相手の登場

 内容のすり合わせがある程度終わったかなと思っていたところに、カンナさんがやってきた。


「アンタたちにお客さんだよ。入ってもらって構わないかい?」

「はい、お願いします」


 私の言葉にカンナさんは頷く。カンナさんが出て行ってからしばらくして、一人の女性が入ってきた。


 慌てて立ち上がって、尋ねる。


「アイダさんですか」

「はい、そうです」


 それを聞いて、とりあえず私は名乗った。


「ここでは初めまして、サランです。こちらは、シュウさんです」


 シュウさんも軽く会釈。トウノさんもまた、シュウさんと私に会釈してくれる。


「初めまして、アイダです。よろしくお願いします」

「お忙しい中、時間を割いて下さりありがとうございます」

「いえいえ。お気になさらず。この時間帯は既に、子どもも寝てますし」

「え、アイダさん、お子さんいらっしゃるんですか」


 私がびっくりしていると、アイダさんはあっと口を押える。明らかにしまったという顔をしていたけど、すぐに笑って言った。


「ええ、そうなんです」


 とりあえず、椅子をすすめる。私はシュウさんの隣に移動、アイダさんは私の向かい側に腰かけた。


「いつぐらいから、このゲームに?」

「発売日当日からですね。偶然、娘が私の名前で応募していたヘッドセットと、娘本人の名前で応募していたヘッドセット、二つ当選したものですから」

「ああ、お店ごとに一人の名前で一つしか応募できなかったですもんね。しかも、同じ名前で他のお店でも応募していたら、抽選から外されるって言われてましたし」

「そうなんですよ。娘は念には念をということで、それぞれ別のお店で応募していたみたいで。もしかしたら、それもよかったのかもしれません」


 確かに。ヘッドセットの応募用紙には、名前のほかに住所や電話番号を記載する場所があった。同じお店で応募したら親子関係だと分かって、片方しか当選しない可能性もあるもんね。そこまでしっかり確認してるゲーム屋さんがあるのかは、よく分からないけど、念には念を。確かに、しっかりした娘さんだ。


「とはいえ当選したところで、私自身はゲームなんてするつもりはなかったんですけどね。ゲームに疎いもんですから。誰かにあげようかとも思ったんです。でも、軽い気持ちで始めてみたら、これが思いのほか面白くって」


 ころころと笑うアイダさん。何歳かは分からないけど、かわいい。


「親子共々、このゲームの虜になりました。子供との会話も増えましたし」

「私も、このゲームのおかげで毎日が楽しいです」


 お互いに笑い合う。うん、これならうまく話が聞き出せそうな気がしてきた!

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