彼ら彼女らは主人公!!

永健

第1話 山田春人と高冬真友の終わりと始まり



20〆〆年 3月12日


山田春人


この日、俺と真友の当たり前は終わりを迎えた。


3月12日、俺と真友は中学校の卒業旅行で北海道に訪れていた。

まず最初に、俺と真友の関係を説明しよう。

俺、山田春人と高冬真友は家が隣同士で家族同士も仲がいい。

そして、生まれた時からずっと一緒にいる幼馴染だ。

これまで、何をするにも行動を共にしてきた。

なのでもちろん、卒業旅行の班も同じだ。

そんな俺と真友は担任の先生に呼び出されていた。先生はすごく深刻な顔をしている。


「なあ春人、オレたち何かやらかしたか?」


真友が小声できいてくる。


「いや、何もしてないと思うけど」


「だったらあんな神妙な顔するか普通?もしかして、オレがゲーム持ってきたのバレたか?」


「いや、ゲーム持ってきてる人いっぱいいるし、バレても大丈夫でしょ」


実は俺も持ってきてるし。


「じゃあなんなんだよー」


真友が頭を悩ましたその時。

「あー、お前たち、よく聞いてくれ。単刀直入に言うぞ。」


と、先生が突然話を切り出してきた。


「お前たちの家族についてなんだが」


家族?ああそうだ、そういえば、俺と真友の家族は俺たちが卒業旅行に行くからと言う理由で自分たちも旅行に行くとか言い出したんだった。

確か行き先は正反対の沖縄だったっけ。

だけど、家族がどうかしたのだろうか。


「お前たちの家族は沖縄に行こうとしていたな?その沖縄行きの飛行機が…墜落した。」


「「え?………」」


この言葉を聞かされた時、俺と真友は何を思ったのか、どんな顔をしていたのかまるで覚えていない。


3月21日

飛行機が墜落。

そんなことがおきて、命が助かる可能性なんてすごく低い。

だから、俺たちの家族の命が助からないのは必然だった。


あの言葉を聞いてから、真っ先に地元、東京に帰ってきて、9日が経った。

とりあえず、警察に少しお世話になってから、俺たちは2人で家で過ごしている。

先生や警察が少しの間なら世話をしてくれるといってくれたが、俺たちは断った。

今は2人だけで心の整理がしたいと思ったから。

ついさっき、家族の葬儀を行ってきた。

当然、俺たちは泣きじゃくった。

たくさんの方がきてくれた。

泣いてくれてる人もいた。

そして、俺たちにこれからどうするの?という顔を向けたり、声をかけてくれた人もいた。

そう、これだ。

これからどうするか、これが最大の問題だ。

俺たちはあと1カ月で高校生になる。

行く高校も決まっていた。

しかし、俺たち2人だけで生活できるのか?家事は俺が人並みにはできると自負しているし、あとのことは真友に任せたりで、ある程度はできるかもしれない。

けれど、不安がありすぎる。

なのでこれからどうするか、今から真友と話し合おうとしていた。


「なあ春人、やっぱり誰かの世話になるしかないって」


真友が切り出してきた。


「うん、そうだね。それが一番いいと俺も思う。けど…」


「けど?」


「お世話になれる知り合いいる?」


「探せばいるんじゃね?」


「いや、そんなに軽いものじゃないでしょ。お金もたくさんいるし。何より、ほとんど、新しい家族の一員になるようなものじゃん。だから、簡単に承諾してくれる人なんて、早々いないと思う。」


「まあ、普通に考えたらそうだよな。」


「だから、俺たちからお世話になっていいですか?なんて聞くのは図々しいと思う」


「じゃあ何もせずに待ってるだけになるのか?」


「俺もそれは嫌だけど、仕方ないと割り切るしかない」


「あー、これがアニメやラノベだったら、すぐに見つかるんだけどなぁ」


そんなことを言えるなら、案外堪えてないのか?と思ってしまいそうになったが、違う。

もう15年も一緒にいるんだ、それくらいわかる。

ここは俺も乗ってあげようと思う。


「はは、真友はすぐアニメとかに例えたりするよな」


「当たり前だろ、そうやって考えて生きてる方がオレは楽しいんだからな!」


「いいな、俺はそんな趣味?みたいなのがこれといってないから羨ましいよ」


「別に趣味ってわけじゃないさ。それにまだ15だぜ?お前の趣味は高校で見つければいいさ。って言いたいところだけど、その高校が今問題なんだよなあ」


この日は答えが出ないまま、眠りについた。


3月22日


昼ごはんのカップラーメンを食べたあと、俺と真友は今日も今日とて、今後について考えていた。


「もう一回確認するが、入学が決まってた東京の高校には行けないんだよな?」


「ああ、お金と生活の問題でな。2人バイトすればいけるかもしれないけど、それは15の俺たちには少しばかりきついかな」


「どうすんだ!?高校も行けなきゃ将来もやべーじゃんか!」


「こればっかりは、割り切るしかない。俺たちの事情を考慮してくれる会社、もしくは学校を探すしかないかな」


しかし、探すといっても本当にどうすればいいかが検討もつかない。

こうゆう場合、どこかに頼れば探してくれるのだろうか。例えば警察とか。

ネットで調べもしてみたが、いまいちピンとこない。

ピンポン、と、その時インターフォンが鳴った。


「ん?誰だ?もしかして、オレらの将来見つかったんじゃね!?」


「とりあえず出てくるね」


真友みたいには考えることが俺にはできないけど、期待はしてみる。

玄関のドアを開けると、美人な女性が現れた。


「こんにちは。お久しぶりね。あなたは春人くんかな?私のことは覚えてる…わけないね」


お久しぶり?以前に会ったことがあるのだろうか、記憶にはない


「えっと、申し訳ございません。どちら様でしょうか?」


「私は、あなたと真友くんのお母様の知人の出合理香といいます。あなたたちとは、小さいころに何度か会ったことがあるわ。といっても本当に小さいころだから覚えてないのは当然でしょうけど」


俺たちの母さんの知人?そんな人がなんの用事だろう。


「えっと、出合理香さん?俺たちに何か御用でしょうか」


聞いてみて思い出した。

この人は母さんたちの葬儀に来ていた気がする。


「ここにきたのはね、大事な用があるからよ」


「大事な用…ですか?」


「ええ。あなたたち、これからどうするか決めているの?」


その話題を出された時、俺は心の中でもしかしたらと思った


「いえ、真友と考えはしていますが、具体的にはまだ決められていません」


「そう。なら提案なんだけど、ウチにこない?」


俺はその言葉を理解するのに時間がかかった。

だって、そんな都合のいいこと起こるだろうか?それこそ、真友が言うように、アニメやラノベみたいな展開が。


「え?ウチって、出合さんの家ですか?」


聞いてみて、それしかないだろ、と自分にツッコミたくなった。


「ええ、そう。私の家。というより、私たちの壮に」


「壮って、○○壮とか名前がついてるあの壮ですか?」


「ええ、私たちが所有しているの。あなたたちのお母様にはお世話になったから、どうかしら?」


こんなの考えるまでも、真友と相談する必要もない。答えは一つだ。


「ありがとうございます。よろしくお願いします。このご恩は一生をかけてお返しします」



こうして、俺たちの新たな始まりが訪れた。



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