シュウさんの援護

『それなら、こちらで現在手配を進めている』


 シュウさんが柔らかな声で言う。


『現在ゲーム内にログインしている人間で、メールアドレス認証をしている人間、SNS認証を行っている人間など本人確認ができるもので認証しているプレイヤーの救済処置だ』

「一体、どういう処置なの、兄ちゃん」

『簡単に言えば、メール認証している人間は、メールアドレスから、SNS認証している人間は認証したSNSから自分が今、ゲーム内に閉じ込められているという事実を発信してくれるシステムだ。順次、プレイヤーは、発信の有無や、誰に向けて発信するかを選べる。これは、実装前のシステムだったが、今開発側が大急ぎで実装準備中だ。なんとか朝までには使える状態にしようと頑張っているはずだ』


 シュウさんの言葉で、少しだけほっとする。ナイトメア・ソフトウェアに勤めている社員さんなら、誰がゲームにログインして仕事をしている人か、ある程度目処がついてるから、ゲーム内に取り残されている人の目星もつく。


 だけど、ごく普通の会社員だったら、そうはいかない。休みの連絡を入れなければ無断欠勤になって、なんとか元の世界に戻れたとしてもそれを理由にクビになってしまうかもしれない。それに気づいた人がいたとしても現状、ゲーム内から現実世界へ連絡する方法がないんだよね。


「それじゃ、そっちは開発の人に任せるしかないですね。僕らは僕らで、なんとかログアウトする方法を探ることに全力を注ぎましょう」

『その通りだ。ゲームのシステムで必要なものがあれば、こちらが開発側に伝える。開発側に動きがあれば、すぐに伝えるようにもするから安心して行動してくれ』


 シュウさんは、本当に頼りになる。


『シュウカ、そういうわけだから俺はそっちに行けない。だから、俺の代わりにサランさんたちと協力して、ログアウトできそうな方法を探ってほしい。今、こちらが持っている情報で一つ、調べてほしいものもあるしな』

「調べてほしいこと」

『ああ。突如出現した、ダンジョンを調べてほしい』


 シュウさんの言葉に、シュウカさんが目を輝かせる。


「何それ、面白そう!」

『興味がわいてきたか?』

「うん。強いモンスター、きっといっぱいいるでしょっ」

『……それは知らない……』

「いや、きっといる! アタシを強くしてくれるモンスターがきっと!」


 ガッツポーズをしているシュウカさん。シュウさんがため息まじりの声を出す。


『……すまない、変な妹で。ただ、戦闘力に関しては保障する。このゲームでの闘技場、総合順位10位には入る実力者だ。その点は、安心してほしい』

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