面接終了

「では君はこの会社で、さらには力を得たあのゲーム世界において、何をしたいと願うのかな」


 田尻課長の言葉に、私は即答する。


「『特別スキル』を使って、他の『特別スキル』を持つ人を助け、必要に応じて『特別スキル』を回収し、別の誰かにそのスキルを引き継ぎたいと思います」


「別の誰かに、『特別スキル』を引き継ぐ」


 田尻課長は、私の言葉を繰り返す。


「はい。この『特別スキル』を手に入れた人は、すでに変えたい、または環境を変えたいと強く願う人です。しかし、まだ環境次第ではそう思えないけれど、本当はそう声に出して言えない、思えないだけで心の奥底ではそう思っている人もいるかもしれない。そういった人たちはおそらく、まだ『特別スキル』を手に入れていないけれど、あと少しで手に入れられる人。ですから、そういった人たちに、『特別スキル』を付与できるようにできたらいいな、と思う次第なのです」


 私の言葉に、田尻課長はただただ頷いている。ふと、視線を田尻課長の後ろに向けると、先ほどまで真剣にパソコンに向かっていたはずの、シュウさん……――、いや月島部長と視線が合った。


 彼は、少しだけ驚いた顔をして、それから目を細めて小さく会釈するように頷いた。私も思わず会釈を返す。


 すると、田尻課長はそれに気づいた様子で声をひそめて言った。


「これは内緒の話なんだけど。月島部長ね、すごく悩んでた。君を採用してほしいと思うと同時に、一緒に働くことに抵抗を感じてたみたい」

「はい。この前私に面接の日取りを決めたいと言った時も、上司と一緒にゲームをするのはどうなんだろうってすごく真剣な顔で聞いてきました」


 それを聞いて、田尻課長はくすっと笑った。


「そうだろう? 彼、少しまじめすぎる部分があってね。そんなの、直接本人に聞いてみたらいいじゃないかって、ぼくが提案したんだ」


 ああなるほど、シュウさんが私に聞いてきたのは、田尻課長の助言があったからなんだ。


「『特別スキル』をうまく扱えなかった人のスキルを、ただ没収するだけじゃなく。他の、それこそ『特別スキル』を付与されてもおかしくないような人たちに引き継ぐ。その発想は、少なくともぼくにはなかった。うん」


 田尻課長は頷いて、一言大声で言った。


「採用で!」

「「え」」


 私ともう一人の声が重なる。そんな大事なこと、すぐに決めちゃっていいのかなと私は思って言った言葉。そしてなんで急に大声で言ったのという疑問。


 でもその疑問は、すぐに解消された。


「月島部長、君の言う通り、彼女はぼくにはない考え方を持っている。だから採用することに決めた。こっちに来て一緒に話をしないかい」


 そっか、今のはシュウさんにも聞こえるようにわざと言ったのか。田尻課長は立ちあがると、そう言ってシュウさんに向かって手招きした。


 


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