ただのヒモ(改)

 ええい、こうなったら。なんとか相手のステータスや、特別スキルを覗き見できるアイテムを作り出すしかない。


『少しだけ時間を稼いでください。その間にアイテムを作成します』


 シュウさんとアイダさんにチャットを送信する。すぐにシュウさんから返信が来る。


『こちらの存在はおそらく相手にばれている。遠距離攻撃がメインのこちらは、居場所がバレたら戦いづらい。長くは稼げない。そのつもりで頼む』


 そう、前回私があの男性と対峙した際に、シュウさんを巻き添えにしてしまっているから。だから男性もきっと私が来ていることに気づいた時点で、シュウさんもいるだろうことは予想できているはず。それに、シュウさんのメインジョブが、遠隔攻撃系であることも。


 アイテムボックスにあるアイテム一覧にさっと目を走らせる。これで行こう。


『特別スキルを使用します』


 とあるアイテムを引っ張りだした。それは、一本の長いひも。


『アイテム【ただのヒモ】を【ただのヒモ(改)】に変更します』


 これは、カンナさんが捨てといてって言ってた何かのアイテムの残り。捨てるのを忘れて、自分の手元に置きっぱなしにしてたんだ。よくあるんだよね。捨てるつもりだったのに、ポケットに入れたままにしてたりしてること。


 【ただのヒモ(改)】にすることで、元々のヒモより強度を上げる。そして、特別なスキルを付与する。


 その間にも、私とアイダさんの方へ男性は、歩を進めてくる。何度かシュウさんの援護があったけど、やはり男性にはお見通しだったみたいで。


 トラップ解除のアイテムですぐ脱出されてしまって、あまり時間稼ぎにはならない。でも、アイテムは完成したし問題ない。それに、ついさっき送られてきたシュウさんのチャットも気になる。


『脱出したいタイミングで合図をくれ。出口を見つけた』


 出口を見つけたって、いったいどういうことだろう。空中から私たちは連れてこられたけど、それ以外にどこかから逃げ出せる場所があるんだろうか。


「そんなヒモが一体何の役に立つんだか」

「私のスキルなら、何でも役に立つものに仕上がります」


 私はそう言って、強度と長さをより使いやすいように改良したヒモを、男性に向かって投げつけた。フニャフニャと男性の方へと飛んでいったヒモは突然、すごい速度で男性に巻き付いた。


 でもこのヒモは、拘束するために作ったものじゃない。だからすぐに男性から離れる。そして、私の手元へと戻ってきた。ただ、さっきと違ってヒモ全体が光っている。


『相手のステータス情報の読み取りが完了しました』


 

 

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