闘技場大好き、シュウカさん
「「闘技場総合順位10位以内!?」」
「チッチッチッ……、兄ちゃん、その情報、古いよ? 今のアタシの実力なら、総合順位、3位までなら余裕でいける。あーあ、ゲームだけやってればいい生活してみたいわぁ」
シュウカさんが鼻の上を得意そうにこする。
「3位以内に入れる実力なんですか」
『……まぁ、残念なことに、こいつが3位以内に入ることは、それこそ有給とかでその期間、休みにしないと無理だろうがな』
「その通りぃっ」
シュウカさんが元気よく言って、顔をしかめながら、私の方に向き直る。
「このゲームの闘技場って、システムがあまりよくないんですよね」
「システム?」
私、あんまりアプリゲームの闘技場、みたいなのをやってこなかった関係で、システムをよく分かってないんだよね。
『……サランさんは、あまり闘技場をやってこなかったタイプか?』
「はい」
『……簡単に言うと、このゲームの闘技場のランキングは、【討伐数】が総合順位に一番関係する』
「討伐数」
『ああ。……闘技場で行われる試合に一番多く参加し、一番多くモンスターおよび対戦相手に勝った人間が、ランキング上位に食い込める仕様だ』
「確かに、討伐数だけじゃなく、その個々の強さでポイントは異なるけど、結局のところ、肝心なポイントにそれほどの差がないから。たくさんゲームに費やす時間が設けられる人が上位に食い込みやすくなっちゃうんだよね」
シュウカさんが苦笑する。
「ま、アタシは別に、総合順位1位をとるために、闘技場やってるわけじゃないから、全然気にしないけどね。気にするとしたら」
ここで、シュウカさんは多分通話先にいるシュウさんに向けて一言。
「兄ちゃん、もっと強いモンスター投入するようにってお願いしといてよ。手ごたえなくて、ほんっと、つまんない」
『……自分で言え。そもそもお前も社員なんだ。その辺にあるご意見箱にでも突っ込んでおけ』
「ご意見箱あれば、とっくにやってますよーだ」
舌をこちらに向かってチロチロ出してくるシュウカさん。お兄さんであるシュウさんに向かってやってるって分かってるんだけど、可愛い。
『……とにかく、新しいダンジョンに向かえ。お前がまだ見たこともないモンスターの一匹や二匹、いるだろう。今まで出現したことのないダンジョンなんだからっ』
半ば投げやりな物言いをしているシュウさんの声もまた、初めて聞くものだから新鮮で。
ついつい、笑いがこみあげてしまった。ずんだ餅さんがシュウカさんを軽くにらむ。
「どうしてくれるんですか、サランさんが狂っちゃったでしょ」
ひとしきり、笑ってから私は言う。
「シュウさん、ナビゲートお願いします。さっそく、新しいダンジョンに向かいましょう」
閉じ込められて散々ではあるけど、私には知り合いがいる。そんな安心感が、私を包んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます