた暗闇に戻った。


 ガサッ


 微かに音がした。


 女は気にも留めなかったが、この時例え目を覚ましていたとしても、女の運命は何も変わりはしなかっただろう。


 女の身体に黒い物体が覆いかぶさった。

 そして、その首に手を回しーー


 ゴキ……


 女の人生は一瞬にして終わりを告げた。


 黒い物体は女の耳に光るピアスを引きちぎった。

 耳がさけ、血がシーツを染める。

 

 女は24歳だった。

 名前を谷柚莉愛という。

 地元の短大を卒業後、システム管理の会社に就職、休みの日は趣味のドール作りに励むという、ごく普通の一般市民だった。ぽっちゃりぎみの体系で、友達は多かった。

 明日は、都合が悪く会えなかった中学時代の友達と東京駅で待ち合わせをして、友人のハマっている取り寄せグルメから、特にお勧めの一品を恵んでもらうはずだった。

 だが、明日から当然のように始まるはずだった1日は、当然のようには来なかった。


 9月22日未明。

 この日、首都東京に住む6歳から68歳までの女性13人が殺された。

 彼女たちはみな、同じ名前であった。

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