ずんだ餅さんの特別スキル

「僕の特別スキルですが。サランさんのようなレアそうなスキルではありません」


 ずんだ餅さんは、小さく息づく。


「僕のスキルは、人事部に関連したものです。『スカウター』と言います」

「スカウター」


 ずんだ餅さんは、頷く。


「簡単に言うと、会社にとって必要な人材か、そうでないか。そして、その人の一番の長所と短所が、ステータスとして表示されるというスキルです。まぁあくまで、僕の視界に入った人しか、確認はできません。ですから、そんなに汎用性が高いスキルではないとも言えるかもしれません」

「でも、すごいスキルじゃないですか。まさに、人事部って感じのスキルですね」


 人事部、そしてこのゲーム世界で正社員雇用契約を結んでもよさそうな人材探しをすることを仕事としている、ずんだ餅さんにぴったりの職業だ。


「そうです。ただ僕は、職場の人間にもこのスキルの詳細は話していません」

「え、どうしてですか」


 ずんだ餅さんの言葉に、思わず聞き返す。すると、彼は苦い顔をした。


「……だって、そんなスキルがあるのならって仕事増やされそうじゃないですか」


 そう言われてみて納得する。確かに。だって、会社側が欲しいと思うスキルを持った人間が下手をしたら一目で分かるスキルだもんね。


「確かにそれなら、ゲーム世界を歩き回って、会社が必要としている人材を集めて来いって言われそうですもんね」

「そういうことです。ですから、今までは黙ってました」

「でも今回、ずんだ餅さんのスキルが役立つということですね。ずんだ餅さんが一緒にいてくれて、そしてずんだ餅さんが私に自分が持っているスキルを話してくれたこと、感謝します」


 ずんだ餅さんが協力してくれれば、こっちの世界で協力してもらえる人を効率的に探すことができるかもしれない。そうしたら、ゲーム世界からログアウトできる条件も、探しやすくなるはず。あ、そうだ。


「あの、一つ確認なんですが」

「なんでしょう」


 ずんだ餅さんが首をかしげる。


「ずんだ餅さんのこと、シュウさんに話してもよろしいでしょうか」

「シュウさん……、さっきサランさんの話に出てきた、あなたを正社員雇用するべく書類などを準備してくれた社員さんのことですね」

「はい」


 ずんだ餅さんは、少しだけ考え込みすぐに言ってくれた。


「……まぁ、状況が状況ですし、構いませんよ」

「よかったです」

「ただ一応、そのシュウさんという方にも、僕の存在や、僕があなたと行動を共にしていること、およびスキルに関しては他言しないようお伝え頂いた方がよろしいかとは思います。社員の誰かが、この件に関与していないとも限りませんし」

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