オリヴィアさん

『……これで、モニターはついているのかしらァ? 難しいわね』


 あわてて明かりのついたモニターのところへ駆け寄る。確かこのモニターは、ギルドメンバーそれぞれに繋がっていたはず。


 モニターに映し出されていたのは、きれいな女性だった。


『ま、いいかしらァ? そのうち誰か、気づいてくれるでしょう』


 今度は、モニターにたくさんのハートスタンプが表示される。


『あらららァ? 大量のスタンプが表示されたわァ。何かアタシ、いじっちゃったのかもしれないわねェ』


 のんびりした声。この人なら、手伝ってくれるかも。そう思って、モニターの目の前に走り出る。


「あのっ、あのっ」


 声をかけると、きれいなお姉さんの視線が、私の方に向いた。あれ、この人……。


『あらァ? 初めましてよねェ。アナタが、新しいギルドマスターさんかしらァ?』

「あ、はい。臨時ギルドマスターになりました、サランです。初めまして」


 そうあいさつをすると、お姉さんは目を細めて笑った。


『初めましてェ、サランちゃん。アタシ、オリヴィアって言うの。よろしくねェ』

「オリヴィアさん、初めまして。これからよろしくお願いします」


 思わず会釈する。すると、お姉さん……――、オリヴィアさんはふふっと笑った。

『新しいギルドマスターさんは、初々しくていいわねェ。前のギルドマスターとサブギルドマスターは、平和だけど刺激が足りなかったっていうかァ』

『……聞こえてるぞ、オリヴィア』


 シュウさんが声を上げる。


『あらァ? サブギルドマスターの声が聞こえたようだけど……気のせいよねェ』

『……残念だな、気のせいじゃない』


 シュウさんが冷たい声で言う。


「サブギルドマスターのシュウさんとは、通話状態にあるんです」


 私がそうオリヴィアさんに伝えると、オリヴィアさんは目を大きく見開いた。


『あら、そんな素敵なアイテムがあるの。いいわねぇ』

『そんなことよりオリヴィア、手伝え』


 シュウさんが、オリヴィアさんに言うと、オリヴィアさんは顔をしかめる。


『えー、アタシ、戦闘向きじゃないしィ、役に立たないと思うけどォ』

『……バカなことを。お前を戦闘向きと言わずに、誰を戦闘向きというんだ』

『……シュウちゃんひどい』


 シュウちゃん。なんかかわいい呼び方。


『……見た目に惑わされるなよ。そいつは、戦闘のスペシャリストだ。なよなよしていると見せかけて、本来は戦闘狂と言っても過言じゃない』


 シュウさんの言葉は少し信じられない。だけど、戦闘に向いている人がいるのなら、ぜひ手伝ってもらわなきゃ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る