どこかの世界の通信技術

『【どこかの世界の通信技術】。それは、ここではない、どこか別の世界で使用されている技術の賜物である。これを身に着けているものは、必要な人間に、自分が見ているものを共有でき、会話をすることができる』


 完成したものを見て、私は思わずにんまりする。


「顔、にやけてますよ」


 ずんだ餅さんが呆れた顔をしている。


「いいじゃないですか」

「思ったよりうまく行ったからですか」


 ずんだ餅さんの言葉に、私は頷く。


「ええ。後は、実用性を証明できるかどうかです」


 そう言いつつ、自分の頭の上にハテナマークが浮くのが感じられた。『必要な人間に、自分が見ているものを共有でき、会話をすることができる』


 文面で表されていると簡単に感じられるけど、必要な人間って、その場その場で違うと思うんだけど、どうやってその時、連絡を取りたい人を判別するんだろう。


 ふと、テレビコマーシャルが思い出される。端末に指示を出すと、端末がその人の指示通りに動くAIシステム。


 たとえば、『電気をつけて』と言えば、家の電気が勝手についたりする。あれと同じような画期的なシステムが、私の作ったアイテムに反映されているとは思えないけど……、ものは試しだ。


「シュウさんに連絡を取りたいです」


 片眼鏡と片耳イヤホンが合体したような『どこかの世界の通信技術』を身に着けて、そう口に出して言ってみる。


 すると、少しの沈黙の後、よくある、相手を呼び出す、

『トゥルルルル……』


 という音が何度か繰り返された。そして。


『はい』


 短い言葉が飛んできた。でもその短い言葉でも、誰が発したものなのか、声音で分かった。


「シュウさんっ! よかった、繋がった!!!」


 思わずガッツポーズ。もちろん、向こう側のシュウさんには見えないと思ったんだけど。


『……元気そうで何よりだ。そんなにこちらと繋がって嬉しかったのか』


 ガッツポーズまでして、という声をして、思わずげっという声を上げてしまう。


「え、見えてました……?」

『ああ、ばっちり映っていたぞ』


 シュウさんの声がわずかながらに笑っているのが分かる。


「そりゃ、嬉しいですよ。なんだか、安心するっていうか……」

『それはよかった。……とにかく、無事、なんだな』


 シュウさんの言葉に、頷く。


「はい。今のところ、ゲームの中に閉じ込められたということ以外、特に問題はありません」

『とにかくそちらが無事で、安心した。あとは、この事態にどう対処するべきか、考えていくことだけだな』


 シュウさんの言葉は続く。


『……今こちらが持っている情報を伝えるから、聞いてほしい』







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